貴族子女の憂鬱

花朝 はな

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第八話 紳士な第二王子③

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 私は今言われたことが信じられなくて思わず問いかけた。

 「武器ですか?」

 「はい」

 きっぱりと答えた第二王子に何も答えられることができずに黙り込む。

 「・・・」

 「ダメでしょうか?」

 困ったように眉を上げて私を見てくる。

 どう答えたらよいのか・・・。人の武器など、選べるわけがない・・・。そんなにこだわりがあるわけでもないし。・・・確かに私が選んだものは刀だけど、それはたまたま出会って、魅せられたからだ。
 そんな私が第二王子殿下の武器を選べるのだろうか。・・・いや、待て。この話は実のところ、さほど切羽詰まったものではないのかもしれない。

 だが、後ろのカイサは動揺したのか、身体を動かしたようで、衣擦れの音がした。

 『・・・色気のない・・・』

 カイサがぼそりと呟いたのが聞こえる。

 うん、カイサは最初宝飾品か文具、小物を選べと私にさんざん注意していた。確かに私はそちら方面に疎い。自分に合うものも選べない。すべてカイサやエレンが私の装飾品を選び、私は差し出されたものを身に着けてきた。
ああ、そう言えば、碧色の宝石は案外気に入ったことはある。ただエメラルドはあまり気に入らなかったが、不思議な縞のあるマラカイトや淡い色のベリルなどは見ていて気に入って、一時期は宝飾品はそれらの石を使ったものを送られて、宝石箱が碧色一色になったほどだ。
 第二王子殿下の考えはわからないが、普通の貴族子女とともに来るとしたら、宝飾店か装飾品を扱うところではないだろうか。だが、結局のところ、第二王子殿下の申し出は少々淑女と来るには場違いなのではないだろうか。

 これは・・・受け狙い?それとも私に合わせた?・・・おかしいな、今日は一応派手さは抑えて目立たないもののはず。装飾品は身に着けていないので、選びにくかったとか?だから敢えて装飾品を外して、多分外務卿付き武官という肩書に合わせて、武器とか見に行こうと考えたとかかな?なぞだ。

 まあ、いいでしょ。第二王子は、剣の腕もなかなかのモノらしいと聞いている。だが、実際実力は見たことがないのでわからない。まあ、第二王子殿下の外見から似合ったものを選べば良いのだろう。

 「・・・わかりました。私の見立で良いのなら」

 私が答えるまでは不安そうな表情だったが、私が承諾すると笑顔になる第二王子殿下。

 「ありがとうございます。もうすぐなので参りましょうか」

 そう言って上機嫌で私に向けて手を差し出す。エスコートするつもりなのだろう。私が自分の手をのせると歩き出した。

 その店は大通りから枝分かれした細い道の突き当りに在った。第二王子は行き慣れているのだろう、

 甲高い槌音が近づくにつれ大きくなっていく。周囲には騒音に耐えかねるのか、建物はない。石材で建てられた工房は、横長の平屋で、外回りのポーチは木材で作ってある。入り口は丸いアーチ状で、木のドアが付いていた。営業中というつもりなのか、大きくドアは開いており、大き目の意志で閉まらないようにドアを抑えてあった。

 「・・・こちらですか?」

 「はい、そうです」

 「武器を扱う店には見えませんが・・・?」

 槌音が響くので、私は心持ち声を大きめにして話している。

 「この店はルベルティの街で一二の武器屋です。まあ、中に入っていただければわかると思いますが、鍛冶師なども所属しているため、工房も併設していますね。色々捜していて、ある時に評判を聞いて訪れたのですが、一目で気に入りまして、相当長居をしてしまいました」

 「気に入ったものがあったと?」

 「はい、あ、いえ、その時はなかったのですが、捜していたものが私用の物ではなかったので、結局購入できずに別のところで調達することになりまして」

 ・・・?今一わからない。

 「・・・えーっ、つまりですね、こちらへ来たのは間違いないのですが、私の捜しているものがこちらには扱っていないものでした。武器については並べてありましたので、その時は武器を色々見させてもらい、そのままこちらを出て、別の場所で調達をしたのです。こちらは武器しか取り扱わないと知らずに、武器ではないものを探しに来てしまったのです」

 「・・・そうでしたか」

 「そういうことです。では入ってよろしいですか?」

 「はい、入りましょう」

 私の返答に軽く頷き、王子殿下は私の手を取ったまま、私を中へと導き、続いて中に入ってくる。その流れる様な仕草に私は思わず戸惑った。エスコートが手馴れている。そう思い、私はその考えに思わずクスリと笑ってしまった。あの俺様王子なら我先に中に入ることだろう。

 カウンターには初老の男性が腰掛けており、そのひげ面を綻ばせながら口を開いた。

 「いらっしゃい」

 カウンターの奥には工房に繋がっているのだろうか、ドアが大きく開け放たれており、その奥からカンカンと槌音が響いてくる。

 「ああ、邪魔するよ」

 男性の言葉に、軽く顎をしゃくる様にしながら、第二王子殿下が答えた。

 「どうぞごゆっくり。もし聞きたいことがあれば、ご質問ください」

 中に入った私は、目の前に広がる多種多様な武器に目を奪われる。カイサには悪いが、私は淑女とは言えないのだろう、武器を見て気分が高揚してくる。あの槍は城壁の穴から押し出すには長すぎるとか、あっちの槍は下にとりつこうとする兵を牽制するのに使えそうだとか、この弓では距離が出ないだろうななど、私は並べてある武器を見ながら独り言ちた。添えていた第二王子の手などの存在は忘れ、足早に武器に近寄って顔を寄せて使い方を考察する。

 「・・・お嬢様・・・」

 カイサの声が聞こえ、我に返る。振り返ると渋い表情をしたカイサが私を睨むようにして立っていた。ダメだと言いたそうに首を横に振っている。

 「いや、これは、その・・・」

 「本当に武器が好きなのですね!これは良いものを探してくれそうです!」

 第二王子殿下はニコニコと笑顔になっていた。

 「・・・いえ、まあ、その、・・・我を忘れてしまいました。恥ずかしいことに、利用方法を考えてしまうので、武器には目がないのです。女らしくないとは思うのですが・・・、性分でなかなか直せず・・・」

 慌てて言い繕う私を見て微笑む第二王子殿下だった。

 

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