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ドラゴンAという存在
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「世界が闇に覆われた時、必ずドラゴンAが現れる。また、ドラゴンA現れる時、必ず世界は闇に覆われる。アクセルは俺に憧れてドラゴンAに成りたがっているけど、あの子にはドラゴンAのマスクを被ってもらいたくないっていうのが本音だよ。もちろん、息子以外の全ての若い世代、次代を担う子供たちの誰しもがな」
「ええ。そうね。わたしは世界中の人々があなたに寄せた期待感の高さ、崇拝や信奉に近い熱狂ぶり、リスペクトの仕方を、同志でありパートナーとして見てきたわ。そういった意味でも、ドラゴンAなんて存在してはならないと思っている。あの当時のあなたを傍(そば)から見つめていて、一人の人間が背負うにはあまりにも重すぎるプレッシャーだと感じたから……。
いくら、ドラゴンAがあまりにもスペシャルな存在とはいえ、世界中の人々は、一人のヒーローとその仲間たちに、四苦八苦、生老病死、艱難辛苦、愛別離苦、阿鼻叫喚、ありとあらゆるものを押し付けすぎたわ。きっと昔の人々も同じだったでしょう……。
一人のスペシャルな存在のカリスマやアイドルを作り上げ、その存在に盲目的に頼りきり、人類のほぼ全ての人が神のように祭り上げる。この盲目的な他力本願を変えさせない限り、人類は進歩なんてしないし、真の強さだって身につけられないわ。
色々な種族がいても、様々な身体的特徴をしていても、人類は皆人類。全ては人間という生き物であり存在。世界に闇が覆われたのなら、それを打ち払うために人類は平等に役割を果たして、その重責を負担し合わなければならないわ。
一人の人間、ごくごく少数の選ばれた者たちという、人々にとって都合よく作られた、選ばれてしまった人たちにだけ、戦いも期待も希望も全て押し付け、頼り切るだけなんて間違っているわ!
そうした人々の悪い癖を、既定されている価値観を疑おうともしない愚鈍さ、浅はかさを思い直させるためにも、わたしもドラゴンAの存在なんてこの世界に要らないと思うわ!」
母さんはリッチやレブナントといった、悪魔のようなブラックモアを人間として許すことのできない存在と、激しい怒りを感じているけど、ドラゴンAである父さんと、その仲間である母さんたちに全てを託した一般の人々にも、怒りを感じているのだ。
きっと、平凡な生活や日常、人生を送るだけの一般的な人では決して味合うことのない、苦痛であり辛酸、大きな罪悪感をブラックモアとの戦いでたくさん経験して、期待し祈るだけの彼らに不平等さから来る、大きな不満を感じているのだろう。
父さんはドラゴンAのマスクを託される程、大人になっていた。だけど、母さんは当時まだ10代後半という若さであったのだ。今は5歳児の俺だけど、山田翔太として生きてきた32年間の記憶は残っている。ハイティーンだった頃の俺なんてほんの子供だったと思う。さすがに当時の母さんの方がずっと精神的に大人であったと思うけど、まだ10代後半の若すぎる女の子だ。きっと父さんたち大人より不条理なものを多く感じていたはずだし、正義感や使命感なんかも純粋で純情でもあったのだと思う。
多感な少女は世間一般の大人たちに釈然としない思いを抱くのも当然で、大人になって、俺、というかバトンタッチしたあの赤ちゃん、本来のアクセルを生んで母親になった後も、少女時代の思いを引きずって生きているのかも知れない。
ごくごく平均的、つまりは究極的ですらある平凡な人生を、平和で治安も良い日本で32年間暮らしてきた俺は、俺なんかにはない特別な才能を持った人たち、例えばアスリートでありアーティスト、彼らのことをリスペクトしているし、その思いに過ちがあるとも思っていないので、母さんの言うことはほとんど理解できないんだよな。
もちろん、優しくいつも笑顔を向けてくれる彼女のことはすごく尊敬しているし、何より大好きだけど。この身体は紛れもなく母さんと父さんの身体から生まれたものだから、本能的に抗えない部分もあるし、何より優しく、また賢くもあるので好きにならずにいられないのだ。
「エリカ、君のいうことはもっともだと思うし、理解もしているよ。いくら偉大な存在とはいえ他人を信じるだけ、祈るだけ、ただ縋りつくように頼り切るだけでは、人間は、人類は弱体化していくだけだろう。ヒーローやアイドルといった生きた人間を、宗教のような偶像に祭り上げ、その多くの人にとってご都合的な存在を当たり前のように求めさせてしまう、世間のシステムも間違っていると思うさ。
だけども、どんな人にも憧れとなる存在は必要だよ。君だって分かるだろう?俺も子供の頃、ドラゴンAというヒーロー的な存在、偶像システムがあったから、ここまで強くなれたし俺自身を制御することもできたと思うんだ」
「まあ!ギーザー!あなたはあなたとわたしの息子を、ドラゴンAにしようと思っているの?あのマスクは、存在は、あなたには申し訳ないけど、血塗られた呪縛でしかないのよ」
「ああ。そのことはあのマスクを被ったこの俺が一番理解しているさ。だけど、特別な存在になれたからこそ、エリカ、君のような素晴らしい女性に巡り逢えたのもまた事実だよ。まあ、ドラゴンAでなかったら、俺みたいな無骨者が10歳も若い美しく聡明な女性と結婚することなんて、まずなかっただろうからな」
「もう!ギーザーたっら……」
