上 下
15 / 53

有頂天

しおりを挟む
 俺は12歳になった。誕生日が過ぎてから半年ほど経つ。この半年間でグンと背が伸びて身体の厚みもだいぶ増してきた。俺自身ピンと来ていなんだけど声も変わったらしい。気づいたのはちんこの周りに毛がだいぶ生えてきたこと。最初は一本だけ玉袋に生えたのに気づいて、それからしばらくその一本だけだったんだけど、ここへ来て一気に増毛していた。
 実際、12歳になった瞬間から急激に身体が変化したわけではないんだろうけど、不思議と12歳の誕生日を迎えてから、ホント身体が急成長し始めたのだ。
 10歳、11歳の頃、流石に年上の子には敵わなかった。勝てないのは当たり前で、全く自分の力も技も通じず、ほとんど勝負にさえなっていない感じだったのだ。すごく悔しくて歯がゆい思いを噛みしめなければならない、毎日、毎時、毎分であった。
 体重が増えるということは、それだけキックやパンチの打撃力、その衝撃力も増えるということなのだ。それだけではない。身体全体のキレも増しているのを実感していて、体重の増加分に比例+αで打撃の破壊力がついていっているのだ。毎日。

 そのことは年上の子たちとのスパーリングで実証されている。今まで勝てなかった、勝負にさえならなかった一つ二つ年上の子たちに勝てるようになったのである。日本でいえば俺は今現在小6、中1や中2の子たちに勝ってしまうのは、すごいことだと思う。
 俺、つえええええ!ガチ最強!14歳までの中人限定の格闘技大会でぶっちぎりの勝ち方で優勝した時には、有頂天や天狗にならずにはいられなかった。ものすごく田舎地方でのマイナーでナローな地域限定の大会。それでもぶっちぎりの強さで年上の子たちを倒しての優勝ともなると、抑えきれないのだ。
 有頂天になってしまうことを。ヤッホー、有頂天!
「さすがはあのドラゴンAと疾風のプラズマとの間に生まれた子だ。ご両親とも自分たちではなく他の人の元で修行をした方が強くなる、そう言って拙者の元に君を預けられたが、12歳にしてここまで圧倒的な強さ。自分でこんなことを言うのは情けないが、拙者なんかが師匠では際限無く伸びるはずの君の拳闘士としての実力が、際限のあるものになってしまう。拙者の知る限り君の無限大の強さを引き出せるのは、やはり父親のドラゴンA、ギーザー・アイアンバトラーしかいないと思うんだよね。拙者が手紙を書くから一度家に戻って見たらどうかい」

 父と母と共にリッチ・ブラックモアと戦ったロニー・ジェイムズはそう言って俺を両親の元へと戻した。父と母によると、ロニーは拳闘士としての実力はドラゴンマスク級のものであるが、人が善すぎてあまり師匠には向いていないらしい。
 だったら、最初から彼の元へと寄越すなよ!まあ、確かに彼は確かに厳しいトレーニング内容を課すのであるが、少し他人に対してゆるいところのある人物ではあったのだ。
 その次にはコージーというこれまたリッチと戦った仲間の元へと俺は修行に出された。コージーは根は優しくもなかなかハードで厳しいところのある師匠であったが、俺の圧倒的な強さに、ロニーと同じ結論にいたってしまった。
 こうして、俺は再び両親、ドラゴンAことギーザー・アイアンバトラーと、五指小指のエリカの元へと帰されてしまったのであった。
しおりを挟む

処理中です...