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意外について

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とう子さんは俺と付き合いはじめて、少しずつ世界が広がっていると言ってくれた。

その中でも意外にハマってしまったものはプールだった。


「いやいやいやいや、絶対いやー!」
「なんで、どして、」
「こんなお肉を人前に晒せないよ・・・」
「そんな、すごい太ってるわけじゃないじゃん」
「太ってるでしょー!」
「最近、ちょっと痩せたじゃん・・・」


まあ、全体的に丸コロだけど。
それでも塚本さんキレイになったと千川さんたちは言っていた。


「でも暑いし・・・プール行きたいし、彼女と行きたいし?」


うちの会社は夏休みはそれぞれで取る。イベント繁忙期だからだ。一日ずつバラバラに取ってもいいし、まとめて9月にまわす人もいる。
7月のプールは割と空いているが、やっぱり平日の方がいい。一緒に休んで行きたかった。


「足浸かるだけでも?」
「・・・・・・」


そんなわけで最初は渋々と彼女はプールについてきてくれた。

水着の上にぶかぶかのTシャツを着てプールサイドに現れたとう子さん。それはそれで、なんかワクワクしてニヤけてしまう。


「自分がブスなことは、わかってる・・・目はつぶらかもしれないけど、団子っ鼻だし、そもそもチビでデブのおばさんだし・・・」
「そんなことないよ。すっっっごく可愛いよ」
「・・・謎なのよ・・・なんで私みたいな女の水着姿にデレデレするのかな・・・」


なぜか、もう疲れた顔をしている。
まあまあまあ、場所取りしといたから、と彼女の手荷物を持ってペタペタと移動する。
平日だが、結局朝から混んでいた。もちろんカップルもいるが、中高生や家族連れが多く、彼女もだんだん水着姿になることに抵抗感が無くなってきたようだ。

Tシャツの下は、ホルターネックのブラタンクトップにショートパンツのビキニ。

「かわいい!かわいい!」
「わかった!わかったから!」
脱ぐ瞬間がいちばん興奮するんだけどな。


恥ずかしがる彼女にカラダ隠しで大きな浮き輪を持たせて、流れるプールへ。


そこからは、ずっと流れてた。
はじめは浮き輪に入ってつかまって流れてたが、そのうち俺におんぶされたり、浮き輪の上に寝っ転がったりして、イチャイチャ何周もした。楽しー!

昼は焼きそばやフランクフルトを買い、とう子さんお手製のチーズおかかおにぎりも。

ウォータースライダーもはじめてだったらしく。ごねてたのはなんだったのか、ってくらいはしゃいでた。


夕方、名残惜しそうにする彼女。
「よし君、また来ようね。」

ほんと、可愛いんですけど・・・



帰りのファミレスで夕飯をモリモリ食べたが、翌日「痩せてた!」と、彼女は目をキラキラさせて報告してきた。
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