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マメ柴のシバ
天◯森◯のような男。
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飲食物を買い込んで戻る途中、きみや達の姿が丁度見える位置まで近づいた時だった。
二人しかいないはずのところに、更に二人女性が立っていた。
「わー。面倒なことになってる。」
えりかが少し渋い顔で言う。
もう少し近づいてみると女性二人はさゆりもえりかも面識のない他人で、立っているきみやとシバを取り巻くようにしてしきりに話しかけているようだった。
「何かあったんでしょうか。」
「ナンパでしょ。」
あ、そうだ。あの二人は顔面偏差値が高いんだった。
さゆりは思い出した。
逆ナンなんて会社の先輩みたいなどう猛な女豹しかしないと思っていたが、あんな普通の可愛いお嬢さんたちでもするんだな、と妙に感心してしまう。
それくらいきみやの容姿が女狂わせなせいかもしれない。
「どうする?仲間に入れる?」
「いや、私たちが戻った時点で向こうの戦いのゴングが鳴るのでは?」
彼女達は久々の上物を狩りに来たのであって、冴えない女二人の相手をしに来たのではないはずだ。
それにきみやはえりかしか視界に入らない変態であるし、博愛精神で仲間に入れたところでお嬢さん達が可哀想なことになる。
むしろえりかの提案の方が残酷である。
ちょっとしたスケベ心を出したばかりに自尊心を傷つけられるのだから。
「だよねぇ。ハチのやつうまいこと追い返さないかな。」
手に持ったビールを二人で飲みながら少し遠巻きにして見ていたが、しきりに首を横に降るハチと、前のめりで食らいつく女性達と、何の役にも立っていないシバの様子は変わらず、戦線は膠着し続けた。
「行くかー。ご飯食べたいし。
ごめんね、待たせちゃって。」
程なくえりかが突入宣言をして、あっという間に空になったプラカップをパキリと潰した。
対戦前の駆けつけ1杯だったのだろう。
歩き出すえりかをさゆりは仕方なく追った。
悪く思うなよ、と漫画みたいなことを考えながら。
「えりか。」
近づいたえりかを見つけ、きみやが声を掛けたので女性二人もきみやの見る先に視線を移した。
きみやの顔には「たすかりました!」と書いてある。
「こんにちわー。」
注目されたえりかは笑顔で挨拶をする。
「こんにちわ。あ、きみやさんのお連れの方ですか?」
「そうですよー。主人が何か?」
「え、でもきみやさん彼女じゃないって……。」
「そりゃあ、妻なので。」
気がつけばきみやはにじにじとえりかに寄っていて、控えめに見てとても情けない。
『妻』の登場に怖気ついたのかきみやに幻滅したのか定かではないが、彼女達はあっさり退散していった。
「割とまともな子達でよかったねー。」
えりかはそう言って手に持っていた屋台飯の袋をきみやに渡すと、クーラーボックスから缶ビールを取り出して開けた。
きみやは何事もなかったかのようにもらったモダン焼きのパックを配膳していく。
シバはきみやにお預けされてずっとご飯に釘付けだったが、追加の食事に更に歓喜している。
嫌な予感がしてさゆりがハンドタオルでシバの口元を拭うと、ぐっちょりとヨダレがついた。
垂れる前でよかった。
「あれでですか?断ってもしつこそうでしたが……。」
カバンの奥にタオルを隠蔽した後、さゆりはようやくありつけた食事を他の三人と囲んだ。
「元々あんま頭ごなしに拒絶しないようにしてるから、多少粘られるのは想定内なんだよね。強く出ると恨み買うこともあるから、持久戦で向こうの体力切れを狙うと言うか。今回は既婚っていったら諦めたし良い方。指輪とか確かめて食い下がって来るのもいるからね。」
えりかの話し振りは、相当な場数を踏んだ上でのものだった。
最初に出会ったとき、きみやを取り囲むように遠巻きにしていたファン達をさゆりは思い出した。
あれはきみやの吸引力の全てではなく、突撃して来た猛者達をあらかた返り討ちにした後の残骸だったようだ。
お、恐ろしいやつだな……。
昔のギャグ漫画に出て来るやつじゃん。
さゆりは慄いた。
「でも強く出ないなら出ないで希望を見出しちゃう子もいて、難しいんだよね。」
それをえりかが悩むのはおかしかないだろうか。
見た目は当人の責任じゃないが、かといってえりかの所為でもない。
テメェが下げてる面で起きた事をテメェが捌かないでどうする。
そんな考えで、さゆりはちらりときみやを見た。
えりかの飲んでいたビール缶の残量を確かめて、次の缶を探っている。
先程のことを悪びれている様子もないし、なんなら少し機嫌が良さそうなのはえりかに構われたからではないだろうか。
