婚約者が愛していたのは、私ではなく私のメイドだったみたいです。

古堂すいう

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玉座より

虚しさ

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受け入れたられた愛の育み。その先に生まれたのがエドモンドであった。と国王は幸福を滲ませた声で陶然と語る。当時第四皇子であった彼。しかし今、目の前にある玉座に座っているということは、つまりそういうことなのだろう。とミレーユは察する。

「兄達は権力争いを続け、不運にも皆死んだ。そして、私の前に玉座が転がり込んだ。私は玉座を選び今こうしてここにいる。幸い、エドモンドはとても優秀で、戦で功績をたてて爵位を与える機会を私につくってくれた」

そう語る国王の目には、郷愁が浮かぶ。いったい今、彼はどんな景色を目に浮かべているのか。ミレーユはまたそっとエドモンドへと視線を流す。彼は何とも思っていないかのような顔をしていた。余裕の表情を崩さぬままに、ただ静かに実父である国王を見つめ、ミレーユと視線を合わせた後に口を開いた。

「……陛下、話をお戻しになったほうがよいかと」

腹の底に響くような声。普通、彼の身分から言えば国王が思考の海に浸っているのを遮る権利などないが、王族の血が流れていることを思えば、当然、その行動は許される。

「すまない、そうだったな。それでミレーユ嬢、どうだろう。私が言うのもなんだが、これは器量も優れているし、なにより誠実な男だ」

いかがかな、と言われても。

ミレーユは困り果ててしまった。

ミレーユはすでに自分自身の見る目を信じることが出来なかった。当然のことである。自分の意思で選んだ人間があんなろくでもない男だったのだから。けれどだからと言って人の勧めに従って「分かりました」と言えるほど従順な性格でもないのである。

(それに……)

ミレーユはぎゅっと拳を握った。国王の考えはきっとこうだ。莫大な資産を有する公爵家の家督をどこの馬の骨とも知らない人間には渡せない、と。そう考えているに違いない。ミレーユが選択を間違えたばかりに、国王は今後の公爵家を心配してこのように提案してくれているのだ。感謝すべきなのだろうが、それでもミレーユはすぐに了承の言葉を吐くことだ出来なかった。

「では、お試しで恋人として過ごしてみるかい、お嬢さん」

ふと、思考の海から顔をあげた時、目の前には背の高いエドモンドの姿があった。相も変わらずの無精髭。その顔に浮かぶのは余裕の表情のみで、優しさや愛情のようなものは感じられない。少なくとも彼がこれまでミレーユを助けてくれたのは、ミレーユが美人だからではない。ミレーユが公爵令嬢であり、公爵家の家督を渡す相手を選択することのできる人間だったからである。エドモンドは隠れた王族の1人として、なんともしても下手な人物に公爵家の家督と莫大な財産を渡すわけにはいかなかった、ということだろう。

彼を信じたことまで、間違いだったとは思わない。けれど、その「事実」がミレーユにはどうにも虚しかった。
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