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マメ柴のシバ
全力少年
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それからしばらくは、いかにきみやに群がる女どもを効果的にいなすかをカジュアルに語るのが食事の間の話題になった。
バカバカしいが、酒の席である。
さゆりは、きみやがえりかの陰に隠れたのが中々良かったと言い、その方向で展開させる事を提案した。
シバは尻を齧ったら逃げていくのではないかと言い、さゆりは腹を抱えて笑いながらそれを二人に伝えた。
「情けない感じか。気にした事なかったなぁ。」
えりかがウロコが剥がれた瞳で言う。
「そうですね。例えば言い寄って来た女の前でえりかさんのこと、ママって呼んでみるとか。ふひっ。」
さゆりは自分で言って自分で笑った。
「ひー!ヤバイ!ハチ、ちょっと言ってみ。ママって。」
「……嫌だ。」
「駄目ですよ。えりかさんばっかりに負担かけるんですか?嫌われますよ。」
「…………ママ。」
きみやの苦渋の決断は、酔っ払いの女二人を過呼吸になるくらいの笑いに叩き落とした。
「ひーっひっやばっヤバイっ、きもっあっはっは!キモい!鳥肌立った!はーっはーっふっ!」
特にえりかにはツボにハマってしまい、殊更にはしゃいでいる。
こうしてきみや以外の誰かと馬鹿騒ぎをすること自体、出来なくなって久しかった。
「キモいって……。」
一方きみやはさゆりの発言にみるみる青褪めた。
明らかに男としてバカにされている状況より、えりかにキモがられることの方が堪えるようだ。
きみやの様子に、調子に乗っていたえりかも我にかえる。
「ごめんごめんハチ!冗談だってば!せっかく言ってくれたのにね。ごめんね?」
ここで泣かれては困るとご機嫌取りに転じるが、きみやはしょげきっている。
「ほら、ディスクやろ。ハチが入れてくれたやつ。」
えりかは気をそらすためにそう提案して荷物から本格的なフライイングディスクを取り出した。
それを見たさゆりは、えりかが大学時代高崎と同じアルティメットサークルだったのを思い出す。
さゆりが高崎からアルティメットの存在を教わり、高校生でもやる場はないか調べたのももはや過去だ。
そんな仄かな気持ちは、なんの形にもならないまま気がつけば消えてしまった。
その過去の残滓のような円盤をえりかは持ち、きみやと連れ立ってさゆり達のいるシートから数メートル離れる。
何か楽しいことが始まるのだと感じたシバも立ち上がりキラキラした目を二人に注いだ。
「この円盤をキャッチする遊びだよ。シバ君はまずはそこで見ててね。やり方わかったら一緒にやろ。」
えりかの説明にシバがブンブンと頷く。
その間にきみやはさらに20メートルほどえりかから離れて立った。
「いくよー。」
小慣れたフォームでえりかがディスクを繰り出すと、スパッと小気味好く丸い板はきみやに向かって行く。
と同時にシバが裸足で勢いよく飛び出した。
さゆりが声を上げる暇もなく
ぐんぐん加速すると、
みるみるディスクとの距離は縮まり、
パシッ
とうとう、きみやにたどり着く前に追いついたシバがディスクをキャッチしてしまった。
そのまま緩やかにカーブすると嬉しそうな顔でさゆりの元に駆け戻ってくる。
「すっごーい!!シバ凄いね!速い!」
語彙力の溶けたサーバルキャットのように、酔っ払ったさゆりはその速さを褒め称えた。
さゆりの賞賛を聞いたシバは顔中で笑っている。
ディスクを失ったえりかときみやも、遊びを中断してシバの元にやって来た。
「凄いね。普通あれ追いつけないよ。」
えりかは目を丸くして言った。
さゆりはただ凄いとしか思わなかったが、えりかは競技経験があるだけにその異様さをより感じたのだろう。
犬は4,50キロの速さで走る個体もいるというし、獣人も足が速いのかもしれない。
