【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第6章 イーサンの苦悩

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「ジョシュア、おかえり。お疲れ様」
 僕は努めて笑顔で彼に向かった。彼は少し怯えたような表情で僕たち姉弟を見ている。姉は僕に目で合図すると、フランクを連れて洗面所に向かった。 

「イーサン、さっき、何の話をしていたの?」
「うん。君のね、後見人になるって話だよ」
「後見人? 誰がなるの?」
「僕に決まっているだろう? 後見人がどういうものかわかっているかな。要するに君の親代わりだ」
「イーサンが、俺の……後見人……」

 僕は俄かに不安になった。彼がどういう反応を見せるか。今まで全くこの話をしてこなかったのだ。僕だけならいいが、キャサリンやランパード氏がいる前で、下手な言動はして欲しくない。彼の態度が今後を決めてしまうかもしれない。

「ジョシュ……」

 僕はそう言いかけてやめた。いや、驚きが言葉を止めてしまったのだ。彼は湖のような青い瞳からぽろぽろと涙をこぼした。

「あ……」

 自分でもその涙に驚いたのか、手のひらで拭うと洗面所に走っていった。

「あれっ!? ジョシュアが泣いてるう!」

 キャサリンと居間に戻ってきたフランクが囃し立てるようにそう言った。僕はその二人を追い越し、ジョシュアを追った。彼は洗面所の前で立ち止まり、水道の蛇口をひねった。

「ジョシュアどうした? 大丈夫か?」
「イーサン……俺の親代わりになってくれるのか?」

 追いかけてきた僕を見上げてジョシュアがそう言った。

「そうだよ。嫌かい?」

 ジョシュアは涙で濡れる頬のまま、首をふるふると振った。

「嫌なわけないよ!」

 そう言って、僕に抱きついてきた。首の後ろに両腕をかけ、飛び込むように。

「こらこら、どうしたんだ」

 突然の彼の行動に僕は驚きを隠せなかった。それでも、これは好意として普通に受け取ってやればいいのだと思う。
 姉とフランクがその様子を見ているのはわかったけれど、きっと変な風には映っていないだろう。フランクが『赤ちゃんみたいだねぇ』と小声で母親に告げ口しているのが聞こえた。

「俺、こんなこと初めてで。誰かに俺のことをちゃんと考えてもらうのって……」
「ジョシュア。僕が君のことをきちんと考えるのは当たり前じゃないか」

 僕は彼の耳元でささやいた。

 ――――君は僕の大切な人だから……。

 ジョシュアは僕の肩に乗せた頭を何度も上下させて頷いた。僕は彼の黄金色の髪を撫でる。その様子を最初は笑顔で、けれど、そのうち少しだけ不安げに見る姉の姿を、僕はその時気付くことはなかった。


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