妖に育てられた彼女と家族に疎まれた僕

ERIKA

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如月神社の妖たち

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小夜さんは僕のことを支えると縁側に連れてくれた
まだ足は引きずるけど移動は出来るようだ
縁側には黒い猫がいた
「おや、猫又様そんな所で日向ぼっこしてたんですか?」
小夜さんが声をかけると猫は人の姿になった
黒髪で短髪、そして目つきの少し悪い美形でどこか気だるげな印象だ
「うん、ここあったかい……あ、そいつ起きたんだ」
「はい、優さんと言うそうです…まだ痣などは酷いですが」
「そう」
そういうと猫又様は猫の姿にもどり
小夜さんにすり寄った
「猫又様ったら」
クスッと小夜さんが笑うと猫又様は僕にもすり寄ってきた
「えっ…」
「お前いいにおいがする」
どんな匂いがするのかは謎だが心地よさそうにスリスリしてくるのでおずおずと頭を撫でた
するとゴロゴロとご機嫌な声がした
「気に入られたようですね」
「そうかな」
「ええ、よかった…」
「え?」
「いえ、猫又様は人を見るのです…気に入られなかったらどうしようかと」
困ったように笑ってくる
その顔はどこか烏天狗様に似ているようにも見えた
「あの小夜さん」
「はい?」
「小夜さんはまさか妖じゃ」
そう聞くと小夜さんは驚いてすぐ笑った
「そんなことありませんよ私は人間ですよ」
そう言ってずっと笑っていた
ただこうして誰かと笑って話すのはいつぶりだろうか
つい楽しくて僕も笑ってしまった
「よかった、やっとお優しい顔になりましたね優さん…心配でしたずっとお辛そうでしたから」
「いえ、でもこうして笑うのは久しぶりです」
2人してくすくす笑うと烏天狗がやってきた
「待たせた、にしてもお前の父親はなんと酷いものだ」
「あ、いえ」
「お前がかしこまることでは無い、若いの悪いことは言わないそなたの気に入るまでここに居るといい、その愛私はそなたの父親の制裁といくか」
どうやら癪に触ったようで烏天狗様はお怒りだった
小夜さんはその様子を見て
僕の方を心配そうにみてきた
「僕の父は…しょうもない人間です、暴力を使ってでしか人を動かせません…どんなに僕が頑張っても気に食わないようで」
「そうか、小夜」
「はい」
「この者を支えてやるんだ私はしばしの間戻らないと思え、天狐にも伝えろ」
「かしこまりました烏天狗様…お気をつけて」
うむと言い烏天狗は飛んで言ってしまった
それと入れ替えにすごい妖気を漂わせるのが来た
妖狐だ、ただ人の姿をしてしっぽが見える 
茶髪でいかにも今どきの若者風だが着物のせいか
威厳が少しある
「小夜~烏天狗もう行っちゃったの?」
「はい…こちらにいる優さんの父親に制裁に」
「ふーん」
そういい僕をジロジロ見回すと、急にポンと手を打った
「そうか、こいつ自分に似てるから行ったなあいつ」
「それに加え……どうやらその父親が癪に触ったのでしょうね…それより妖狐様、優さんの痣なのですが」
「あ~それ、俺の妖気で少し痛みは誤魔化せるけど、あとは百目鬼の力借りな?」
「そうします、妖狐様お願いですので烏天狗様の助太刀だけはやめてくださいね?死人が出ます」
必死に小夜さんは止めようとすると妖狐様は
え~といいつつ部屋に戻っていった
「すごいな…」
「ええ、妖狐様はすごい方です…でもなんだかんだで私たちをお守りくださってます…1度私が他の妖にさらわれた時なんて凄かったですから」
「そんなことがあったのか!?」
「ええ…でもやっぱり妖狐様はすごいのです」
少し誇らしげに言うので本当にすごいんだろうなというのがわかる
僕たちはまだ暫く縁側で足を伸ばすことにした

