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旧勢力vs新勢力

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 名目的なブラックモア家の当主は父親のレブナントだ。だけど、実質的にブラックモア家の実権を握っているのはキャンディスであると言われている。
 キャンディスは有能な人物だ。前にも書いた通り表の世界でも大規模な慈善事業、もちろん一般的な事業も行いブラックモア家の財力をもっと莫大にすると同時に、貧民層を中心に絶大なる支持を集めるまでになったのだ。
 頭もキレ実行力があるのはもちろんであるが、七色の薔薇のうちの一色、紫の薔薇に数えられる美貌が、実は彼女の考えたプランを実行にするにあたって有利に働いているとも言われているのだ。
 知的で巧みな話術、商業的な取引でも慈悲深さを随所に滲ませ、顔まで美しく整いすぎた彼女は、男を中心とした取引で、有利にともすれば彼女の思うがままに交渉を進めていき、取引成立を勝ち取ると言われているのだ。
 また、彼女は暗黒の武術大会ではなく、表立ったごく健全な格闘技大会を開催させた。彼女の支持が高い地域で開催され、新しい物好きな人たち、そして、彼女を支持する人たちが受け入れ熱狂している。
 拳闘士ではない格闘家たち。しかし、その実力は、俺も密かに観戦してこの目で見たのであるが、想像以上にハイレベルな試合の連続であったのだ。
 参加している格闘家の全員が引き締まった身体をしていた。身体能力は男女ともに高く、パンチやキック、投げ技、ステップワークといった格闘技における基本的な動作も全員しっかりと身につけていた。試合の駆け引きや組み立て方などは、個人差があってそれが勝敗に直結してもいた。

 試合に向けて良い調整をしてきている。プロの格闘家として当然のように思えるが、俺はたくさんの大会に出場してきて、参加している拳闘士であり格闘家の全員が全員、調整に成功したなんてあり得ないと分かっているのだ。
 俺は100を越える大会に参戦しているが、その全てで必ず一人や二人は調整に失敗した者は出てくるのだ。胡散臭い。おそらくブラックモアの禁断の錬金術によって、人造的に作られた身体であり、その身体で身につけた格闘技の動作であり技術なのだろう。知らずに受けてしまった者がいるだろうし、あるいは、その大半がその可能性もある。
 皆が皆、観客までレブナントであり、キャンディスのことを熱烈に支持している。とくに娘のキャンディスは支持を遥に通り越し、崇拝までされている。彼らにとってキャンディスは悪役令嬢などではなく、救世の天使であり、女神様そのものであるのだ。
 俺も父さんも母さんも妻のベスも妹分的な存在でありながら桃色ドラゴンのマスクを被るライムも、密かに彼らの格闘技大会を観戦し、支持率の高い街に滞在もして、そのことを肌で感じている。

 拳闘士の中にもブラックモアの大会に参戦した者が出始めた。最初はスパイ的に参戦した上位の拳闘士のみであったが、やがて、レベルの高さや賞金の多さなど待遇面に引かれて、伝統的な拳闘士の大会を後にして、彼らの新しい大会に参戦する者が出始めてしまった。堰を切ったようにものすごい数の拳闘士が、向こう側へと流れ始めていっている。
 また、彼らの格闘家が拳闘士の大会に出場することも多々あった。今に始まったことではないが、かつてないほど侵略を受けている、俺も妻もライムもそう肌で感じている。老いが始まり、かつてほど闘う力を無くしてしまった父さんと母さんは歯痒く悔しく感じていて、そして、それゆえに危惧も大きいようであるのだ。
 戦いの構図はもはや光の勢力vs闇の勢力ではない。かつて幾度となく魔の手より世界を救いながらも、貧富の差や身分差、自由を享受する者と不自由を押し付けられる者、全ての人たちに幸福感を与えられずに不平と不満に満ちた秩序しか生み出せなかった俺たち旧勢力と、暗黒の支配者でありながら穏やかで慈悲深い手段で、俺たちでは救済できなかった人々に物質的な援助を伴う救いの手を差し伸べて、その勢力を急速に広げつつある、キャンディス率いる新勢力という局面へと移行してしまったのである。
 そして、戦いの局面は明らかにキャンディスたち新勢力の方が優勢であったのだ……。
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