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藤色の花木は (ガブリエルside)
彼女の好きなもの (ガブリエルside)
しおりを挟む「違う。見舞いのための花だ」
「見舞い?あの子……体調が悪いのか?……そういえば、最近はどこにも姿をお見せにならないらしいと聞いたことがあるな」
「……誰から?」
「ん?あー……最近懇意にしているご令嬢だよ」
リュダはガブリエルには及ばないが、そこそこの美男子だ。ガブリエルとは違い、表情や行動に愛嬌があるので、貴族の女性達からの人気も非常に高い。
とはいえ騎士見習いの時には浮ついたことをしている時間などほとんどないから、王宮内や社交界で浮名を流すことはなかった彼だが……騎士となってからは、数多くの女性と交際しているらしい。
王宮にいると、色恋の噂というものは嫌でも耳に入ってくるものだ。
「でも、そうか。あのものすごく元気そうなお嬢さんが体調不良か……」
ものすごく元気そう。と力強く言ってのけるリュダの横顔を見ていると、脳裏に再びロメリアの無邪気な笑顔が過った。
幼い頃から、彼女はよく笑う人で、よく拗ねたり、怒ったりする女性だった。
だけれど、ここ最近ガブリエルが見たのは、ただ青白く、瞼はきつく閉じられ、苦渋に満ちた顔だった。
何かの病であるならば、解決策もあるのだが。
「それで、お前はどんな花を持っていこうと思っているんだ?」
「まだ……決めていない」
すでに多くの花を送っている。ただ香りの良い花。見目の良い花。珍しい色の花。遠方の花、高価な花。希少価値の高い花。
だが、公爵邸のメイドから伝えられる彼女からの言伝は「ありがとう」それだけだ。
だから、彼女が喜んでいるのか、いないのか。それすらもよく分からない。
花がいけないのだろうか。
「……花以外に、何かあるだろうか」
そう呟いたガブリエルに、リュダは目を大きく見開いて「花以外って……でも、見舞いの定番と言えば花だろ?まずは花を贈るべきじゃないか?」と問いかける。
「もう、何度か贈っている」
「え!?あ……そうなの?それじゃあ……まぁ、花以外のほうがいいかもな」
「……何がいいと思う」
「うーん……そう言われてもな。お嬢さんは何が好きなんだ?」
「宝飾品だな」
間髪入れずに答えたガブリエルに、リュダは少し感心した様子を見せる。
「……うん、すごく貴族のご令嬢らしいな。でも意外だった。お前が即答できるなんて」
「幼い頃から彼女の好きなものは変わらない」
ずっと昔から彼女は、宝飾品が好きだ。ドレスも好きだが、特に公爵夫人から宝飾品のお下がりを貰った時には心底嬉しそうにしていたことをガブリエルは思い出す。
『ねぇ、見て、ガブリエル!お母様からブローチをいただいたの!可愛い私にぴったりのブローチじゃない?』
公爵夫人が身につけていたそのブローチは、デザインが繊細でとても美しくはあったが、真ん中に飾られた深みのある青色の宝石のせいか落ち着いた印象が強く、ロメリアに似合っているとは言い難かった。
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