交換バレンタイン

ねる

文字の大きさ
2 / 2

一年後のプレゼント

しおりを挟む
三月下旬
伊麻から連絡を受け、せりかは公園に来ていた。
 本当なら二月にチョコを交換したかったが、お互いの受験が忙しかったため三月にずれ込んだのである。
「お待たせ」
せりかの前に伊麻が現れた。
 以前の伊麻は長髪を後ろに束ねていたが、今はショートカットである。
「イメチェンしたんだ」
「高校生になるからね、イメージ変えたかったの」
伊麻は晴れ晴れとした声を発した。
「似合ってるよ」
「ちょっと切りすぎたかもしれないけどね」
「そんな事ないよ」
せりかは言った。
伊麻の髪型は似合っているし、素敵だと思えた。
伊麻は少し不安げな表情を見せる。
「遅くなってごめんね、受験だけじゃなくて入学準備もあったから……」
伊麻は申し訳なさそうに声のトーンを落とす。
しかしせりかも受験のことは承知の上だったので気にしてはいない。
「平気だよ、私もそうだったから」
せりかは伊麻を慰める。
受験中も連絡を取り、勉強のことや、高校のことを話し合ったりした。
お陰で受験のストレスも減り、何とか高校に合格できた。
「合格おめでとう、伊麻ちゃん」
せりかはお祝いの言葉を口走る。
伊麻が行く高校はレベルが高く、入るのが難しいらしい。
 伊麻が受かったことは自分のことのように嬉しい。
「有難う」
伊麻は笑った。
「お祝いのチョコだよ」
「私からも」
せりかは持参していた黄色い袋から、伊麻もチョコの箱を持っていた桃色の袋から出した。
「今回は簡単なチョコしか作れなかったけど、気持ちは込めたから」
「私は手作りじゃないけど伊麻ちゃんと同じ気持ちだよ」
せりかは言い返した。
伊麻が心を込めてくれるプレゼントは嬉しいのだ。
お互いチョコを受け取り、時間が許す限り話をした。
今まで会わなかった時間を埋めるように……


伊麻と別れ、せりかは自宅に帰ってきた。
「どんなチョコかな」
自室の席に着き、せりかはリボンと包装紙を外した。
「これは……」
箱の上には一枚の便箋が置かれている。
せりかは便箋を手に取り、封を開く。
『合格おめでとう
 せりかちゃんにならきっと受かるって信じてたよ。
 高校生になっても仲良くしようね
 離ればなれでも友達だからね』
「伊麻ちゃん……」
  去年の手紙と同じくらいにせりかは感動した。
 せりかはチョコを後回しにして、便箋と封筒を机から出して伊麻に手紙を書き始めた。
 『伊麻ちゃんへ
 手紙励みになったよ、高校生活お互い頑張ろうね
 今度のゴールデンウィークは一緒にケーキバイキングに行こう、約束だよ』
  翌日、せりかは手紙をポストに投函したのだった。  

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...