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強すぎ!父と母
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う、あ、あん。、くる、し……よ。だ、れ…かたす……。
………
………
……。
「ぷはあ!ぷはあ!」
こんなにも空気が美味しいだなんて。こんなにも呼吸をできることが嬉しいだなんて。生き続けていくことができる喜びを感じるなんて!ああ。俺は呼吸ができているんだ。
でも、どうして?顔中に血であり涙であり鼻水でありよだれや泡にヌルっと汚れた不快感を感じながら、辺りの様子を探った。
俺を死の淵まで追い詰めた格闘技も女の色香も恐ろしいまでに強いルーシーは、一人の男と闘っていた。あのルーシー相手に互角以上で渡り合っている。体格もかなり立派でかなりハイレベルの拳闘士のようだけど……。
父さんだ!ウソ、なんでこんな所にいるんだよ?息子の窮地に駆けつけてくれたとか、でもそんな都合の良い展開なんてあるわけないよな。だけど、実際に父さん、ギーザー・アイアンバトラーがここにいてあのルーシーと闘っている。
「ぎゃあああ!いてええええよー!腕があ腕があ!」
激痛系悲鳴のシャウトに俺はそちらへと視線を奪われる。右腕を肩の付け根から切断された底ザが、ブシューと爆血している右肩付け根を左腕で抑えながら、のたうち回っている。敵ながらかわいそうに、失神できなかったみたいだ。
彼をこんな目に遭わせたのは母親、エリカ・アイアンバトラーその人であった。彼女も夫と共に窮地の子供である俺を救いに来た格好になったのだ。
だけど、二人とも俺がここにいることなんて知りようがないと思うし、どうやって知ったのかが不思議だ。あるいは、二人の目的地がここでそこにたまたま俺がいただけなのか。
ルーシーは強い。彼女の動きを目で捉えることはできるけど、反応はできない。彼女とバトルをしている最中も、今近くでバトルを観戦している時も。
父さんもルーシーの攻撃を全て捌ききれてはいない。けっこう彼女の高速怒涛連打のパンチをボディに受けてしまっている。けれど、俺みたいに為す術なく全てのパンチを食らってしまっている分けではないし、彼女の小さく細い身体を捕まえては、投げ技で投げ飛ばしたりもしている。
ルーシーは投げ飛ばされた直後、険しい顔で父さん、ドラゴンAのギーザー・アイアンバトラーのことを見つめている。いくらレジェンドとはいえ、ここ数年ほとんど大会にも出場していない、ほぼ隠居状態の50歳を過ぎたおじさんによもやここまで苦戦するとは、想像していなかったのだろう。
俺もよもや、父さんがここまで身体を動かせるとは思ってもいなかった。キッレキレだ。いや、若い頃、レブナントの父親、リッチー・ブラックモアが生きていた頃は、もっと凄まじく強かったのだろうけど。
「うあ!……」
断末魔の絶叫も言い切れないうちに、底ザは頭のてっぺんから母さんの強烈な剣の一撃を受けて即死してしまった。文字通り脳天から竹割状態。モザイク無しで頭の半分ほどまで真っ二つに切り裂かれた、10秒ぐらい前というほんのちょっと昔まで生きていた彼の、額から脳みそが垂れ流れて出ている。目玉も垂れ落ちていく。血がドバーと噴霧しながら。いや、生のグロ画像、マジでモザイク機能が欲しいんですけど。本日一番の吐き気に襲われてしまう。
父さんより10歳以上若い母さんは、やはり身体が滑らかに動いている。いくら剣vs素手とはいえ相手は10人。だけど、観ていて全く不安を感じないほど母さんは次から次へと男たちを斬り捨てていく。
俺ってとんでもない女性のお腹の中から生まれて来たんだよな。あまりにもの残酷なまでの強さに、俺はそう思ってしまっている。
ヒット数では上回っているとはいえ、明らかにルーシーの方が旗色が悪い。そう思ったのは俺だけではなく、黒づくめもそう思ったに違いない。
父さんとルーシーが距離を取った瞬間に、二人の間に割り込んだのだ。彼はダガーをしっちゃかめっちゃか振り回して父さんへアタックしていく。敗れ被れ攻撃。動きが読みづらく案外身体の動きに勢いとキレがあって怖いものなのだ。まして、装備がけっこう強力な武器であるし。
しかし、ドラゴンA相手にはこけ脅しにもならなかったみたいだ。ダガーを頭上高く振り上げた瞬間、父さんのハイキックが手首に炸裂し、ダガーを落としてしまったのだ。手首がぐにゃりと妙な方向へと捻じ曲がっていた。
父さんはさらに黒づくめのボディにキックをぶち込み、相手が身体をくの字に丸めた瞬間、パワーボムの姿勢で持ち上げてしまっていた。そのまま地面には叩きつけずに、投げ飛ばした。どっちがダメージを与えられるのか分からないけど、壁に叩きつけられた黒づくめはそのまま床に落下して、二度と起き上がることはなかった。
