時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~

紫紺

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第34話 思わぬ展開

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 僕らは息せき切って(たのは僕だけ。冬真は平然としてた)、コンビニにたどり着いた。ただ、ここは僕らが向かっていたのではなく、遠い方のコンビニだ。
 警察に見つかっても困ることはないんだけど、冬真に傷がついたら僕は生きていけないよ。

 ということで、スポドリと念願のアイスクリームを買って、回り道しながらアパートに向かっている。

「それで……一体これはどういうことだ」

 僕も冬真も、アイスを食べながらしばらくは無言だった。口火を切ったのは冬真だ。当然、そう来るよね。

「この間のチンピラは人違いとのことだったな……。正直あの説明に納得したわけではなかったが、連中に本気度を感じなくて、私も油断していた」
「冬真のせいじゃないよ。僕もかなり驚いてる」
「今夜の連中はプロだよ。部屋に盗聴器が仕掛けられてる可能性もあるな」
「ええっ! そんな……」

 そういえば昨日、実家から謎の荷物が届いたんだ。母親にラインしたら、そんなものは送ってないと……。

「嘘だろ……」

 めまいがしそうだ。僕は髪を掻きむしる。

「とにかくケイの部屋に戻って、探してみよう」
「あ、うん」



 結果……。宅配便で送られてきた荷物(地元の漬物とか素麺等など)は関係なくて、玄関の下駄箱の奥に入っていた。僕がハンコを取りに行った間に入れたんだろうな。

「まだ安心じゃないから、明日、専門家に来てもらうようにするよ」

 冬真は防災関係にも人脈があるので、朝一で依頼してくれると言ってくれた。僕はそれまで冬真の部屋にお邪魔することに。

「では、話してもらおうか。ケイがどんなトラブルに巻き込まれてるのか」

 ここまで来たら、黙っているわけにはいかなかった。本来なら、実家の恥ずべき問題。冬真には聞かせたくない。
 けど、そんな簡単な話ではなくなってしまった。ソファーに隣り合わせに座り、僕は小さく息を吐いた。

「僕の実家の……遺産相続問題なんだ」

 盗聴器が宅配便の中に入ってなかったからといって、送り主が関係ないわけではない。正規の荷物みたいなフリしてるけど、違うんだろうな。
 これは、宅配業者を装った奴が、僕の部屋に盗聴器を仕掛けるために誰かが用意した荷物なんだ。
 その誰か。思い当たる人物は二人。

「おそらく、僕の叔父か……叔母だと思う」

 本当は親父の可能性もある。この間のチンピラくらいなら。けど、今度は違うだろう。違うと信じたい。

「そうか……それは辛いな」
「でも、大丈夫だよ。僕は夏休みに帰省して、解決してくるから」
「出来るのか?」

 本当はそんな自信はない。でも、僕が出来ることはそれしかない。今にして思えば、争ってるのが嫌になって、実家を逃げ出したのは良くなかったのかも……。

「うん、出来るよ」

 けど冬真にはそう言うしかない。これは僕の家の……僕の問題なんだから。

「わかった。じゃあ、私も一緒に行こう」
「え?」
「ケイの実家に、一緒に帰省するんだよ」

 思わぬ展開になった。



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