「だからさ、ドラゴンAはこの俺で終わりにて、新しい特別なマスクを作るんだよ。闇に覆われた世界を救う存在ではなく、世界を明るく照らし続ける存在のね」
ドラゴンAを終わらせる。父さん、第11代目ドラゴンA、ギーザー・アイアンバトラーの決意は固いようだ。母さんも少し思案を巡らせているみたいだけど、どうやら賛成のようだ。きっと彼女にも、幼い頃に憧れた偶像クラスの存在がいたはずだから。
「ええ。そうね。わたしは世界中の人々があなたに寄せた期待感の高さ、崇拝や信奉に近い熱狂ぶり、リスペクトの仕方を、同志でありパートナーとして見てきたわ。そういった意味でも、ドラゴンAなんて存在してはならないと思っている。あの当時のあなたを傍(そば)から見つめていて、一人の人間が背負うにはあまりにも重すぎるプレッシャーだと感じたから……。
いくら、ドラゴンAがあまりにもスペシャルな存在とはいえ、世界中の人々は、一人のヒーローとその仲間たちに、四苦八苦、生老病死、艱難辛苦、愛別離苦、阿鼻叫喚、ありとあらゆるものを押し付けすぎたわ。きっと昔の人々も同じだったでしょう……。
一人のスペシャルな存在のカリスマやアイドルを作り上げ、その存在に盲目的に頼りきり、人類のほぼ全ての人が神のように祭り上げる。この盲目的な他力本願を変えさせない限り、人類は進歩なんてしないし、真の強さだって身につけられないわ。
色々な種族がいても、様々な身体的特徴をしていても、人類は皆人類。全ては人間という生き物であり存在。世界に闇が覆われたのなら、それを打ち払うために人類は平等に役割を果たして、その重責を負担し合わなければならないわ。
一人の人間、ごくごく少数の選ばれた者たちという、人々にとって都合よく作られた、選ばれてしまった人たちにだけ、戦いも期待も希望も全て押し付け、頼り切るだけなんて間違っているわ!
そうした人々の悪い癖を、既定されている価値観を疑おうともしない愚鈍さ、浅はかさを思い直させるためにも、わたしもドラゴンAの存在なんてこの世界に要らないと思うわ!」
母さんはリッチやレブナントといった、悪魔のようなブラックモアを人間として許すことのできない存在と、激しい怒りを感じているけど、ドラゴンAである父さんと、その仲間である母さんたちに全てを託した一般の人々にも、怒りを感じているのだ。
きっと、平凡な生活や日常、人生を送るだけの一般的な人では決して味合うことのない、苦痛であり辛酸、大きな罪悪感をブラックモアとの戦いでたくさん経験して、期待し祈るだけの彼らに不平等さから来る、大きな不満を感じているのだろう。
父さんはドラゴンAのマスクを託される程、大人になっていた。だけど、母さんは当時まだ10代後半という若さであったのだ。今は5歳児の俺だけど、山田翔太として生きてきた32年間の記憶は残っている。ハイティーンだった頃の俺なんてほんの子供だったと思う。さすがに当時の母さんの方がずっと精神的に大人であったと思うけど、まだ10代後半の若すぎる女の子だ。きっと父さんたち大人より不条理なものを多く感じていたはずだし、正義感や使命感なんかも純粋で純情でもあったのだと思う。
多感な少女は世間一般の大人たちに釈然としない思いを抱くのも当然で、大人になって、俺、というかバトンタッチしたあの赤ちゃん、本来のアクセルを生んで母親になった後も、少女時代の思いを引きずって生きているのかも知れない。
ごくごく平均的、つまりは究極的ですらある平凡な人生を、平和で治安も良い日本で32年間暮らしてきた俺は、俺なんかにはない特別な才能を持った人たち、例えばアスリートでありアーティスト、彼らのことをリスペクトしているし、その思いに過ちがあるとも思っていないので、母さんの言うことはほとんど理解できないんだよな。
もちろん、優しくいつも笑顔を向けてくれる彼女のことはすごく尊敬しているし、何より大好きだけど。この身体は紛れもなく母さんと父さんの身体から生まれたものだから、本能的に抗えない部分もあるし、何より優しく、また賢くもあるので好きにならずにいられないのだ。
「エリカ、君のいうことはもっともだと思うし、理解もしているよ。いくら偉大な存在とはいえ他人を信じるだけ、祈るだけ、ただ縋りつくように頼り切るだけでは、人間は、人類は弱体化していくだけだろう。ヒーローやアイドルといった生きた人間を、宗教のような偶像に祭り上げ、その多くの人にとってご都合的な存在を当たり前のように求めさせてしまう、世間のシステムも間違っていると思うさ。
だけども、どんな人にも憧れとなる存在は必要だよ。君だって分かるだろう?俺も子供の頃、ドラゴンAというヒーロー的な存在、偶像システムがあったから、ここまで強くなれたし俺自身を制御することもできたと思うんだ」
「まあ!ギーザー!あなたはあなたとわたしの息子を、ドラゴンAにしようと思っているの?あのマスクは、存在は、あなたには申し訳ないけど、血塗られた呪縛でしかないのよ」
「ああ。そのことはあのマスクを被ったこの俺が一番理解しているさ。だけど、特別な存在になれたからこそ、エリカ、君のような素晴らしい女性に巡り逢えたのもまた事実だよ。まあ、ドラゴンAでなかったら、俺みたいな無骨者が10歳も若い美しく聡明な女性と結婚することなんて、まずなかっただろうからな」
「もう!ギーザーたっら……」
「だからさ、ドラゴンAはこの俺で終わりにて、新しい特別なマスクを作るんだよ。闇に覆われた世界を救う存在ではなく、世界を明るく照らし続ける存在のね」
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