【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々@U.S.A.

紫紺

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第90話 頼れるお方

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 翌日、検査も終わってようやく退院できることになった。
 ジェフやショーンはもちろん、スタッフたちがお見舞いに来てくれたけど、この日、懐かしい人が僕らの前に訪れた。

「大変でしたね。ま、後処理は私がやっておきますから、安心して家にいてください」
「水口さんっ! いつこちらにいらしたんですか?」

 僕らが契約してる事務所で担当をしてくれてる水口さんだ。
 相変わらずシュッとしたスタイルでダンディーな雰囲気。淡い色のサマージャケットにストレートのデニムが似合ってる。

「昨夜遅くにね。搭乗中にマイケルから連絡があったときは驚きましたよ」
「すみません。折角来てくださったのに」

 既に着替えを済ましていた僕と佐山は、水口さんとともに病室を出た。

「警察から事情聴取受けました?」
「はい、事件後すぐ病室にやってきて……昨日も」

 入院していた二泊三日の間に、彼らは何度もやってきた。渡米中の日本人だから、捜査も慎重にやってるんだろう。

「もうそれもないと思うので、安心してくださいね」

 水口さんはタクシーに乗るとすぐ僕らにそう言った。相変わらず、この人の仕事は早い。
 いったい何をどうしたのかは知らないけど、僕らがこのことに煩わされることはないんだろう。

「来週の月曜日、帰国する手配も出来ています」
「え? 来週? もう三日後じゃないですか」
「それは俺が頼んだんだよ。とにかく一度、日本に帰った方がいい。そうだろ?」

 僕を挟んで左側の佐山が諭すように言う。いつの間にそんな話になったんだ。
 あ、でも。あいつはあの山小屋で僕を抱きしめながら、『すぐに日本に帰ろう』って言ってた気がする。その時は僕も、何度も頷いた。

 ――――でも、そうだな。もう少しでロバート達にも被害が及びそうになったんだ。警察沙汰にもなったし、帰っていいならそうした方がいいに決まってる。

「わかりました。水口さんは残るんですか?」
「はい、そのつもりです。色々やることもありますしね」

 クールな印象に似合わない、柔らかい笑顔を僕に見せた。僕のことを気遣ってくれてるんだ。全く僕は情けないな。

「水口さん、あの、お願いがあるんです」
「なんですか?」
「もし、佐山のここでの活動を考えているようでしたら、それについてはためらわず、予定通りにして欲しいんです。僕の怪我も大したことないし、水口さんなら、僕らがもう面倒に巻き込まれないようしてくれますよね?」

 随分虫のいい話だが、僕は真剣だった。水口さんは、佐山がこっちでライブしたがってたのを知ってる。
 僕は勝手に今回の渡米はそれを実現させるためのものだと考えていたんだ。

 ――――それが僕のお粗末な行動のために駄目になるのは嫌だ。

「何言ってんだ、倫。そんな話、今しなくてもいいだろ? 俺たちはもう十分仕事したよ。帰国したらしばらく、2年でも3年でものんびりするっ」
「2、3年!? 馬鹿なこと言うなよっ」

 タクシーの狭い空間で言い争いをしそうになった。何を言ってるんだ。今おまえがどんなに大事な時なのか、わかってるのかっ!?

「静かにしなさい。二人とも」

 普通の音量で、でも、鋭く重い水口さんの声が僕らの喧騒を一瞬にして止めた。

「佐山君の言う通り、今はそんな話をする必要ありません。私に任せてください。悪いようにはしませんから。とにかく市原さんは帰国して体を休めなさい。いいですね?」

 ストレートの前髪をすっとかき上げる。切れ長の双眸がきらりと光って、僕らに有無を言わせない。

「りょ……了解です」

 それからは、水口さんが話す事務所の最近の出来事を大人しく聞いていた。
 佐山が僕の左手を包み込むように握ってる。それに指を絡め、しっかりと握り返した。





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