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二章
幕末8
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極秘裏に行われた「焼き討ち決行会議」の翌朝。
晋作は伊助だけを伴い、ひっそりと宿の裏口から外へ出た。
すると、晋作の目の前に立ちはだかる人影。
伊藤俊輔である。
俊輔は、渋い顔を晋作に向けながら、晋作の行く手を阻むように仁王立ちでいる。
「どうした俊輔!こんなに朝早く、何処かへ出かけるのか?」
嘘のように明るい晋作に、俊輔は呆れ顔で答えた。
「どうした俊輔じゃないですよぉ・・・それはこちらの台詞です・・・こんな早朝に裏口から人目をはばかるように!高杉さんこそ何処へ出かけるのですか?」
俊輔は高杉が宿を抜け、遊郭にでも行くのではと、裏口で張っていたのだが、どうやらこれは図星だな、と踏んでいた。
「まったく・・・俊輔には叶わんのぉ・・桜田の下屋敷へ行くのだ、俊輔キミもゆくか?」
「なんだって下屋敷になんてゆくのですか!」
桜田の下屋敷とは、長州藩邸の事で、当時藩に所属する藩士は、勝手に諸国を巡り歩くことは許されておらず、例えば江戸に来たのであれば、江戸の藩邸に届け出を出しに行かねばならない、それが藩士としての務めなのである。
しかし、極秘で江戸入りし、イギリス公使館を焼き討ちしようという者どもが、馬鹿正直に「江戸へやって参りましたので、藩の許可を頂きたくやって参りました」など言えるはずもないし、そんなことを言わないにせよ、危険分子を江戸に止め、黙認したとなれば、長州藩が責任を負うはめになりかねないのだ、そのことをいつもの小姑のような口調で俊輔が言うと、晋作はケロリと。
「ではぁ・・・新宿にでも顔を出してくるかのぉ、俊輔」
そう言い終えるか言い終えないうちに、晋作はもう歩き始めていた。
それを困り顔の俊輔が追う。
俊輔は井上から「高杉さんは何を仕出かすか分からん人だ、キミがお目付役としてしっかり付いておるのだぞ」と言われているので、ここは晋作を追う他ないのである。
「ちょちょチョット!高杉さん!新宿なんかなにをしに行くのですか!」
どうせ、新宿の遊郭か岡場所にでもゆくのだろう、俊輔はもう頭でそう決めつけていた。
「キミは一々喧しい男だなぁ・・・そんなことでは国を背負って立つ男にはなれんぞ!」
「だからぁ!何度言ったらわかるのですか!私はそんなもの背負うような器ではござりません!」
晋作は、俊輔の頼りない発言に、歩みを止めると真顔で吠えるようにこういった。
「俊輔!!大志を持て!藩などではなく!この国をまるごと背負ってやるぐらいの大志を持たずして行動するでないぞ!!」
あまりの迫力に気圧され、俊輔は硬直して。
「はっはい!」
と大きな返事をしてしまった。
まるで脳天から雷鳴を打ち落とされたかのような衝撃であった。
極秘裏に行われた「焼き討ち決行会議」の翌朝。
晋作は伊助だけを伴い、ひっそりと宿の裏口から外へ出た。
すると、晋作の目の前に立ちはだかる人影。
伊藤俊輔である。
俊輔は、渋い顔を晋作に向けながら、晋作の行く手を阻むように仁王立ちでいる。
「どうした俊輔!こんなに朝早く、何処かへ出かけるのか?」
嘘のように明るい晋作に、俊輔は呆れ顔で答えた。
「どうした俊輔じゃないですよぉ・・・それはこちらの台詞です・・・こんな早朝に裏口から人目をはばかるように!高杉さんこそ何処へ出かけるのですか?」
俊輔は高杉が宿を抜け、遊郭にでも行くのではと、裏口で張っていたのだが、どうやらこれは図星だな、と踏んでいた。
「まったく・・・俊輔には叶わんのぉ・・桜田の下屋敷へ行くのだ、俊輔キミもゆくか?」
「なんだって下屋敷になんてゆくのですか!」
桜田の下屋敷とは、長州藩邸の事で、当時藩に所属する藩士は、勝手に諸国を巡り歩くことは許されておらず、例えば江戸に来たのであれば、江戸の藩邸に届け出を出しに行かねばならない、それが藩士としての務めなのである。
しかし、極秘で江戸入りし、イギリス公使館を焼き討ちしようという者どもが、馬鹿正直に「江戸へやって参りましたので、藩の許可を頂きたくやって参りました」など言えるはずもないし、そんなことを言わないにせよ、危険分子を江戸に止め、黙認したとなれば、長州藩が責任を負うはめになりかねないのだ、そのことをいつもの小姑のような口調で俊輔が言うと、晋作はケロリと。
「ではぁ・・・新宿にでも顔を出してくるかのぉ、俊輔」
そう言い終えるか言い終えないうちに、晋作はもう歩き始めていた。
それを困り顔の俊輔が追う。
俊輔は井上から「高杉さんは何を仕出かすか分からん人だ、キミがお目付役としてしっかり付いておるのだぞ」と言われているので、ここは晋作を追う他ないのである。
「ちょちょチョット!高杉さん!新宿なんかなにをしに行くのですか!」
どうせ、新宿の遊郭か岡場所にでもゆくのだろう、俊輔はもう頭でそう決めつけていた。
「キミは一々喧しい男だなぁ・・・そんなことでは国を背負って立つ男にはなれんぞ!」
「だからぁ!何度言ったらわかるのですか!私はそんなもの背負うような器ではござりません!」
晋作は、俊輔の頼りない発言に、歩みを止めると真顔で吠えるようにこういった。
「俊輔!!大志を持て!藩などではなく!この国をまるごと背負ってやるぐらいの大志を持たずして行動するでないぞ!!」
あまりの迫力に気圧され、俊輔は硬直して。
「はっはい!」
と大きな返事をしてしまった。
まるで脳天から雷鳴を打ち落とされたかのような衝撃であった。
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