あっという間のバトルであったが、その間にルーシーは完全にその姿を消し去っていた。敵わないと思って逃走したのだろう。程なくして、母さんも全ての底ザを切り捨ててしまっていた。
………
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……。
「ぷはあ!ぷはあ!」
こんなにも空気が美味しいだなんて。こんなにも呼吸をできることが嬉しいだなんて。生き続けていくことができる喜びを感じるなんて!ああ。俺は呼吸ができているんだ。
でも、どうして?顔中に血であり涙であり鼻水でありよだれや泡にヌルっと汚れた不快感を感じながら、辺りの様子を探った。
俺を死の淵まで追い詰めた格闘技も女の色香も恐ろしいまでに強いルーシーは、一人の男と闘っていた。あのルーシー相手に互角以上で渡り合っている。体格もかなり立派でかなりハイレベルの拳闘士のようだけど……。
父さんだ!ウソ、なんでこんな所にいるんだよ?息子の窮地に駆けつけてくれたとか、でもそんな都合の良い展開なんてあるわけないよな。だけど、実際に父さん、ギーザー・アイアンバトラーがここにいてあのルーシーと闘っている。
「ぎゃあああ!いてええええよー!腕があ腕があ!」
激痛系悲鳴のシャウトに俺はそちらへと視線を奪われる。右腕を肩の付け根から切断された底ザが、ブシューと爆血している右肩付け根を左腕で抑えながら、のたうち回っている。敵ながらかわいそうに、失神できなかったみたいだ。
彼をこんな目に遭わせたのは母親、エリカ・アイアンバトラーその人であった。彼女も夫と共に窮地の子供である俺を救いに来た格好になったのだ。
だけど、二人とも俺がここにいることなんて知りようがないと思うし、どうやって知ったのかが不思議だ。あるいは、二人の目的地がここでそこにたまたま俺がいただけなのか。
ルーシーは強い。彼女の動きを目で捉えることはできるけど、反応はできない。彼女とバトルをしている最中も、今近くでバトルを観戦している時も。
父さんもルーシーの攻撃を全て捌ききれてはいない。けっこう彼女の高速怒涛連打のパンチをボディに受けてしまっている。けれど、俺みたいに為す術なく全てのパンチを食らってしまっている分けではないし、彼女の小さく細い身体を捕まえては、投げ技で投げ飛ばしたりもしている。
ルーシーは投げ飛ばされた直後、険しい顔で父さん、ドラゴンAのギーザー・アイアンバトラーのことを見つめている。いくらレジェンドとはいえ、ここ数年ほとんど大会にも出場していない、ほぼ隠居状態の50歳を過ぎたおじさんによもやここまで苦戦するとは、想像していなかったのだろう。
俺もよもや、父さんがここまで身体を動かせるとは思ってもいなかった。キッレキレだ。いや、若い頃、レブナントの父親、リッチー・ブラックモアが生きていた頃は、もっと凄まじく強かったのだろうけど。
「うあ!……」
断末魔の絶叫も言い切れないうちに、底ザは頭のてっぺんから母さんの強烈な剣の一撃を受けて即死してしまった。文字通り脳天から竹割状態。モザイク無しで頭の半分ほどまで真っ二つに切り裂かれた、10秒ぐらい前というほんのちょっと昔まで生きていた彼の、額から脳みそが垂れ流れて出ている。目玉も垂れ落ちていく。血がドバーと噴霧しながら。いや、生のグロ画像、マジでモザイク機能が欲しいんですけど。本日一番の吐き気に襲われてしまう。
父さんより10歳以上若い母さんは、やはり身体が滑らかに動いている。いくら剣vs素手とはいえ相手は10人。だけど、観ていて全く不安を感じないほど母さんは次から次へと男たちを斬り捨てていく。
俺ってとんでもない女性のお腹の中から生まれて来たんだよな。あまりにもの残酷なまでの強さに、俺はそう思ってしまっている。
ヒット数では上回っているとはいえ、明らかにルーシーの方が旗色が悪い。そう思ったのは俺だけではなく、黒づくめもそう思ったに違いない。
父さんとルーシーが距離を取った瞬間に、二人の間に割り込んだのだ。彼はダガーをしっちゃかめっちゃか振り回して父さんへアタックしていく。敗れ被れ攻撃。動きが読みづらく案外身体の動きに勢いとキレがあって怖いものなのだ。まして、装備がけっこう強力な武器であるし。
しかし、ドラゴンA相手にはこけ脅しにもならなかったみたいだ。ダガーを頭上高く振り上げた瞬間、父さんのハイキックが手首に炸裂し、ダガーを落としてしまったのだ。手首がぐにゃりと妙な方向へと捻じ曲がっていた。
父さんはさらに黒づくめのボディにキックをぶち込み、相手が身体をくの字に丸めた瞬間、パワーボムの姿勢で持ち上げてしまっていた。そのまま地面には叩きつけずに、投げ飛ばした。どっちがダメージを与えられるのか分からないけど、壁に叩きつけられた黒づくめはそのまま床に落下して、二度と起き上がることはなかった。
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