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クローゼの胡幻

クローゼの胡幻9

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糸の先、赤い球体がゆっくりと姿を現した。

何も無いのに淡く姿が浮かび上がり、半透明だと思ったら先程と同じくハッキリと姿を現したのだ。

現れたソレは、先程ミストルァルタに向かって投げられたのと、何も変わらなかった。



「っ綾瀬さん!
何処かに隠れて!!」

「遅い…!」



クローゼの胡幻が綾瀬に向かって投げられた。

綾瀬がソレにとっさに身構えるが、無力な少女に何も出来ないのは分かっていた。
ミストルァルタが強く目をつむる。



するとふいに遥か高い天井から、巨大な音が響いた。



外から内へと直接響いたソレを認識するのと、胡幻の硬く細い糸が斬られたのは、ほぼ同時だった。



――トン!



何かが着地する音がし、ミストルァルタはハッとしたように目を開いてソチラを見た。



「…グレイシア」



綾瀬のポツリと呟いた声が、辺りに静かに伝った。




 。

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