夕暮れが近づくと和服姿の目が沢山ある男が来た
「小夜そろそろ夕餉だ準備はどうする?」
「百目鬼様そうですね、すぐ参りましょうか」
「いやいい、僕がやるよ小夜はその人のそばにいてあげなさい」
百目鬼様はそう言うと僕の方を見た
「若いの悪いことは言わない、小夜に対して変な思いは持つなよ?僕たちの大切な娘だ」
「と、百目鬼様なんてことを」
小夜さんは慌てるが百目鬼はふん!と行ってしまった
「優さんお気を悪くされませんでした?」
「大丈夫です、それより…あまり歓迎されないみたいですね」
「百目鬼様はかつて人間に嫌な思いをさせられたようで」
そう言われるとさっきの態度もわかる気がした
本当にこの人は大切にされているのがわかる
そうしていると今度はおかっぱ頭の男の子がわーいと走ってきた
「紗夜~ただいまぁ!」
「おかえりなさい座敷童子様」
小夜さんに抱きつくとぐりぐりと甘える姿は可愛らしい
「あ、昨夜寝てたお兄さんだ!怪我大丈夫?」
心配そうに聞いてくるので胸が切なくなる
「昨日よりはいいよ心配してくれたんだ 」
「うん!小夜がすっごく心配そうにしてておいらも心配になったの、でもこうやって話せて嬉しいな」
えへへ~と笑う姿は本当にかわいい
思わず照れてしまう
「座敷童子様そろそろ夕餉だそうですよ?猫又様と天狐様をお呼びしてきてください?」
「はーい」
またとてとてと走って座敷童子はいってしまった
妖狐に烏天狗、百目鬼に猫又そして座敷童子
本当に妖が多い
なのに馴染んでしまうのは不思議でならない
その上小夜さんは恐れることもない
そう思うと大切にされてるのがわかる

夕餉になると烏天狗以外がそろった
「さて、若いの簡単に自己紹介といこう」
妖狐がいうとみんなは頷いた
「まず俺から、俺は妖狐様だ一応ここら辺いったいの妖怪のリーダーをしてる、この神社では祀られてるのは俺、だから一番偉いのは俺だ」
ドヤ顔でいうのですこし驚くがまあそうだろうと納得がいった
言い切った天狐はおいなりさんを頬張って食べるので威厳も何も無い周りも冷めた目で見ているので敬われてはいないのもわかる
「つぎは僕ね、僕は百目鬼ここでは小夜の親代わりだ、言っとくが僕は人間は嫌いだ、あまり僕の癪に触るようなことはしないでくれよ?」
優しそうに言うが嫌われてるのがわかる
過去にどんなことをされたんだこの妖はと思いつつ頭を下げる
ただ、小夜さんが礼儀正しいのはこの妖のおかげだろうと言うのもわかる気がする
「次俺ね…俺は猫又…お前良い奴だと思う…いい匂いするから」
「猫又は誰にでもそうだろ?」
「違うよ百目鬼…俺にはわかる」
百目鬼を睨みつつもお膳のお魚を咥える様はほんとに猫だ
でも、嫌われたわけでは無さそうだ
「はいはーい!オイラは座敷童子だよ~オイラねここのみんなと遊ぶのだーいすき!あとこのご飯大好き~!」
満面の笑みで頬にご飯粒をつける座敷童子は目の保養すぎる
小夜さんが「ついてますよ?」と笑いながらご飯粒を取ってあげる様はとても微笑ましく思えた
「私のことはいいですよね?」小夜さんはそう言うので僕は頷く
「さて、若いのおまえのことはなせー?」
天狐様が気だるそうに言うので僕は自分のことを話した

僕には母親が居ない
いや母親は病死した、そのおかげで僕の家族は父親だけになった
だがこの父親はクズだった、母親が死ぬと酒に溺れた
酒を飲むと凶暴になり僕を殴った
一度で済めばいいなんどもなんどもやるのだ
僕は誰にもいえなかった、なんせ学校にも行けなくなっていたから
その為父親から早く逃げたいそう思っていた
そして昨夜…僕はとうとう父親に1発殴り返して逃げたのだ
その事を話すと小夜さんは座敷童子様の耳を塞いでいた
聞かせたくないと思ったのだろう
天狐様を初め、百目鬼様と猫又様は目の色を変えて怒っていた
「なんて父親だよ、お前よく逃げたな」
「かつての私より酷い…よく耐えた」
「で、いま烏天狗が行っているのか……」
そう言うと3人(?)は頭を抱えた
「大丈夫だとは思うけど、おまえの父親死ぬな」
「たぶん、あの烏天狗が手加減はしないよね」
それを聞いて僕はやばい人たちに目をつけられたなと思った
そうすると口にして泣き出してしまった
「あんな父親…死んでもいい」
それを聞くと小夜さんは僕の傍に来て背中をさすってくれた
「優さんは悪くありません…よく生きててくれました」
「小夜さん」
「そうだな優お前が生きててよかったんだ、あとは烏天狗を待とうそしてその間にその傷をなおせ」
な?と天狐様は笑いかけてきた
心が楽になるのがわかる
小夜さんに助けられてよかったと思うと涙が止まらない
座敷童子様が、おどおどしながら傍に来て心配そうに抱きついてきてくれる
この人たち(?)に出会えて本当によかった
と、この時はすごく思えた


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