【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第1章 天使か悪魔か

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 夜になるとさすがに冷える。僕は暖炉に薪をくべ火をつける。人は炎を見ると落ち着くとあるが、本当だな。絨毯の上に並べたクッションに座り、炎の明かりを頼りに本を読みだした。冬間近のこの季節、風が窓を叩く。

 ――――ん? 風にしては大きな音がするな。まさか急患ではないだろうな。

 街の誰かが急病にでもなったのか。テリーんとこの赤ん坊かな。それともアシュリー爺さんか。僕は慌てて玄関へと出た。確かに誰かが扉を叩いている。不規則な、だが確実に音が聞こえ、それと同時に扉が振動していた。

「誰だ?」

 僕は確かめもせずに扉を開けた。こんな田舎町に泥棒や強盗がいるはずもない。そう思い込んでいたからだ。

 ――――え?

 だが、扉の向こうに人影はいない。冷たい風に頬を叩かれるだけだった。

「こ……こだよ。下見ろ……よ」

 足元で声がした。僕はそこで初めて、足元に誰かが倒れているのに気が付いた。

「君!? 大丈夫か!」

 慌てて膝をつき、倒れこんでいる青年を覗き見た。

「だいじょ……ぶだったら、ここに、こない……」

 苦しそうな割に憎まれ口をたたく。見た感じ、若い、まだ十代に見えた。

「とにかく、入りたまえ」

 僕は彼を肩に担ぎ、診察室のベッドの上まで運んだ。

「これは、どうしたんだ」

 青年は呻きながら横になった。この寒さに薄手のブラウスとズボン、そこにコートを一枚羽織っただけだ。しかも白いはずのブラウスは、腹部が真っ赤に染まっている。僕は慌てて服を脱がし、傷を見る。

「喧嘩か?」

 僕の問いに青年は頷いた。わき腹を鋭い刃物で切られている。見た目は細い青年だったが、腹筋が発達していたおかげで深手には至っていなかった。僕はすぐに消毒をし、止血をする。

「縫わないといけない。かなり痛いが、構わないね」
「いいよ。もう、先生に任せるから」
「君の名は? 一応聞いておこう」
「ジュシュア。ただの、ジュシュア」

 夜遅かったこともあり、僕は彼を一人で処置することにした。内臓を傷つけていないようなので、それほど難しいことではない。
 痛みを緩和させる薬(つまりは睡眠薬のようなものだが)を飲ませ、口と手、足を拘束した。だが、彼はかなり我慢強いのか、ほとんど暴れることなく手術は済み、あとはぐっすり眠ってしまった。

 服を全て脱がして分かったことだが、細かい切り傷があり、僕はその全てを治療した。喧嘩というより、恐らくリンチにでもあったのだろう。

 ――――それにしても、彼はいったい何者だ? 街にこんな綺麗な青年はいただろうか?

 ジョシュアと名乗った彼は、ウェーブのかかった金髪を首元まで伸ばし、白い肌に女性のような面立ち、ルネサンス絵画を彷彿とさせる美しい青年だった。瞳の色は確かブルー。長い睫毛が寝息とともに揺れている。

 ――――僕は天使を拾ったのか? いや、悪魔だったりして。

 診察室の小さい暖炉がゆらゆらと炎を巡らしている。僕はランプの灯りを消し、椅子に座ったまま眠りに落ちた。



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