【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第6章 イーサンの苦悩

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 姉の一家が二頭立ての馬車に乗って帰っていった。フランクは最後までジョシュアと離れるのを嫌がったが、また夏には会えるからと言われてようやく客車に足を運んだ。

「イーサン、貴方を信じてるからね」
「え? なんのこと」
「いえ、なんでもないわ。体に気を付けて」
「ああ、姉さんたちもね」

 最後の言葉、姉が何を言いたいのか、僕は何となくわかる気がした。姉は僕がジョシュアに寄せる気持ちをわかってしまったのかしれない。
 でも、そこには何の根拠もないはずだし、僕もそれを白状するつもりは毛頭なかった。言ってしまえば僕たちは引き離されてしまう。そんなことはさせない。



「どうしたの? イーサン。疲れた?」

 自分の家族とは言え、いつもの倍は疲れていた。一緒に後片付けをしているジョシュアにそう尋ねられ、正直に首肯した。

「疲れたよ。姉家族の相手は毎年疲れるからね。楽しくもあるけれど、複雑なところだ」
「じゃあ、少し休もうよ。俺も疲れた」

 ジョシュアはほとんどフランクの相手を一人で担っていた。元気な五歳の男の子の相手は間違いなく疲労を彼にもたらしただろう。僕たちは暖炉に火をくべ、絨毯の上にクッションを並べてそこに二人で寝転がった。
 夕暮れはすぐに夜を誘うだろう。しまいかけのクリスマスツリーのオーナメントが転がっている。暖炉の炎を写す丸い球がきらきらと光っていた。

「もう少しそばにおいで」

 いつもなら横にピタリと来るジョシュアが、なぜか体一つ分ほど離れて横になっていた。

「うん。でも今は駄目」
「なんだ。どうした?」

 僕は顔を彼の方に向ける。鼻筋の通った綺麗な横顔が見える。長い睫毛が瞬きの度、リズミカルに上下していた。

「今、考えてるんだ」
「何を?」
「イーサンが俺の後見人になった時の事」

 今朝、彼に告げた『後見人』の話。彼は涙を流して喜んでくれた。『俺のことをしっかりと考えてもらったのは初めてだ』と。

「どうだった?」
「イーサンも俺もシックなジャケットを着てね。弁護士さんのところで待ってるんだ。そして、イーサンが勿体ぶってこう言う。『ジョシュアの後見人を務めます』って」
「そうだな。そういうふうに言うかな」
「言うよ。きっと」

 ジョシュアが僕の方に顔を向けた。金色の髪が揺れ、彼の頬に落ちる。青い瞳がオーナメントのように輝いた。

「弁護士さんが『わかりました。ジョシュア君。それでいいね?』って聞く。俺は……」
「俺は?」
「何て言おうかな」
「おい!」

 面白がって笑いだすジョシュアの手を僕は引っ張った。ジョシュアは引っ張られる力そのままに僕の方に寄ってきた。そして僕の左肩に頭を乗せ、いつものようにぴったりと体をくっつける。

「お願いします」
「ん?」
「はい。よろしくお願いします。って頭を下げるんだよ。帽子を被っていたら、それを取って、お辞儀をするんだ。それで、お願いしますって……」

 僕はジョシュアの細い顎に右手を添え、そのまま唇を寄せた。まだ何か言いたそうだった彼の唇は僕に絡めとられ、くぐもった音に変わる。

「イーサン……イーサン……」

 僕の名を喘ぐように呼ぶジョシュア。蠢く舌を吸うように食むと、体中が痺れるような感覚で満ちていく。暖炉の薪が弾ける音と僕らの激しい息遣いだけが部屋を満たしていった。



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