シャワールームは甘い罠(R18)番外編追加しました!

紫紺

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エピローグ

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 寒さに身を震わせていた冬が終わり、春の陽気が丸まっていた背筋を伸ばす。そこかしこに姿を見せるピンク色の風景は、街中を歩く人々の心を躍らせていた。

『先生、ついにアニメ化が決まりましたよっ』

 電話口で興奮を隠せない小泉さん。完全に声が裏返っていた。

「マジですかっ! ああ、やったあっ! てっ!」

 僕の声も当然、どこから出てんのか状態。ガッツポーズしようと立ち上がった時、しこたま膝を机で打ち付けた。

 で、その打ち合わせのため、久しぶりに構文社に出向いた。駅から見える公園の桜が七分咲き、綺麗だ。


「先生、続編の評判は上々ですよ。編集長も鮎川零の代表作になると太鼓判押してました」

 会議室で待っていると、小泉さんが開口一番そう言ってくれた。

「ありがとうございます。自信になります」
「次もお願いしますね」

 『砂漠の月』シリーズ第2作目『オアシスの盗賊編』は5月末に発売予定だ。そしてもちろん、第3巻も刊行が決まってる。

「それと、アニメ化記念の件なんですが。昨日送っていただいた短編でいくことに決まりました。これも凄く面白かったです」
「あ、良かった。急ぎの依頼でしたので……」
「そこは本当に申し訳ございませんでした。編集長が急に言い出すもので。でも私もこの短編、読者の方も喜ぶと思いますよ」

 アニメ化がほぼ決定と言われていたとき、小泉さんから短編を1本書いてくれと頼まれた。
 アニメの専門雑誌に載せる『砂漠の月』番外編だ。短期間の締め切りという条件のなか、僕が書き上げたのは。

「ロミオ主役のスピンオフ。第2巻の宣伝にもなるし、さすがです」

 相好を崩し、小泉さんが僕を持ち上げてくれた。ロミオがアライジャたちと出会う前の前日譚だ。急いだ割には僕も気に入っている。

「ていうか……。鮎川先生がまともな恋愛してるようで安心してます」

 ふふふ、と軽やかな笑いを立てる。

「な、なに言ってるんですか……」
「それとも物足りなく感じてます?」

 完全に人を小馬鹿にしたような下衆な笑みを浮かべる。小泉さん、だから彼氏出来ないんですよ。

「それは……ないですよ。全然足りてます」

 日本語が変だ。でも、間違ってはいない。僕は十分に満足してる。現在進行形の恋に。




「まだ行けます。キツイときこそ、筋肉が育ちますよっ」
「えーっ。もう無理だよ」
「無理とか言わないっ! 僕の修士論文のためにも!」
「なんだよそれー」

 トレーニング中は相変わらずドSなトレーナー。この春、彼は修士課程2年生になった。


「まだ行けるだろ? ほら、こっち向け」
「もう……無理……だから……んんっ」
「許さないよ。あなたの体が溶けるまで続けてやるから」
「あ……ああん……」

 プライベートでもドSな彼。あれからずっと、僕は翻弄されっぱなしだ。そこどこだって? それはもちろん、甘い罠の真っ只中だよ。




 完結



最後までお読みいただきありがとうございました!
楽しんでいただけたなら幸いです♡♡♡ 
                 


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感想 1

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