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恐怖のワニ男

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「剣を失った貴様に何ができるか?地下世界ではわりかし名の知れた拳闘士の俺を相手によ。何もできないんだよ。できる分けないんだよ!いくら五指の一角であり伝説的な存在であり、あのドラゴンAの妻とはいえよ」
「わたしとて生死のやりとりのある世界で、剣を15年以上握り続けて来た剣士、得物を使えなくなった時の状況を考えて格闘技の訓練を十分積んでいるし、何より世界最強の拳闘士ドラゴンAの奥さんなのよ。夫から夜の戯れに、もっと真剣に格闘技を習ってもいるのよ。あなたにドラゴンAから最も格闘技を仕込まれてきたと言っても大袈裟ではない、わたしを倒すことができるかしら?」
「ほざけえ!」

 ワニ男はわたしに向かってきた。そして、キックやパンチの空振りの5コンボ。わたしは元より、夫よりもかなり大きな大男だけど、スキはいくらでも見せてくれるデクノボウ。コンボ後の疲れて息を切らした彼の巨体、その脇腹に情け容赦のない力でのキックを叩き込んであげた。
 っていうより、脇腹に思いっきり食い込んでいた。いや、めり込んでいた、の方が感覚的には合っているのかな?まあ、どちらでも良いや。
「ぐ、げぼっおぼっげろろろ!」
 ワニ男は脇腹を抑えて両膝をついてしゃがみ込んでしまった。そして、ものすごい勢いで嘔吐した。一度目、二度目、三度も。かなり深刻なダメージを与えてしまったようだ。
 夫仕込みのキックということもあるけど、なんといっても剣闘用のブーツだ。軽く丈夫な青光り光沢のあるメタル製の物なんだけど、機動力以外に戦闘中キックを使うことも考慮して、相手の腹の肉にめり込みやすいよう、つま先がすごく尖っているのだ。重装備の相手には無力だけど、今回のワニ男のように肉を露出させている相手には絶大な威力を発揮するのだ。

「もう勝負はついたんだよ。だからこれ以上はやめるんだよ」
「わたしだってゲロを吐いた直後のあんたになんか近づきたくないわ。でも命をかけたやり取りだからね、ケジメはトドメという形でしっかりと取らせてもらうよ」
 わたしはしゃがみ込んでいるワニ男の背後に回る。大量にゲロを吐いた前へは回り込みたくない。背後からのトドメと言ったら、やっぱりスリーパーホールドだろう。
 わたしはメタセコイヤのように太いワニ男の首に、柳のようなわたし自身の腕を巻き付ける。腕部は敵の攻撃からのダメージを少しでも軽減させるために、外側は鎧をつけているが、内側の方は機動性とスタミナを持続させるため、わりかし肌は露出している。
 ちなみに胸の部分はバッチリ鎧を着込んでいる。おっぱいは女にとって一番大事な部分だもん。当然よね。夫と結婚して10年以上、息子も乳離れしてもう長い時間が経ったけど、おっぱいが大事なのは変わらない。
 ちなみにわたしの装備しているアーマー類は、軟金属という特殊でレアな金属で造られている。マテリアル自体がすごく希少性の高い物であり、それゆえこれで武器や飾り物などを造ることのできる職人も世界で数人しかいないのだ。
 もちろん、オーダー品。全部が全部、わたしの身体のサイズ、スタイルに合わせて造られているの。おっぱいもね。ただし乳首までは再現されていないから、あしからず。

「うがああ!悪神ギランさま、お、お助けを~!ドラックロードさまぁ、おは、な、し、がちが……」
 わたしは相手をより苦しめるため、腕の力を全力にしたり緩めたりしながら搾り上げている。腕に感じるぬるく気色の悪い感触から、彼が苦悶のあまりに口から泡を吹いているのが分かる。
 勝負はもうついている。だから、戦闘ではなく拷問。流石に罪悪感を感じるしワニ男に対しても可哀想だと思うけど、しなければならないと分かってもいる。
 ドラックロード。初耳で誰なのかは分からないけど、おそらくブラックモアの一味のものだろう。いや、突き止めていかなければならないのだ。ゲロと泡以外にも彼には吐いてもらわなければならないことがたくさんあるのだ。

 生捕りにする。生かしておくことにより、暗殺者を放ったり、ブラックモアは余計なちょっかいを出して来るだろう。そいつらを捕らえて芋蔓式に敵の大本営まで突き止める。
 その予定であったのだが、ワニ男は死んでしまった。意識が落ちて身体がガクンと重くなったのだが、意識を取り戻すことは二度となかった。激しい射精の後の大量の尿失禁、脱糞もすごい量で、窒息で意識を失うにしても異常な反応だったと思う。
 彼もやはり死にやすいように身体を改造されてしまったのであろうか……。
 
 
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