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外の世界は
血の思惑・2
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「サレオス、どうしてこっちの作戦に参加してるノ?」
リュアレはサレオスに訊ねた。本当ならサレオスはグリゴリ村にいるはずだ。
会議の時に、急にサレオスも作戦に参入するとイロウから聞かされた。
「ネビロス様や兄貴からの罰は後で受ける」
サレオスははぐらかすように言った。
「ちゃんと答えテ、ボクの友人達を巻き込もうとしてまで、何を企んでいるノ」
リュアレは熱い口調になった。友人であるベリルとコンソーラをサレオスの目的のために利用しようとしていたのだ。
イロウの介入により失敗に終わったが……
サレオスは言うか言うまいか迷っている様子だった。親交のあるリュアレに伏せたい事情があるのか。
「ゲロっちまえよ、言わなかったらこいつ面倒なくらいに絡み付くぜ」
サレオスの隣にいたワゾンが突っ込んだ。
サレオスは観念したらしく、重々しく口を開く。
「神に選ばれた天使の血を集めるためだ」
サレオスの言葉には聞き覚えがあった。天使の中には神級の力を得て神様の候補になる者がいると。
「何のためニ?」
「ブファス派に堕ちたミットを助けるためだ。五人分の血を差し出せばミットを解放するって条件なんだ」
ミットとはサレオスが想いを寄せている相手で、今はブファス派の黒天使となっている。
「それ言ったのはアバドンでしョ」
「ああ、そうだよ、アバドンが俺に言ったんだ。ミットを返すから条件を果たせってな」
「あんな奴の言うことを信じちゃダメだヨ! あいつはとんでもない嘘つきなんだかラ!」
リュアレの声色には興奮と不快感が入り交じっていた。
アバドンはブファス派の黒天使になっており、息を吐くように平気で嘘をつく黒天使でイロウでさえも「アバドンは信用できない」と言っている。
「分かってるさ、アバドンを信じてはいけないことくらい……けどよ」
サレオスは辛そうに表情を歪める。
「ミットのいない日々は俺にとって苦痛なんだ。例え二枚舌野郎の言うことでも可能性があるならすがりたいんだ」
サレオスは苦々しく語る。
リュアレは分かってはいた。ミットがいなくなってからというものの、サレオスは余裕がなく、苛ついていることが多くなっていたことに。
サレオスが勝手にこちらに同行したり、作戦中にも関わらずワゾンを巻き込んで独断専行をしてターゲットであるラフィアを含む天使の血を集めたりするなど何かと問題があるが、彼がミットを想う気持ちは理解できる。
「あと一人の血を採取すればミットは帰ってくるんだ」
「サレオス……」
「だから邪魔すんなよ、おまえが立ちはだかると目障りなんだよ」
ワゾンは尖り声で言った。彼もサレオスの味方のようだ。
サレオスとワゾンはリュアレの前から去ろうと、背中を向けようとしていた。残り一人の血を採取するためだ。
言うか、黙って二人が行くのを見てるかリュアレは悩んだ。
が、このまま言わなかったら後悔すると感じたためリュアレは「ねエ!」と慌てた声を出す。
「……こう言ったら怒るかもしれないけど、ミットは帰ってこないヨ
サレオスも知ってるでしょ、ブファス派になった黒天使を元に戻せないのヲ」
気持ちを抑えられず、リュアレは口走る。
サレオスが血を集めてもアバドンが無事にミットを返すか分からない。
ブファス派の黒天使は度々グリゴリ村を襲いに来ては、黒天使をブファス派に率いれようとしている。ブファス派になった黒天使を元に戻すのは手段は現段階ではない。
リュアレを含む黒天使はその事は周知されている。無論サレオスも知っているはずだ。
サレオスは全身を小刻みに震わせている。
「アバドンはサレオスを利用しているだけなんだヨ、血を集めさせてるのも悪巧みのためだヨ」
