異世界パピーウォーカー〜イケメン獣人預かり〼〜

saito

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マメ柴のシバ

育犬ノイローゼ

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カトレアで得たほのぼのした満足感から一転して、買い物中のさゆりは完全に気もそぞろだった。
送られてきた写真がグルグルと頭をまわる。

写真自体は大変微笑ましく、さゆりはすぐにそれをスマホのカメラロールに保存した。
しかし、「あんたなんでそうもあっさり服を着た!?」という複雑な心境が頭を離れなかった。
しかもスプーンまで使っている。
さゆりとて、食事時にシバがカトラリーを使うように散々努力した。
箸やスプーンやいろんな種類を試したし、見本を見せたし、トレーニングだってさせようとした。
それら全てをガン無視して、唐揚げも鯖缶もうどんも素手でムシャムシャいったのはシバである。

なぜカレーはスプーンで食べる?

さゆりは落ち込んだ。
自分のやり方が悪かったのだと思ったからだ。
シバは出来なかったのではなく、やらなかったのだ。さゆりの方法が間違っていたから。
さゆりはそう結論づけた。

考えてみれば当然だったのかもしれない。さゆりはシバを犬だと思って犬のしつけをしていた。
それは体罰こそ伴わなかったが、顎を抑えて睨みつけるなど、人間の子供相手だったらちょっとどうかと思うくらいのものまであった。
それでも、シバは犬だと思ったから心を鬼にしてやったのである。
それが良くなかったのかもしれない。

きっとえりかが正しかったのだ。
昨日電話口で彼女が、シバは犬には見えないと言った時、正直に言えばそんなことを言っていられるのは今のうちだけだと思っていた。
じゃあ見てろよと反発する気持ちがあったことは否めない。
それが傲りだったのだ。
この結果を見れば、どんなに振る舞いは犬に見えても、シバを犬扱いしてはいけなかったのは明らかだった。
えりかの言うとおり彼は異世界の存在で、こちらの世界を基準に作られた犬の躾方法を適用すべきでなかったのだ。
えりかの方が事態をきちんと把握していた。
だからシバはさゆりには反発したけどえりかの言うことは聞いたのだろう。
自分はきっと何もかも間違えていたのだ。
そのせいでシバが人間を嫌いになったらどうしよう。
みつるはシバが人間を好きになるように相手をしてくれと言っていた。
それってつまり、シバが人間を好きにならないと何かシバに不利益があるという事ではないか。
シバは憲兵を怖がっていたが、それと関係はあるのだろうか。
シバが人を好きになれなくて、そのせいできちんと仕事が出来ないと、憲兵に連れていかれて酷い目に遭うのではないか。
兄だって今の職に就くのと引き換えに身の保証をして貰ったと言っていた。
現代日本では考えられない事だが、異世界ではありえる話なのかもしれない。
どうしよう。どうしよう。

さゆりの思考は多分にバイアスがかかっており、根拠のない憶測や推測を存分に孕んでいたが、1人で売り場を回りながらしている脳内会議なので誰も止められなかった。
結局シバの好物やえりかたちにお礼として渡すちょっと良いお菓子を買い込む頃には『本件全て小生の不手際。』という結論になり、暗い気持ちのままスーパーを後にした。

自分用に買うつもりだったコラーゲンドリンクは、帰宅してから買い忘れていることに気づいた。
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