次郎と俺のハナシ

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3章 焔の山にて

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 身体が痛すぎて、焔の山に到着してから結局3日は宿で休んでた。

 動けないことを知っている宿の受付の人が何くれと世話をしてくれた。申し訳ない限りである。

 お手間をとらせました...というと、水の城からの方はよくありますので、と笑われ、水の城の観光客は皆、反省すべきだと思った。俺も含めて。

 4日目はヨロヨロになりながらも動けたので、街歩きをすることにした。街を歩いてると、水の城の人?と声をかけられるし、湿布分けてあげるね、と親切なお婆ちゃんがくれた。

 なんというか、水の城の人は焔の山の人に常日頃から迷惑をかけまくってるのだろうか。相手の対応が手慣れた感じだ。

 顔立ちを見る前から水の城の人間か聞かれた気がするのは気のせいだと思いたかった。ヨロヨロしているからじゃなくて。

 どちらにしろ、焔の山の人達は親切な人が多い気がする。気性が荒いというのも誇大伝聞で一部だけな気がしてきた。

 けれど、歩いて見えてきた光景がそれを否定してくる。
 街中の大広場にキャンプファイヤーがある。思わず自分の目を疑った。街中だよね、ここ。

 非現実的であるが、水の城の氷のオブジェと同様らしい。

 キャンプファイヤーは勝手に燃え続けるが、周囲を燃やすことはないらしい。

 けれど、食べ物は燃えるようで、肉や魚、野菜まで焼いてる人が普通にいる。
 それに加えて、焼き加減で喧嘩してる人もいるし、何故か怒って松明を振り回している人もいる。

 そして、それを全く気にしていない住人達。日常的な光景なんだろう。あんまり煩いヤツは、そこらで歩いてる婆ちゃんに叩かれてる。バシィィといい音がした。怖い此処。

 やっぱり、消火器は抱え込んでくるべきだったと後悔した。


***

 消火器を探すために、近くの露店で水晶占いをしているお姉さんに聞いてみた。

 すると、水の城の方ね、不安が消えるように占ってあげる、と言われた。

 このままだと不安で街歩きができそうになかったので、うなづいた。

 占いのお姉さんは水晶に両手を当てながら俺に告げた。

 ...観光で来たのね...なのに、とても火に強い恐れを抱いているのを感じる...そう、そうね...
 けれど安心して、あなたが無事にこの国から帰れる方法はある、この札をお持ちなさい、時には信じることも大切よ...持ち歩かないのはおススメできない、その場合のことは、あなたに告げにくいのだけれども...


 スッと頭が冷静になった。人の不安を煽るような間があるが、内容が薄っぺらく、札自体も和紙のようなものに山と炎のマークのようなものが書かれているだけである。

 なんだか馬鹿らしくなって、不安が消えたからある意味占いのお陰かもしれない。

 札はいいや、お姉さんありがとうね、と告げ、占いの代金を払ってその場を立ち去ろうとしたとき、背後からこう言われた。


 あなたの大切な人は今、幸せな夢の中にいるわ、安心しなさい、と。


 慌てて振り返ると、占いのお姉さんはもうその場に居なかった。

 周囲の人に、さっきまでいた占いのお姉さんは?と聞くと、占いのお姉さん?と首を傾げられた。

 占いなんかより松明がいいよ、松明は運気を上げてくれるからね、とよく分からないことを言いながら、先程見た怒りながら松明を振り回している人を示す人もいた。

 先程の現実感がない出来事について、その場で考えこんでいたら、近くのお婆ちゃんから松明を渡された。どういうこと。
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