リュアレは真面目な物言いをした。
血をアバドンに渡してもミットが元通りになって帰ってくる保証は無い。
「お願い、こんな事はもうやめテ!」
リュアレは叫んだ。リュアレとしても
サレオスがアバドンに操られているようで見ていられないのだ。
三人の間に重苦しい空気が流れ、会話が生まれなかった。このままサレオスが血を採取するのをやめるのを願いたい。
空気が破られたのは、ワゾンがリュアレに迫ったことがきっかけだった。
「おまえ……うぜぇんだよ、サレオスがどうしようがおまえに関係ねぇだろ」
ワゾンはさっきにも増して怒っていた。
ワゾンもリュアレと同じくらいにサレオスと付き合いが長いので、彼なりにサレオスのことを支援したいようだ。
しかしリュアレも譲らない。
「関係あるヨ! アバドンはきっと約束を守らないし、サレオスが余計に傷つくんだヨ!」
ワゾンは急に右手を伸ばし、リュアレの胸ぐらを掴む。
「黙れよ……サレオスの行動を妨害するなら容赦しねぇぞ、おれはサレオスの行いに賛成するからな、それにアホソーラに動きを止められておれは苛ついてるんだ」
「友達を侮辱しないデ!」
リュアレは怒りを爆発させた。ワゾンが口走った名前はリュアレの友人であるコンソーラを指す。
ワゾンは気弱なコンソーラが気に入らないらしく、彼女に容赦なく当たるのだ。天界内に入る際もきつい言葉を浴びせてベリルが止めていた。
「その甲高い声を塞いでやるよ」
ワゾンは左手から黒い光を出した。異常呪文をかけるつもりらしい。
「サレオス……ここで止まらなかったらキミはきっと後悔するかラ」
異常呪文がこれから自分に襲いかかってくる恐怖の中、リュアレは精一杯忠告した。
ワゾンの左手がリュアレに振り下ろされそうになったその時だった。
突如眩い光が三人の視界を塞いだ。
リュアレは思わず目を瞑った。次の瞬間リュアレは誰かに手を握られ強い力で引っ張られた。
光が消えてからリュアレはゆっくりと瞼を開く。
そこには白い羽根を生やした茶髪の少年がリュアレを見つめていた。
「……大丈夫か?」
リュアレはサレオスに訊ねた。本当ならサレオスはグリゴリ村にいるはずだ。
会議の時に、急にサレオスも作戦に参入するとイロウから聞かされた。
「ネビロス様や兄貴からの罰は後で受ける」
サレオスははぐらかすように言った。
「ちゃんと答えテ、ボクの友人達を巻き込もうとしてまで、何を企んでいるノ」
リュアレは熱い口調になった。友人であるベリルとコンソーラをサレオスの目的のために利用しようとしていたのだ。
イロウの介入により失敗に終わったが……
サレオスは言うか言うまいか迷っている様子だった。親交のあるリュアレに伏せたい事情があるのか。
「ゲロっちまえよ、言わなかったらこいつ面倒なくらいに絡み付くぜ」
サレオスの隣にいたワゾンが突っ込んだ。
サレオスは観念したらしく、重々しく口を開く。
「神に選ばれた天使の血を集めるためだ」
サレオスの言葉には聞き覚えがあった。天使の中には神級の力を得て神様の候補になる者がいると。
「何のためニ?」
「ブファス派に堕ちたミットを助けるためだ。五人分の血を差し出せばミットを解放するって条件なんだ」
ミットとはサレオスが想いを寄せている相手で、今はブファス派の黒天使となっている。
「それ言ったのはアバドンでしョ」
「ああ、そうだよ、アバドンが俺に言ったんだ。ミットを返すから条件を果たせってな」
「あんな奴の言うことを信じちゃダメだヨ! あいつはとんでもない嘘つきなんだかラ!」
リュアレの声色には興奮と不快感が入り交じっていた。
アバドンはブファス派の黒天使になっており、息を吐くように平気で嘘をつく黒天使でイロウでさえも「アバドンは信用できない」と言っている。
「分かってるさ、アバドンを信じてはいけないことくらい……けどよ」
サレオスは辛そうに表情を歪める。
