愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

文字の大きさ
43 / 79
藤色の花木は (ガブリエルside)

彼女の好きなもの (ガブリエルside)

しおりを挟む

「違う。見舞いのための花だ」
「見舞い?あの子……体調が悪いのか?……そういえば、最近はどこにも姿をお見せにならないらしいと聞いたことがあるな」
「……誰から?」
「ん?あー……最近懇意にしているご令嬢だよ」

リュダはガブリエルには及ばないが、そこそこの美男子だ。ガブリエルとは違い、表情や行動に愛嬌があるので、貴族の女性達からの人気も非常に高い。

とはいえ騎士見習いの時には浮ついたことをしている時間などほとんどないから、王宮内や社交界で浮名を流すことはなかった彼だが……騎士となってからは、数多くの女性と交際しているらしい。

王宮にいると、色恋の噂というものは嫌でも耳に入ってくるものだ。

「でも、そうか。あのものすごく元気そうなお嬢さんが体調不良か……」

ものすごく元気そう。と力強く言ってのけるリュダの横顔を見ていると、脳裏に再びロメリアの無邪気な笑顔が過った。

幼い頃から、彼女はよく笑う人で、よく拗ねたり、怒ったりする女性だった。

だけれど、ここ最近ガブリエルが見たのは、ただ青白く、瞼はきつく閉じられ、苦渋に満ちた顔だった。

何かの病であるならば、解決策もあるのだが。

「それで、お前はどんな花を持っていこうと思っているんだ?」
「まだ……決めていない」

すでに多くの花を送っている。ただ香りの良い花。見目の良い花。珍しい色の花。遠方の花、高価な花。希少価値の高い花。

だが、公爵邸のメイドから伝えられる彼女からの言伝は「ありがとう」それだけだ。

だから、彼女が喜んでいるのか、いないのか。それすらもよく分からない。

花がいけないのだろうか。

「……花以外に、何かあるだろうか」

そう呟いたガブリエルに、リュダは目を大きく見開いて「花以外って……でも、見舞いの定番と言えば花だろ?まずは花を贈るべきじゃないか?」と問いかける。

「もう、何度か贈っている」 
「え!?あ……そうなの?それじゃあ……まぁ、花以外のほうがいいかもな」
「……何がいいと思う」
「うーん……そう言われてもな。お嬢さんは何が好きなんだ?」
「宝飾品だな」

間髪入れずに答えたガブリエルに、リュダは少し感心した様子を見せる。

「……うん、すごく貴族のご令嬢らしいな。でも意外だった。お前が即答できるなんて」
「幼い頃から彼女の好きなものは変わらない」

ずっと昔から彼女は、宝飾品が好きだ。ドレスも好きだが、特に公爵夫人から宝飾品のお下がりを貰った時には心底嬉しそうにしていたことをガブリエルは思い出す。

『ねぇ、見て、ガブリエル!お母様からブローチをいただいたの!可愛い私にぴったりのブローチじゃない?』

公爵夫人が身につけていたそのブローチは、デザインが繊細でとても美しくはあったが、真ん中に飾られた深みのある青色の宝石のせいか落ち着いた印象が強く、ロメリアに似合っているとは言い難かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

【完結】最後に貴方と。

たろ
恋愛
わたしの余命はあと半年。 貴方のために出来ることをしてわたしは死んでいきたい。 ただそれだけ。 愛する婚約者には好きな人がいる。二人のためにわたしは悪女になりこの世を去ろうと思います。 ◆病名がハッキリと出てしまいます。辛いと思われる方は読まないことをお勧めします ◆悲しい切ない話です。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

処理中です...