大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう

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愛を乞う

理由

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そんな彼を見て、セレーネは自分が何か的外れなことを問いかけてしまったかと不安になった。

「あ、の……エルゲン。ごめんなさい。私、何か変なことを言ってしまったの?」
「いいえ、そんなことはありません……が」

エルゲンは言葉を区切り、意を決した風にセレーネの肩をぎゅっと掴んだ。一体、彼の表情の意味することは何なのか。さっぱり分からないが、彼はこれから意を決しなければ伝えられないようなことをいうのだと、セレーネは少し緊張した。

「セレーネ、その……夫婦の営みの……方法はご存じですか」
「ええ、知っているわ。一緒に寝台に入って、キスをして、触れ合うのではないの」

セレーネがあまりにもきっぱりと言ってのけるので、エルゲンはいぶかしんで「その触れ合うことで具体的に何をするのかはご存じですか」と再度問いかける。

「身体を触るだけではないの?」

零れ落ちそうなほど大きな瞳を瞬かせるセレーネに、エルゲンはその表情を曇らせた。まさか、違うというのだろうか。いやしかし……。花嫁教育を受けた時には、そのようなものだと簡単に説明されたのだが。

「まあ、触ることは確かですが……いいですか、セレーネ。その行為というものは、まさに玻璃細工に鈍器を挿し込むような行為なのです。あなたはとても痛い思いをすることになる。そんなことを、私が平気で出来るわけがない」
「……エルゲン」
「要するに、私は意気地なしなのです。セレーネ。長年想い続けた……私の生きる理由でもあるあなたに痛い思いをさせることが、嫌で、怖くて堪らない」

泣きそうな表情で、それでも目を反らしてはならないと強い意志を宿し、エルゲンはセレーネの身体を抱きしめる。そういえば、エルゲンは結婚した当初。セレーネに触れることを躊躇うような節があった。ふた月してようやくエルゲンは「手」に触れてくれるようになったが、手から、頬、額、そして抱きしめるという行為に至るまでには決して短くはない月日を要した。

セレーネはようやく、そういうことだったのかと理解する。彼がこんな風に思っていたからこそ、セレーネと触れ合うのを躊躇うのだ。

「……エルゲン。私は、あなたとすることなら、例え痛い思いをしたって構わないと思ってるわ」
「……」
「ごめんなさい。こんなこと言われたってあなたは余計に苦しむだけかもしれないわね。でも、本当にそう思うのよ。私だって、あなたに負けないくらいあなたのことが好きよ。ねえ、エルゲン。私も1つ聞くわ。逆にもし私が、本意ではないまま、あなたに痛い思いをさせたとして……それであなたは私のことを嫌いになるの?」

問いかけると、エルゲンは瞠目して、ふるりと力なく首を振った。
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