交換バレンタイン

ねる

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交換バレンタイン

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澄み渡った青空の下、せりかは伊麻と公園のベンチに座っていた。
「はい、伊麻ちゃん」
せりかは黄色い箱を伊麻に手渡した。
「わたしも、せりかちゃんに」
伊麻は桃色とハート柄の箱をせりかに見せた。
「有難う」
せりかは伊麻から貰った箱を受け取り、伊麻もせりかの箱を手に取った。
「手作り?」
せりかは箱を見ながら訊ねると伊麻は首を縦に振る。
「中身はトリュフなんだ」
「嬉しいな、伊麻ちゃんの作るお菓子美味しいから食べるの楽しみだよ」
せりかは明るく言った。
伊麻はお菓子作りが得意で、休日にはクッキーやパウンドケーキを焼いてせりかにご馳走してくれた。
箱の中のチョコも美味しいに違いない。
「あ、食べるなら家に帰ってからにしてね」
「分かってるよ」
せりかは言った。
「せりかちゃんのは手作り?」
「……一応ね」
せりかは足を左右に動かし、恥ずかしそうに口走った。
せりかは伊麻とは違い、料理はほとんどしない。
だがバレンタインとなれば話は別で、せりかは伊麻のためにチョコを作るのだ。
「溶かして固めただけだけどね、大きさにばらつきあるんだ」
「気にしないよ、せりかちゃんが毎年私のために作ってくれるから嬉しいよ」
伊麻は機嫌良く語る。
せりかは伊麻の言葉に救われた気がした。
「私のチョコも家で食べてね、人に見られると恥ずかしいから」
「分かったわ」
せりかの早口に、伊麻は爽やかに返事をした。
お互いバレンタインのチョコを渡し、用事は終わったが幼稚園の頃から付き合っている二人はまだ一緒に時間を過ごしたかった。
「ねえ、伊麻ちゃん」
「……なに?」
せりかは伊麻の顔を覗き込む。
「来年もチョコ交換しようよ、伊麻ちゃんの家に送る形になるけどさ」
せりかははきはきと言った。
伊麻は三月に家の都合で引っ越す。そのため直に交換するのは今日で最後になるだろう。
すると伊麻は首を横に振る。
「わたし、時間作って公園に来るよ」
伊麻は言った。
「来年受験あるでしょ、それに伊麻ちゃんの家、かなり遠い所にあるよね?」
せりかと伊麻は今年の四月から受験生となり来年の二月は高校入試を受けるため忙しくなる。
加えて伊麻の新しい家は聞いてる限りではここから一時間以上はかかる。
「無茶言ってるのは分かってるよ
それでもわたしはせりかちゃんと続けてきたこの時間を終わらせたくないの」 
伊麻は真剣な目付きで言った。
バレンタインにチョコレート交換を始めたのは小学四年生の頃からで、お互いどんなチョコを作ったのか見るのが楽しみなのだ。
 毎年続いた習慣が突然終わるのは伊麻にとって不安なのである。
伊麻の不安が伝わり、せりかは「分かったよ」と言い漏らした。
「私も出来る限り時間作ってみるけど受験の都合で三月になるかもしれないけど……平気?」
「構わないよ、せりかちゃんの都合に合わせるよ」
伊麻の意思は固かった。せりかも友人の期待に応えようと思った。
伊麻は何があろうとやると決めたなら実行するからだ。
「まだ先の話になるけど、来年も公園でチョコ交換しよう」
せりかは伊麻の言葉を繰り返すように口走る。
「うん、無理言ってごめんね」
「友達の頼みなら断れないよ、その代わり約束忘れないでね」
「言い出したのはわたしだからちゃんと守るよ」
せりかと伊麻は笑い合った。

伊麻と別れ、せりかは家に帰り自室で伊麻から貰った箱を開く。
「わぁ……」
せりかは丁寧に作られた六つのトリュフに感激した。
そしてトリュフを一つ口に運ぶ。
「美味しい」
せりかは率直な感想を述べる。
トリュフは甘みがしつこくなく、何個でも食べれそうだ。
せりかはその後もトリュフを味わって食べた。来年も伊麻がトリュフを作るとも限らない。
なぜなら伊麻のチョコの内容は年によって変わるからだ。一昨年前はチョコブラウ二ーで、去年は生チョコだったからだ。
 伊麻が作るチョコ菓子はどれも美味しいが、今回のトリュフも美味しい。
最後のトリュフを手に取ろうとしたが、トリュフが包装紙にくっついており、せりかは包装紙を少し持ち上げトリュフを引きはがした。
「ん?」
包装紙の下に何か書かれているのが見える。
せりかは気になったので六つの包装紙をどかしてみた。
そこには伊麻の字でこう書かれていた。
『ずっと友達でいようね』
「伊麻ちゃん……」
せりかは伊麻が自分のことを思っていることに感激で胸が一杯になった。

今年のチョコレートの交換はせりかにとって忘れられない思い出になった。

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