4 / 53

アクセル・アイアンバトラーとしての新たな人生

しおりを挟む
「Ogyaaaaayyyy!」
 まず、一つだけハッキリと理解できたことがある。俺は赤ちゃんであるということだ。それも、あの世で出会ったあの男の赤ちゃんだ。
 菩薩様に抱っこされている彼とハイタッチを交わした。あれはサッカーでやる選手交代みたいな感じで、この後の僕の人生をよろしく!という意味であったのだと推察している。
 多分だけど、今のこの身体の赤ちゃんは本来なら死んでしまったのだと思う。魂が身体から離れて、賽の河原の役割を果たすあの世のどこかしらでゴブリンに苛まされ、それを救済してあげたのが俺の魂であったのだ。魂というより霊体といった方が近いのかも知れないが、俺自身その辺のところをあまり理解できていない。というより、まったく知らない。

 まだ生まれて来て間もなくて、ろくに思考も出来ず自分の周りの環境なども理解はできていないだろう。ただ、そんな中でも父親と母親、それに姉のようなメイドにとても大切にされていたのは、なんとなくだけど感じていて、彼らを遺してあの世へ行ってしまうことに申し訳なさと、亡くなった後の不安を強く感じていたのだとも思う。
 そして、そこへ俺の魂、霊体が現れた。偶然というよりあの菩薩様のお導きであったのだと思う。何故、彼と俺を邂逅させたのは、俺なんかの想像力ではとうてい理解なんて出来ないけど。
 俺に後のことを任せたのだ、託したのだ。あまりにも幼くして寿命を迎えてしまった彼に、命をあげたいみたいなことを思ってしまったけど、まさかこんな形で変わってあげてしまうことになるとは思ってもみなかった。

 平凡すぎた山田翔太の人生。面白みのある人生、反乱万丈のロマンにあふれた男の一生を送ってみたい、そう思っていたけど、この新しい身体、世界で願っていた人生を送れるということなのであろうか……。

 そうは思ってみても、赤ちゃんの俺はしゃべることもできなければ、自分の力で立ち上がることもできない。泣けてくる。そして、少しでも泣きたいと感じると、意思とは関係なく泣き喚いてしまう。
 32歳の思考を日本語でできるのであるが、体が赤ちゃんのせいか、どんなに自制心を働かせても、泣き喚くという赤ちゃんの本能的な衝動を抑えることはできないのだ。まあ、これが他の人との唯一のコミニュケーションなので、仕方ないといえば仕方ないが。
 あと、恥ずかしながら排泄の方はトイレではなくオムツで、母親やメイドのお姉さんの世話になっている。たまに父親もしてくれる。実に子煩悩で頭が下がる。大きなったら、何か恩返しをしてあげなければならないだろうな。

 ある程度の観察や推察はできる。まず、彼らの言語は日本語や英語ではない。日本語は当たり前として、大学時代に頑張って英検準1級を取得しているので、英語とも違うと速攻で分かったのだ。感じからしてフランス語やドイツ語、はたまた中国語や韓国語なんかとも違うのは明らかだと思う。
 やはり、地球上のどの言語とも違うと感じられるのだ。
 注意深く彼らの言語を聞いていると、特定の発音があることに気づく。そこから、お父さんやパパ、お母さんやママなどにあたる発音、すなわち言語を推察し、やがては確定させていく。
 こうやって、俺は気の遠くなるほど長く感じられる時間の流れの中で、固有名詞や一般名詞を中心に覚えていくのが、毎日の仕事となった。

 アクセル・アイアンバトラー。これがあの赤ちゃんの、いや、俺自身の地球とは異なる世界での俺の名前であり、苗字であった。思いっきり英語圏の名前をしているけど、彼らの言語はあくまで英語ではなく謎の言語なのだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...