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マメ柴のシバ
ペットロス症候群
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久々にぐっすり眠り、目が覚めたら既に9時を過ぎていた。
シバのごはん!と反射的に跳ね起きたさゆりは、すぐに昨日のことを思い出し、毎朝空腹に任せて騒ぎ立てる駄犬が今日はいないことを認識した。
途端に体の緊張が緩み、あくびと背伸びが同時に沸き起こる。
良い朝だ。起きたら顔が舐められてビシャビシャという事もない。
これほどの朝は久しぶりだ。
丁度8日振りくらい。
覚醒が進むと清々しさの中に、少し罪悪感を覚えた。シバは、えりかたちに迷惑を掛けていないか。
朝ごはんはちゃんと食べているか。
手元のスマホでえりかにメッセージを送る。
『おはようございます。
昨夜はごちそうさまでした。
シバの事もすみません。
ご迷惑掛けてませんか?』
熟慮の末シンプルにまとめて送ると、すぐに既読がついて返事が返ってきた。
『大丈夫ー。』
しばらく待ってもそれ以上のメッセージは送られてこない。さゆりの文面のさらに上を行く端的さに、それ以上のやりとりは生まれなかった。
しかたないので、ベッドから這い出して、シバのせいで出来なかったことが溜まっているのでそれを片付けることにした。
犬のいぬ間に、とばかりに締め切っていたカーテンをジャっと開け、ベランダに湿気った布団を干す。洗濯機いっぱいの汚れものをスイッチひとつで処す。合間にスティック掃除機で床を撫で上げる。食器を洗う。普段は煩わしい家事が気持ち良い。
さゆりは夢中になってそれをして、洗いあがった洗濯物を干し終わるとベッドに寝転んだ。
アプリを見てみるが、えりかからのメッセージはない。
『お疲れ様です。
シバはご迷惑を掛けていませんか?
午後は出かけますので、
今日そちらが来る時間を教えて下さい。
在宅するようにします。』
しばらく待ったが既読は付かなかった。
仕方がないので出掛ける支度をする。
二時間ばかり昼食を食べて食材や日用品の買い物をするだけだから、多分あえてシバが来る時間を聞く必要はなかった。それでもさゆりは、シバが帰って来る時間を知りたかった。
早々に身支度を整えるとさゆりは外に出た。
やりことがなくなるとどうしてもシバのことを考えてしまう。
気晴らしの為に、誰かと話せる環境にいたい。
そう考えたさゆりは、店主が顔見知りの喫茶店で昼食を摂ることにした。
最寄駅とさゆりが住むマンションの中間にある喫茶店は、
家族で切り盛りしている庶民的な店だ。
内装は老朽化していてこれと言って秀でたものではないが、都内では珍しく早朝からモーニングサービスをしていて夜も11時まで開いているので、さゆりの胃袋はこの店に支えられて来たと言っても過言ではない。
普段自炊をしないわけではないが、プロジェクト方式の業種は瞬間的に鬼のような忙しさを伴う時もあり、そうなると自分で用意する日々の食事は効率重視の単なるエサと化す。そんな時はこの店に来れば、女将さんの考えたバランスの良い食事にありつけるし、その夫のマスターが淹れたコーヒーは修羅場の心を救ってくれる。女将さんの母だというお婆さんの作ったオハギをおやつに持たせて貰えた朝はそれを楽しみに午後を乗り切るし、繁忙期を越えた後に店主夫婦の長女が作るいちごタルトを食べた時は正直泣いた。
そんなこんなで、さゆりは財布が許す限りこの店に通っていた。シバが来てからは流石に来れていなかったが、今日くらい行ってもバチは当たらないだろう。
シバのごはん!と反射的に跳ね起きたさゆりは、すぐに昨日のことを思い出し、毎朝空腹に任せて騒ぎ立てる駄犬が今日はいないことを認識した。
途端に体の緊張が緩み、あくびと背伸びが同時に沸き起こる。
良い朝だ。起きたら顔が舐められてビシャビシャという事もない。
これほどの朝は久しぶりだ。
丁度8日振りくらい。
覚醒が進むと清々しさの中に、少し罪悪感を覚えた。シバは、えりかたちに迷惑を掛けていないか。
朝ごはんはちゃんと食べているか。
手元のスマホでえりかにメッセージを送る。
『おはようございます。
昨夜はごちそうさまでした。
シバの事もすみません。
ご迷惑掛けてませんか?』
熟慮の末シンプルにまとめて送ると、すぐに既読がついて返事が返ってきた。
『大丈夫ー。』
しばらく待ってもそれ以上のメッセージは送られてこない。さゆりの文面のさらに上を行く端的さに、それ以上のやりとりは生まれなかった。
しかたないので、ベッドから這い出して、シバのせいで出来なかったことが溜まっているのでそれを片付けることにした。
犬のいぬ間に、とばかりに締め切っていたカーテンをジャっと開け、ベランダに湿気った布団を干す。洗濯機いっぱいの汚れものをスイッチひとつで処す。合間にスティック掃除機で床を撫で上げる。食器を洗う。普段は煩わしい家事が気持ち良い。
さゆりは夢中になってそれをして、洗いあがった洗濯物を干し終わるとベッドに寝転んだ。
アプリを見てみるが、えりかからのメッセージはない。
『お疲れ様です。
シバはご迷惑を掛けていませんか?
午後は出かけますので、
今日そちらが来る時間を教えて下さい。
在宅するようにします。』
しばらく待ったが既読は付かなかった。
仕方がないので出掛ける支度をする。
二時間ばかり昼食を食べて食材や日用品の買い物をするだけだから、多分あえてシバが来る時間を聞く必要はなかった。それでもさゆりは、シバが帰って来る時間を知りたかった。
早々に身支度を整えるとさゆりは外に出た。
やりことがなくなるとどうしてもシバのことを考えてしまう。
気晴らしの為に、誰かと話せる環境にいたい。
そう考えたさゆりは、店主が顔見知りの喫茶店で昼食を摂ることにした。
最寄駅とさゆりが住むマンションの中間にある喫茶店は、
家族で切り盛りしている庶民的な店だ。
内装は老朽化していてこれと言って秀でたものではないが、都内では珍しく早朝からモーニングサービスをしていて夜も11時まで開いているので、さゆりの胃袋はこの店に支えられて来たと言っても過言ではない。
普段自炊をしないわけではないが、プロジェクト方式の業種は瞬間的に鬼のような忙しさを伴う時もあり、そうなると自分で用意する日々の食事は効率重視の単なるエサと化す。そんな時はこの店に来れば、女将さんの考えたバランスの良い食事にありつけるし、その夫のマスターが淹れたコーヒーは修羅場の心を救ってくれる。女将さんの母だというお婆さんの作ったオハギをおやつに持たせて貰えた朝はそれを楽しみに午後を乗り切るし、繁忙期を越えた後に店主夫婦の長女が作るいちごタルトを食べた時は正直泣いた。
そんなこんなで、さゆりは財布が許す限りこの店に通っていた。シバが来てからは流石に来れていなかったが、今日くらい行ってもバチは当たらないだろう。
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