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女児拳闘士キャンディス

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 キャンディスのお話はもうちょっとだけ続くもよう。
 キャンディスはもうじき6歳になろうとしていた。身体もぐんぐん成長していて、平均的な女の子の10歳ぐらいの身体になっている。少しだけ胸が膨らんできたような……。というのは父親であるレブナントの判定である。

 初めてドウジョウエリアに来て以来、キャンディスは格闘技の決闘場に登ることが多くなっていた。決闘場は地球のリングのような形をしていたり、相撲の土俵や柔道の畳だったりと場所によって全く異なる。広さも。
 キャンディスが登っていたのはスクエア、つまり四角形の決闘場だ。四隅に鉄柱はあるくせにロープは張られていない。一辺は大雑把に3.5メートルぐらいだ。
 キャンディスの衣装は黒色の拳闘士用ワンピースコスチューム。肩や腰に赤色のフリルがアクセントになっている。この色の組み合わせは6歳女児にしては大人びすぎているだろう。しかし、等の本人はこれがお気に入りであるのだ。
 スクエアジャングルに重化学工業なんてものはないが、メタルや糸を吐く蜘蛛やもっと他の虫、衣料品になる動物植物が大量にいるので、地球と見た目がそんなに変わらないコスチュームが多数存在しているのだ。ベスが着ていたナース服がその例。

 キャンディスの相手は成人の男性拳闘士であった。もちろん、ブラックモアのための薬物投与と洗脳を受けていて、レブナントや彼の配下の錬金術師や心理学者などの命令を忠実に聞くようにできている。
 ボズっ、ビタっ!打撃音がスクエア内部より響き渡る。いずれも、いや、響き渡る全ての打撃音がキャンディスのパンチやキックによるものだ。
 幼いキャンディスの打撃だけが一方的に成人男子拳闘士に決まっていく展開。
 それもそのはず。男の方はいっさいキャンディスに手を出したらいけないルールになっているのだ。言うまでもなく足と頭も。

 キャンディスは目を輝かせてたくさんのパンチやキックをぶっ放し、相手の成人男性にダメージを与えていく。6歳女児であるが体格は10歳女児クラス。それなりの攻撃力の高さはる。
 なんといっても格闘技のセンスは抜群であるのだ。相手を一方的に攻撃できる、打撃を当てることができるという特殊なルールのもと、相手の身体のどこの部位に打撃を入れたらよりダメージを与えられるか、痛めつけることができるのか、そういったことを覚えてしまっているのだ。
 キャンディスは、相手の成人男性をコーナーの鉄柱前に追い詰めると、逆側の鉄柱から勢いをつけてダッシュ。そして、ジャンプ!相手の胸の部分に両足でのキックをぶち込む。
「ぐえええっ!」
 成人男子の口から唾液が飛び散っていく。キャンディスの両足の裏と鉄柱に胸が挟まれ圧迫された瞬間に。彼はたまらずに、鉄柱に背を預けたままズズズとお尻からスクエアのマットへと沈み込んでいってしまう。だらしなく開いたままの口からは、涎が大量に垂れ流れていた。

「よくもあたちのカオにツバをかけてくれたわね!ゆるきゃないんだから!」
 キャンディスはマジギレ状態だった。成人男性の顔を引っ掻いてやった!
「ぎゃあああ!」
 成人男性は痛みに絶叫する。キャンディスの爪は絵本に出てくる悪魔のように、鋭く尖ってしまっているのだ。ここ1ヶ月で急激に伸び始めた。以前食べてしまった毒林檎の影響だと思われる。これが普通の人間にはない、強力な武器になっているのだ。
 レブナントは折れたらどうしようと、心配しているが、かなり硬質なようで当の本人は全く気にもかけていなかった。この爪がいかに強靭なのかは、本人が一番ご存じであるのだ。

 さらに、キャンディスの武器は爪だけではない。
「う……が……ぶ、ぶく、ぶくぶく、ぶくぶくぶく……」
 キャンディスに組みつかれた成人男性は苦悶の表情を浮かべて、悲鳴を上げることもできないほどのダメージを受け、あとは口から泡を吹いて白目を剥いて全く動かなくなってしまった。身体全体がピクピクと痙攣している。
 牙だ。乳歯が抜けてその後に生えてきたのは人間の永久歯ではなかったのである。ネコ科の猛獣のような牙が生えてきたのである。
 キャンディスはネコ科の猛獣が狩をするように成人男性の喉元へと喰らいついたのである。大量の血が飛び散り、あとはほとんど彼の身体が動くことはなかった。6歳女児の身体に尋常ではない力が働いているのは確実であったのだ。

「キャンディスや、大丈夫か」
 全てが終わったあと、ぐったりとして大の字に倒れ込んでしまった娘に、父親のレブナントが駆け寄る。少し遅れて、ラボやドウジョウの所長や研究員、シハンダイなんかも。
 かなり威力の高い攻撃であるが、これは滅多なことでは出させない方が良いだろう。父親のレブナントは、自由奔放に娘を育てているが、これだけは禁止しなければならないと判断していた。
 一方、成人男性は担架に乗せられて運び出されていた。全く動かなくなったまま硬化しはじめた身体の上には、全面的に布が覆い被されている。
 その上には小さく地味な花が一輪置かれていた。これは研究中に死んでしまった者への手向けと言われているが、ただ単に死亡と識別するための物だとも言われている。
 
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