「ミットのいない日々は俺にとって苦痛なんだ。例え二枚舌野郎の言うことでも可能性があるならすがりたいんだ」
サレオスは苦々しく語る。
リュアレは分かってはいた。ミットがいなくなってからというものの、サレオスは余裕がなく、苛ついていることが多くなっていたことに。
サレオスが勝手にこちらに同行したり、作戦中にも関わらずワゾンを巻き込んで独断専行をしてターゲットであるラフィアを含む天使の血を集めたりするなど何かと問題があるが、彼がミットを想う気持ちは理解できる。
「あと一人の血を採取すればミットは帰ってくるんだ」
「サレオス……」
「だから邪魔すんなよ、おまえが立ちはだかると目障りなんだよ」
ワゾンは尖り声で言った。彼もサレオスの味方のようだ。
サレオスとワゾンはリュアレの前から去ろうと、背中を向けようとしていた。残り一人の血を採取するためだ。
言うか、黙って二人が行くのを見てるかリュアレは悩んだ。
が、このまま言わなかったら後悔すると感じたためリュアレは「ねエ!」と慌てた声を出す。
「……こう言ったら怒るかもしれないけど、ミットは帰ってこないヨ
サレオスも知ってるでしょ、ブファス派になった黒天使を元に戻せないのヲ」
気持ちを抑えられず、リュアレは口走る。
サレオスが血を集めてもアバドンが無事にミットを返すか分からない。
ブファス派の黒天使は度々グリゴリ村を襲いに来ては、黒天使をブファス派に率いれようとしている。ブファス派になった黒天使を元に戻すのは手段は現段階ではない。
リュアレを含む黒天使はその事は周知されている。無論サレオスも知っているはずだ。
サレオスは全身を小刻みに震わせている。
「アバドンはサレオスを利用しているだけなんだヨ、血を集めさせてるのも悪巧みのためだヨ」
リュアレは真面目な物言いをした。
血をアバドンに渡してもミットが元通りになって帰ってくる保証は無い。
「お願い、こんな事はもうやめテ!」
リュアレは叫んだ。リュアレとしても
サレオスがアバドンに操られているようで見ていられないのだ。
三人の間に重苦しい空気が流れ、会話が生まれなかった。このままサレオスが血を採取するのをやめるのを願いたい。
空気が破られたのは、ワゾンがリュアレに迫ったことがきっかけだった。
「おまえ……うぜぇんだよ、サレオスがどうしようがおまえに関係ねぇだろ」
ワゾンはさっきにも増して怒っていた。
ワゾンもリュアレと同じくらいにサレオスと付き合いが長いので、彼なりにサレオスのことを支援したいようだ。
しかしリュアレも譲らない。
「関係あるヨ! アバドンはきっと約束を守らないし、サレオスが余計に傷つくんだヨ!」
ワゾンは急に右手を伸ばし、リュアレの胸ぐらを掴む。
「黙れよ……サレオスの行動を妨害するなら容赦しねぇぞ、おれはサレオスの行いに賛成するからな、それにアホソーラに動きを止められておれは苛ついてるんだ」
「友達を侮辱しないデ!」
リュアレは怒りを爆発させた。ワゾンが口走った名前はリュアレの友人であるコンソーラを指す。
ワゾンは気弱なコンソーラが気に入らないらしく、彼女に容赦なく当たるのだ。天界内に入る際もきつい言葉を浴びせてベリルが止めていた。
「その甲高い声を塞いでやるよ」
ワゾンは左手から黒い光を出した。異常呪文をかけるつもりらしい。
「サレオス……ここで止まらなかったらキミはきっと後悔するかラ」
異常呪文がこれから自分に襲いかかってくる恐怖の中、リュアレは精一杯忠告した。
ワゾンの左手がリュアレに振り下ろされそうになったその時だった。
突如眩い光が三人の視界を塞いだ。
リュアレは思わず目を瞑った。次の瞬間リュアレは誰かに手を握られ強い力で引っ張られた。
光が消えてからリュアレはゆっくりと瞼を開く。
そこには白い羽根を生やした茶髪の少年がリュアレを見つめていた。
「……大丈夫か?」
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