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マメ柴のシバ
シバ、◯◯になって。
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目を開けたシバに、さゆりは幾分か安心した。
「シバ、大丈夫?無理させてごめんね。」
シバの顔を覗き込むようにして話しかける。
「痛い。足痛いよさゆり。」
顔色が良くなっても膝の腫れは引いていない。
シバを安静にしている間に、えりかはきみやに女スタッフがいるドリンク販売の屋台を狙って氷をくれるように頼めと指示を出し、結果氷は大量に入手できた。
今はそれをタオルで巻いて膝に当て冷やしてはいるが、痛みを取り除くほどの効果はない。
「多分本来体が耐えられる以上の負荷が掛かって炎症を起こしたんだと思う。」
症状を分析するえりかを見て、そういえば彼女は養護教諭だったと思い至る。
ようやくさゆりの頭も少し落ち着いていた。
「どうしたら良いんでしょう?」
さゆりは汗が浮きだしたシバのひたいを拭うように手を当てた。
そこは素人でも分かるくらい熱くなっているが、感じた手のひらの感触に少しシバの表情が和らぐ。
「炎症だけなら、使いすぎて起きてるんだから使わなきゃ治る。でも……。」
えりかは言い淀んだ。自分の力が及ばない問題を提示しなくてはならなかったからだ。
「言ってください。大丈夫です。」
さゆりの言葉に、えりかは頷いた。
「骨が損傷してるかも。痛みが酷いし、熱も出てる。本来トップアスリートが短距離走をするくらいのスピードで30分以上走ってたから、状況的にもそうなっておかしくない。
そうなると、普通は専門的な処置をしないと後遺症が残ることがある。」
「病院に行かないとダメってことですか。」
「そもそもこっちの生物じゃないから、こっちの外科技術で治療できるかはわからない。でも今の所シバ君の身体について私の知識とかけ離れた事はないし、見た感じ骨もあるから最悪レントゲンかCTスキャンで折れてるかくらいは分かるはず。」
でももし病院に行って、不法入国者と間違われたら。
そもそも下手に調べて彼が人間じゃない証拠が出てしまう可能性だってある。
だからえりかは、病院に連れて行こうといえないのだった。下手すると、自分はともかくさゆりやきみやの生活にまで影響が出てることになってしまう。
さゆりはシバの顔を撫でた。
痛そうに顔をしかめてはいるが、さゆりの動きに合わせて顔を手に擦り付けてくる。
病院に連れて行かなかったら、シバは今まで通り歩けなくなってしまうだろうか。
向こうに戻ってもまともに働けなくなってしまうだろうか。
連れていったら、不法入国者として捕まってしまうだろうか。
人間じゃないことがバレて、拘留されてしまうだろうか。
それなら病院に連れていった方が絶対良い。
犯罪者と思われても、人外と思われても、日本なら少なくとも治療はして貰えるはずだ。
えりかたちに帰ってもらってから119番通報すればシバがどう判断されても影響は自分だけで済む。
捕まって離れ離れになっても、期限が来てみつるがシバを引き取りに現れたら事情を話してシバが収監された部屋の壁にぽっかりして貰おう。
唯一の引っ掛かりは、もし何かあってさゆりがそばにいられなくなったらシバが一人になってしまうことである。
あと2週間、せっかく時間があるのに。
ひょっとしたら、向こうの世界で厳しい生活が待つ中の、大事な2週間かもしれないのに。
でも、シバを治療しなくてはいけない。
さゆりは決意して口を開いた。
「シバ、四つ足になって。」
「シバ、大丈夫?無理させてごめんね。」
シバの顔を覗き込むようにして話しかける。
「痛い。足痛いよさゆり。」
顔色が良くなっても膝の腫れは引いていない。
シバを安静にしている間に、えりかはきみやに女スタッフがいるドリンク販売の屋台を狙って氷をくれるように頼めと指示を出し、結果氷は大量に入手できた。
今はそれをタオルで巻いて膝に当て冷やしてはいるが、痛みを取り除くほどの効果はない。
「多分本来体が耐えられる以上の負荷が掛かって炎症を起こしたんだと思う。」
症状を分析するえりかを見て、そういえば彼女は養護教諭だったと思い至る。
ようやくさゆりの頭も少し落ち着いていた。
「どうしたら良いんでしょう?」
さゆりは汗が浮きだしたシバのひたいを拭うように手を当てた。
そこは素人でも分かるくらい熱くなっているが、感じた手のひらの感触に少しシバの表情が和らぐ。
「炎症だけなら、使いすぎて起きてるんだから使わなきゃ治る。でも……。」
えりかは言い淀んだ。自分の力が及ばない問題を提示しなくてはならなかったからだ。
「言ってください。大丈夫です。」
さゆりの言葉に、えりかは頷いた。
「骨が損傷してるかも。痛みが酷いし、熱も出てる。本来トップアスリートが短距離走をするくらいのスピードで30分以上走ってたから、状況的にもそうなっておかしくない。
そうなると、普通は専門的な処置をしないと後遺症が残ることがある。」
「病院に行かないとダメってことですか。」
「そもそもこっちの生物じゃないから、こっちの外科技術で治療できるかはわからない。でも今の所シバ君の身体について私の知識とかけ離れた事はないし、見た感じ骨もあるから最悪レントゲンかCTスキャンで折れてるかくらいは分かるはず。」
でももし病院に行って、不法入国者と間違われたら。
そもそも下手に調べて彼が人間じゃない証拠が出てしまう可能性だってある。
だからえりかは、病院に連れて行こうといえないのだった。下手すると、自分はともかくさゆりやきみやの生活にまで影響が出てることになってしまう。
さゆりはシバの顔を撫でた。
痛そうに顔をしかめてはいるが、さゆりの動きに合わせて顔を手に擦り付けてくる。
病院に連れて行かなかったら、シバは今まで通り歩けなくなってしまうだろうか。
向こうに戻ってもまともに働けなくなってしまうだろうか。
連れていったら、不法入国者として捕まってしまうだろうか。
人間じゃないことがバレて、拘留されてしまうだろうか。
それなら病院に連れていった方が絶対良い。
犯罪者と思われても、人外と思われても、日本なら少なくとも治療はして貰えるはずだ。
えりかたちに帰ってもらってから119番通報すればシバがどう判断されても影響は自分だけで済む。
捕まって離れ離れになっても、期限が来てみつるがシバを引き取りに現れたら事情を話してシバが収監された部屋の壁にぽっかりして貰おう。
唯一の引っ掛かりは、もし何かあってさゆりがそばにいられなくなったらシバが一人になってしまうことである。
あと2週間、せっかく時間があるのに。
ひょっとしたら、向こうの世界で厳しい生活が待つ中の、大事な2週間かもしれないのに。
でも、シバを治療しなくてはいけない。
さゆりは決意して口を開いた。
「シバ、四つ足になって。」
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