童貞は最終兵器サイボーグになる

ハッピーランド(養成所)

養成所と変わった検査 3

「政府推薦って政府推薦枠のことかよ？」

「いかにも！」

マサルは相変わらず自信満々な態度であった。そんなマサルを見てガラの悪い兄ちゃん(以下ガラ兄)は腹を抱えて大笑いし始めた。

「お前・・・政府推薦枠ってのはなぁ？国からお墨付きのダメな童貞が貰うもんなんだよぉ、それをエリートォ」

ガラ兄は腹を抱えて顔を真っ赤にし、窒息死するんじゃないかと思うぐらい笑っていた。それと同時にガラ兄の放った言葉を聞いたナオトは下を向き、唇を強く噛んだ。ナオトは自分が情けなくて悔しかった。ガラの悪い奴に殴られそうになった挙句、内心馬鹿にしていたヲタクに庇ってもらい、そして馬鹿にされているのに何も言い返せない自分に腹が立っていた。しかしナオトと違いマサルはニコニコしていた。そしてこんな言葉を放った。

「あの～でもお主は魔法使いでござるよね？それって政府から援助をもらっているわけでござるから～、お主も魔法使いでなかったらただのダメな奴でござるよね？」

マサルの放った言葉のせいでナオトは一瞬で凍りついた。ただでさえ薄暗くて寒い廊下がさらに寒く感じた。一方ガラ兄は明らかに頭に血が上っていた。

「なんだぁ？テメェー」

ガラ兄は眉間にしわを寄せ、マサルを睨みつけていた。指をクラッキングし、マサルが何と言おうと殴りそうな雰囲気である。マサルは何かを悟り弁解を始めたが

「おっとと！コレは失敬したでござる！小生の先ほどの発言はお主の理論上での話でござる！小生は決して童貞はダメな奴とは思わないでござる！」

と、常識的に考えれば明らかに謝るところがズレている弁解をした。実際マサルの発言は完璧にガラ兄を煽ってしまっていた。ガラ兄はいきなり右手から火を出して

「テメェーもサンドバッグ志望者のようだナァ...ぶっ殺してやる！！！」

そう言いながらガラ兄はまたクラッキングをしつこくした後、助走をつけながらご自慢の右手を後ろに大きく引き、マサルの顔面に向かって拳を突き出した瞬間

バシッッ

っと骨が折れるような鈍い音がした。


「ここは館内です。暴れないで頂けませんか？」

「なんだぁ！！！テメェー！！！」

ガラ兄の右手は確かにマサルの顔面に向かっていた、しかしその右手は第三者の左手の中に収まっていた。ガラ兄の右手を止めた人物は、黒のスーツに身を包み、黒の縁のメガネをして、ナオト達には背を向けて見えないが、鋭い目をしており、耳が隠れるくらいの長さの黒髮のを持った長身の男だった。

「なっ、何だテメェ！！！」

ガラ兄は右手の火を消して2、3歩下がり汗を流しながら長身の男に威嚇した。長身の男は表情を変えずに

「私はこの施設の者です。それより指の骨大丈夫ですか？医務室はあちらですよ？」

長身の男は医務室があるらしい方向をガラ兄に案内していた。ガラ兄は最初は頭に血をのぼせていたが急に叫び出し、殴り掛かるのかと思いきや医務室の方に走り去ってしまった。ナオトとマサルはその一通りのやり取りを呆然として見ていた。

「貴方達もご友人同士離れず待機場で待っていてください。」

長身の男にそう言われた2人は返事もせずに待機場に逃げるようにして走って戻っていった。




待機場に着きベンツに座ってからしばらくして落ち着いたナオトは長身の男にに言われた言葉を思い出した。「ご友人同士離れず待っていてください。」ナオトにとっては否定すべきところだったかもしれない。だが不愉快ではなかった。自分を守ってくれたマサルは友人なのではないかと思ったからだ。ナオトはマサルに意味のない質問をした。


「なぁ、俺ら友人か？」

ナオトは自分が馬鹿げた質問をしている事は自覚していた。ついさっき出会ったばかりの相手にいきなり友人宣言に近いことをしているのだ。普通の人ならそんな質問をされたら恐怖を抱くだろう。マサルは

「・・・友人でござるか...違うでござるねぇ...」

と言った。いくらマサルでも友人認定はしてくれないようだった。ナオトは「そりゃそうだよな」と思い、下を向きため息が漏れそうになった時

「我らは！同志！同志でござるよ！」

マサルは何故か誇らしげに言った。ナオトは「ハッハッ、そうかよ」と迷惑ぶって話していだが密かに久々に友人ができたことを喜んでいた。



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「そういや、どうして俺の名前分かったんだ？」

「あー、これ。学生証落としたでござるよ」

「あ、ありがとう...」


返してもらった学生証は湿っていた。