さゆりはそう納得した。
きみやはシバからディスクを取り返そうとして抵抗されている。
バカバカしいが、酒の席である。
さゆりは、きみやがえりかの陰に隠れたのが中々良かったと言い、その方向で展開させる事を提案した。
シバは尻を齧ったら逃げていくのではないかと言い、さゆりは腹を抱えて笑いながらそれを二人に伝えた。
「情けない感じか。気にした事なかったなぁ。」
えりかがウロコが剥がれた瞳で言う。
「そうですね。例えば言い寄って来た女の前でえりかさんのこと、ママって呼んでみるとか。ふひっ。」
さゆりは自分で言って自分で笑った。
「ひー!ヤバイ!ハチ、ちょっと言ってみ。ママって。」
「……嫌だ。」
「駄目ですよ。えりかさんばっかりに負担かけるんですか?嫌われますよ。」
「…………ママ。」
きみやの苦渋の決断は、酔っ払いの女二人を過呼吸になるくらいの笑いに叩き落とした。
「ひーっひっやばっヤバイっ、きもっあっはっは!キモい!鳥肌立った!はーっはーっふっ!」
特にえりかにはツボにハマってしまい、殊更にはしゃいでいる。
こうしてきみや以外の誰かと馬鹿騒ぎをすること自体、出来なくなって久しかった。
「キモいって……。」
一方きみやはさゆりの発言にみるみる青褪めた。
明らかに男としてバカにされている状況より、えりかにキモがられることの方が堪えるようだ。
きみやの様子に、調子に乗っていたえりかも我にかえる。
「ごめんごめんハチ!冗談だってば!せっかく言ってくれたのにね。ごめんね?」
ここで泣かれては困るとご機嫌取りに転じるが、きみやはしょげきっている。
「ほら、ディスクやろ。ハチが入れてくれたやつ。」
えりかは気をそらすためにそう提案して荷物から本格的なフライイングディスクを取り出した。
それを見たさゆりは、えりかが大学時代高崎と同じアルティメットサークルだったのを思い出す。
さゆりが高崎からアルティメットの存在を教わり、高校生でもやる場はないか調べたのももはや過去だ。
そんな仄かな気持ちは、なんの形にもならないまま気がつけば消えてしまった。
その過去の残滓のような円盤をえりかは持ち、きみやと連れ立ってさゆり達のいるシートから数メートル離れる。
何か楽しいことが始まるのだと感じたシバも立ち上がりキラキラした目を二人に注いだ。
「この円盤をキャッチする遊びだよ。シバ君はまずはそこで見ててね。やり方わかったら一緒にやろ。」
えりかの説明にシバがブンブンと頷く。
その間にきみやはさらに20メートルほどえりかから離れて立った。
「いくよー。」
小慣れたフォームでえりかがディスクを繰り出すと、スパッと小気味好く丸い板はきみやに向かって行く。
と同時にシバが裸足で勢いよく飛び出した。
さゆりが声を上げる暇もなく
ぐんぐん加速すると、
みるみるディスクとの距離は縮まり、
パシッ
とうとう、きみやにたどり着く前に追いついたシバがディスクをキャッチしてしまった。
そのまま緩やかにカーブすると嬉しそうな顔でさゆりの元に駆け戻ってくる。
「すっごーい!!シバ凄いね!速い!」
語彙力の溶けたサーバルキャットのように、酔っ払ったさゆりはその速さを褒め称えた。
さゆりの賞賛を聞いたシバは顔中で笑っている。
ディスクを失ったえりかときみやも、遊びを中断してシバの元にやって来た。
「凄いね。普通あれ追いつけないよ。」
えりかは目を丸くして言った。
さゆりはただ凄いとしか思わなかったが、えりかは競技経験があるだけにその異様さをより感じたのだろう。
犬は4,50キロの速さで走る個体もいるというし、獣人も足が速いのかもしれない。
さゆりはそう納得した。
きみやはシバからディスクを取り返そうとして抵抗されている。
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