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第43話 誘惑と理性
しおりを挟む気が付けば、外は雷とともに大粒の雨と強い風が大暴れしてる。執拗に窓を叩く音が五月蠅かったからか、それとも夢が衝撃だったからか、僕は目を覚ました。
――――おいおい、なんてこった。
雨の中の合戦。信永に求められるまま応じた策。今まで平和そうなシーンしか夢にでてこなかったから、正直驚いて心臓がハタハタしてる。
信永と言えば戦国時代なんだから当然合戦シーンありだろうに。
――――けど、目が覚めたのはそこじゃない。
実家に帰ってきて、久しぶりに叔父たちに会い嫌な気分になっていた。それが戦の夢を見る原動力になったのはわかる。殺伐とした気持ちだ。
でも……僕、というか、瀬那が信永と寝る!? 真豪さんが好きなのに? しかも寝に行くとこ真豪に見られちゃってたし。
それに驚いて起きてしまった。
――――しかし、これから寝たら、続き見れるのかな。待て待て、僕は続きが見たいのか? ううむ……見たいかも。
僕はベッドの隣で、すやすやと寝息を立てる冬真の寝顔を覗き見る。真っ暗ってわけじゃないから、目が慣れてきてちゃんとわかる。
くっきりとした眉、長いまつ毛、高い鼻と形のよい唇。なんだかため息が出てしまう。
すると長いまつ毛がぱたっと上を向いた。ゆっくりと顔がこちらに……。
「なんだ? 雨がうるさくて眠れないのか?」
「う、わっ! 起きてたの?」
ふううと大きな息を吐き、冬真が体を起こした。眠そうに眼をこすっている。
「いや、なんか視線を感じた」
「ごめん……」
マジで武士だな。ホントならだけど。
冬真に夢の話したら笑われるかな。戦国時代の夢とか。『それは史実と違う』とかクレーム入れられたりして。
――――でも、信永と床を共にしそうだなんて言えない。荒唐無稽が過ぎるよ。
「3時か……雨、凄いな」
「ああ。天気予報では朝までには上がるらしいけど」
「そうか、じゃあもうひと眠りするか」
ごそごそと冬真が再び横になり、肌布団をかけた。僕もそれに倣うように横たわる。でも、体は冬真を向いたままだ。
「冬真……」
「ん?」
「そっち行ってもいい?」
「は?」
冬真は呆れたようにくすりと笑う。
「なんだ。雷が怖いとか? もうかなり遠くなったけど」
「違うよ。ただ……」
「んー。私の理性が保たれるかな」
保たれなくてもいいよ。そう言葉にしたくなる。
「じょ……」
うだんだよ。と言おうと思った。けど、それよりも前に冬真が起き上がった。
「私がそちらに行こう。万が一のことを考えて」
「え……万が一?」
僕がそう尋ねるより前に、冬真は僕のベッドに入って来た。シングルの狭いベッドだ。嫌否が応でも密着する。全然嫌じゃないけど。
「このまま朝が来て、麻衣さんにでも見つかったとしても、私が襲ったと言えるだろ?」
そんな冗談なのか本気なのかわからないことを言う。
「僕が誘ったって言う」
僕は冬真の逞しい胸の中に顔を埋めた。
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