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ゲームのスクエアジャングルとのズレ

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それにしても、ゲーム『スクエアジャングル』で最重要な存在であり設定であるドラゴンAを、よもやその中身の人が自ら終わらせてしまおうとするなんて、夢にも思っていなかった。
 この世界はゲームを基盤とした地球から見たら異世界であるのだけれども、色々とゲームとは食い違っているところ、描かれていない部分などが多々あるのだ。
 まず、ギーザーはゲームでは死んでしまう。オープンワールド形式のRPGで、シナリオもある程度自由度の高いものであるのだが、大抵のプレイヤーは10歳ほど年上の大人キャラで、伝説の勇者的な立ち位置のドラゴンAであるギーザーのパーティーの一員となる。
 そして、ブラックモアとの激しい戦闘の中、彼らの卑劣な手段の前に選択肢を無くした彼は、死んでしまう。死ぬしか許されない選択肢へと追いやられてしまうのだ。
 拳闘士という職業を選択していて、様々な条件をクリアしているプレイヤーは、彼の遺志を継ぎドラゴンAのマスクを被る、という展開になるのだ。俺もそうした一人であった。もちろん、人によっては違うストーリー展開になるのであるが。

 そして、エリカだ。ゲームだと彼女はプレイヤーと同い年でありながら、ゲームスタート時点で剣の腕前も美貌も抜きに出ている超のつく強キャラで、8割型が男性プレイヤーと言われている中で、多くの男たちが憧れを抱く存在であるのだ。数少ない女性プレイヤーからも人気は高い。
 ドラゴンAとなりリッチ・ブラックモアの世界征服という野望を打ち砕いた後、彼女と結ばれたプレイヤーは多い。俺は彼女ではなく、守ってあげたくなるタイプの幼馴染ロザリーを選んだんだけど。
 プレイヤーの数だけストーリーがあると言われているスクエアジャングル。だけども、基本的な設定は存在している。その基本的な設定が豪快に無視されているのが、俺が転生したスクエアジャングルであるのだ。
 パラレルワールドのスクエアジャングルとでも言うのか。文字通り異世界のスクエアジャングルが、この世界なのである。ギーザーが生き続けドラゴンAとして世界を救ったヒーローになっていること、もう一つ、リッチの息子であるレブナント・ブラックモアが、父と母の会話から察するに、ゲームの世界より10年ぐらい早く生まれているというのが、ゲームと異なる設定であるのだけれど、ギーザーとエリカの間に生まれてきた男の子に転生した俺が気がかりに感じているのが、レブナントの存在だ。
 きっと、俺の運命に大きく関わってくる。なんとなく俺はそう感じ取っているのだ。
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