薄々思っていたが、えりかはこの男とは縁を切った方が良い。
たぶんさゆりが女友達にシバのことを話したら全員が同じ事を言うであろう感想を、さゆりはえりかに持った。
二人しかいないはずのところに、更に二人女性が立っていた。
「わー。面倒なことになってる。」
えりかが少し渋い顔で言う。
もう少し近づいてみると女性二人はさゆりもえりかも面識のない他人で、立っているきみやとシバを取り巻くようにしてしきりに話しかけているようだった。
「何かあったんでしょうか。」
「ナンパでしょ。」
あ、そうだ。あの二人は顔面偏差値が高いんだった。
さゆりは思い出した。
逆ナンなんて会社の先輩みたいなどう猛な女豹しかしないと思っていたが、あんな普通の可愛いお嬢さんたちでもするんだな、と妙に感心してしまう。
それくらいきみやの容姿が女狂わせなせいかもしれない。
「どうする?仲間に入れる?」
「いや、私たちが戻った時点で向こうの戦いのゴングが鳴るのでは?」
彼女達は久々の上物を狩りに来たのであって、冴えない女二人の相手をしに来たのではないはずだ。
それにきみやはえりかしか視界に入らない変態であるし、博愛精神で仲間に入れたところでお嬢さん達が可哀想なことになる。
むしろえりかの提案の方が残酷である。
ちょっとしたスケベ心を出したばかりに自尊心を傷つけられるのだから。
「だよねぇ。ハチのやつうまいこと追い返さないかな。」
手に持ったビールを二人で飲みながら少し遠巻きにして見ていたが、しきりに首を横に降るハチと、前のめりで食らいつく女性達と、何の役にも立っていないシバの様子は変わらず、戦線は膠着し続けた。
「行くかー。ご飯食べたいし。
ごめんね、待たせちゃって。」
程なくえりかが突入宣言をして、あっという間に空になったプラカップをパキリと潰した。
対戦前の駆けつけ1杯だったのだろう。
歩き出すえりかをさゆりは仕方なく追った。
悪く思うなよ、と漫画みたいなことを考えながら。
「えりか。」
近づいたえりかを見つけ、きみやが声を掛けたので女性二人もきみやの見る先に視線を移した。
きみやの顔には「たすかりました!」と書いてある。
「こんにちわー。」
注目されたえりかは笑顔で挨拶をする。
「こんにちわ。あ、きみやさんのお連れの方ですか?」
「そうですよー。主人が何か?」
「え、でもきみやさん彼女じゃないって……。」
「そりゃあ、妻なので。」
気がつけばきみやはにじにじとえりかに寄っていて、控えめに見てとても情けない。
『妻』の登場に怖気ついたのかきみやに幻滅したのか定かではないが、彼女達はあっさり退散していった。
「割とまともな子達でよかったねー。」
えりかはそう言って手に持っていた屋台飯の袋をきみやに渡すと、クーラーボックスから缶ビールを取り出して開けた。
きみやは何事もなかったかのようにもらったモダン焼きのパックを配膳していく。
シバはきみやにお預けされてずっとご飯に釘付けだったが、追加の食事に更に歓喜している。
嫌な予感がしてさゆりがハンドタオルでシバの口元を拭うと、ぐっちょりとヨダレがついた。
垂れる前でよかった。
「あれでですか?断ってもしつこそうでしたが……。」
カバンの奥にタオルを隠蔽した後、さゆりはようやくありつけた食事を他の三人と囲んだ。
「元々あんま頭ごなしに拒絶しないようにしてるから、多少粘られるのは想定内なんだよね。強く出ると恨み買うこともあるから、持久戦で向こうの体力切れを狙うと言うか。今回は既婚っていったら諦めたし良い方。指輪とか確かめて食い下がって来るのもいるからね。」
えりかの話し振りは、相当な場数を踏んだ上でのものだった。
最初に出会ったとき、きみやを取り囲むように遠巻きにしていたファン達をさゆりは思い出した。
あれはきみやの吸引力の全てではなく、突撃して来た猛者達をあらかた返り討ちにした後の残骸だったようだ。
お、恐ろしいやつだな……。
昔のギャグ漫画に出て来るやつじゃん。
さゆりは慄いた。
「でも強く出ないなら出ないで希望を見出しちゃう子もいて、難しいんだよね。」
それをえりかが悩むのはおかしかないだろうか。
見た目は当人の責任じゃないが、かといってえりかの所為でもない。
テメェが下げてる面で起きた事をテメェが捌かないでどうする。
そんな考えで、さゆりはちらりときみやを見た。
えりかの飲んでいたビール缶の残量を確かめて、次の缶を探っている。
先程のことを悪びれている様子もないし、なんなら少し機嫌が良さそうなのはえりかに構われたからではないだろうか。
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