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第6章 イーサンの苦悩
(9)
しおりを挟む「マリアまでジョシュアと踊ったと言うのに、貴方ときたら」
それに対しては、何も言うことはできない。ジョシュアは一体いつの間にワルツを覚えたのか。帰りの馬車で彼はいとも当然のようにこう答えた。
『ダンスの本、本棚にあったよ。パーティでは踊ることになるってジュリーが言ってたから、一応覚えていったんだよ。イーサンが踊れないなんて知らなかったけど』
「面目ない……」
「あなたがちゃんと自分の家庭を持つ算段もできていないのに、養子をもらうなんて無理な話です」
「でも、それとこれとは……」
言いかける僕を、姉は再び制した。
「でも、後見人にはなれるわ」
キャサリンはそう言って、口元を緩める。僕ははっとして顔を上げた。
「後見人?」
後見人とは、養子縁組はしないが、本人が成人し独立するまで親代わりとなる制度だ。ジョシュアの場合だと、成人はあと二年だが、独立するにはもう少しかかるかもしれない。
「それなら私は賛成できるわ」
「キャサリン」
「最初は断固反対するつもりだったのよ。見ず知らずの孤児を……いくらお人よしのあなたでもありえないって」
姉の表情はいくらか柔らかくなっていた。僕は心臓が逸るのを抑えきれない。全く考えもしなかった姉の提案に僕は興奮していたのだ。
「でも、ジョシュアに会って考えを変えたわ。あなたの人を見る目も信じられるかなって」
「それは酷いな。僕は自分の人を見る目はあると思っているよ」
「そうねえ。あなたももう、26になったんですものね……。フランクもすっかり懐いてしまったし。彼、怪我はもういいのでしょう。今更学校は無理だけど、何か手に職をつけられればいいわね」
僕は姉の話に頷いた。それはジョシュアが興味を持たなければどうしようもないけれど、今彼は、ようやく歩きだした赤ん坊のようなものだ。人や本を通じて社会に顔を出した。
「そうだね。僕も考えてみるよ。それにしても後見人か。さすがキャサリンだ。僕は養子のことばかり考えて……」
「後見人? 養子? なに、それ?」
「ジョシュアぁ! 手を洗おうよ」
背後に現れた気配とともに、ジョシュアの声とフランクの大声が響いた。二人が公園から帰ってきた。
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