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05;王子の異変(R18)

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第一側室妃の館

ミレーヌの部屋で寛ぐルードヴッヒ王子
穏やかなピアノの音が響いている
ソファにもたれかかり、疲れた様子で音色に耳を傾けている

演奏が終わり、王子が拍手を送る
「ずいぶんとお疲れのご様子ですね」
「あぁ・・・やる事が多くてめまいがしそうだ」
「最近ジョアンナ様のほうにばかりお通いだと聞いておりましたが」
「あれの元では休めなくてな・・・ちょっとうるさいし」
「そうですか、ではこちらでは、ゆっくりなさって下さいませ」

「ミレーヌ・・・」
ミレーヌの膝に頭を乗せて膝枕をした
「・・・・」
ゆったりとした時間が流れ、そしてしばらくして王子がゆっくりと起き出すとミレーヌに口づけをした
そのまま、寝室に入って行った

部屋に入ると、ベットにミレーヌを押し倒し
唇を合わせる
器用にドレスやコルセットを外して、下着を全て取ると
ミレーヌの首筋から鎖骨、そして胸のつぼみに唇を落とす

「あんっ」

手で胸を揉みながら、つぼみを舌で弄ぶ
残った手で茂みをなぞるとぬるっと蜜が溢れているのが分かる、

「あんっあぁあん~へんになります」

穴に指さしこみ動かすとさらに喘ぎ声を出すミレーヌ
ルードヴィッヒもいつの間にか裸になっており、
その濡れた場所に腰を勧める、そして一気に貫いた

パンパンパンと肌と肌があたる音が響く

「いやぁ~あんっあっあん!きもちいいあんっ」
「うっ」

ミレーヌの中にルードヴッヒの子種が出された

「はぁはぁはぁ」
二人の息遣いが聞こえる、自分の下で”正常位”のみの行為で息をつくミレーヌ。
貴族の嗜みとして普通なのだが、物足りなさを感じる皇太子だった。










恒例の側室妃とロゼッタのお茶会

「珍しくミレーヌ様にお渡りがあったとか」
フェリシアが言うと
「珍しいのう、あの女のところばかり行っておったのに」
エイザベスは紅茶をすすりながら言った
「お疲れのようでしたわよ、王の代わりの仕事をさせられているらしいですわ、要領がまだ悪いので、お疲れになるのでしょう」

「労わってあげてくださいね」
そうロゼッタが言う

「前から思っていたのですが、王子が何故ジョンナ様に入れ込むのかわからないのです」
マリエッタが言うと皆同意する
「魅了魔法と精神操作魔法を使っているからですわ」
ロゼッタが平気な顔で言う

「なっ!それは犯罪ではないですか!」
「弱いので誰も気付かないのです」
「王子はあの者の事を、本当は好きではないですのかえ?」
「いえ、本当に弱いのです、王子が彼女を好きになったからこそ、掛かってしまった魔法なのです」
「結婚式挙げた後からですよね、お通いが減ったのは」
「魔法を跳ね返して要る?・・・ロゼッタ様、初夜になにかあったのですか?寝込まれましたよね」
「えーと、それはごめんなさい」
「「「「「「何かありましたね」」」」」」

「2人の距離が、近くなった訳では無いようじゃな、」
「むしろ悪化?暴言を言われた事は聞いております、愛しておいでですのに・・・」
ミレーヌは悲しそうにロゼッタを見る
「先日の太子交代の儀に並んで座っただけで、全身鳥肌と震えが・・・たぶん顔も引きつっていたかも」
「ロゼッタ様・・・」
「また、あの言葉を目の前で言われたら、拒絶されたら、その恐怖で・・・」
思わず泣き出したロゼッタ、側室達の前で初めて泣いた、何時も慰めるのはロゼッタだったから
「ごめんなさい、なんだか皆さんの顔を見ると安心しちゃって」
だまって、ロゼッタに皆触れて見つめてくる6人の側室達だった




「少しは気分晴れましたか?」
そうマリアが聞いてくる
「えぇ、彼女達のおしゃべりや演奏はとても心地がいいわ、皆、私の我が儘で王宮に来たようなものなのに、皆優しいし」
「そうは思ってらっしゃらないと思いますよ」

「そうかなぁ、ミレーヌ様なんて、3歳の頃かなぁ、
お家に伺ったとき、庭の隅で一人ぽつんと花を眺めてらして、みるとピアノの精霊が付いていたから、
『お花もいいけどピアノやってみたら?』
って進めて、そしたらすごく上手になって注目されたんだけど、政略結婚で嫁ぐとピアノ続けられないって言うから、王子様は嫌いじゃないって言うので側室になってもらって、演奏してもらっているの、私が聴きたかったからなんだけど・・・王様もすぐ了承してくださったし、王子もまんざらじゃなかったし・・・私の我が儘なんだけどなぁ・・・」

「ピアノの精霊って聞いたこと無いですが」
「下級精霊で、殆どの人はたぶん感知出来ない、そんな精霊山ほど居るよ、私の周りに居るのは超級精霊なので他の人にも見えるけど、実は私の周りに居る精霊は2万を超える・・・皆見えるようにしたら光で私が見えなくなるだろね・・・」
「・・・・女神様みたい・・・」
「やだ!マリア!・・・精霊だよ神じゃないよ!」

「下級精霊はそれだけでは何もならないわ、憑かれている本人の努力がないと、でも憑いているのといないのとでは雲泥の差が、努力の結果に出るのよね」

「私の周りに低級精霊もいっぱいいるけど、私、ピアノの練習殆どしてないから上達しなかったのよ・・・」

「他の皆様もそうなのですか?」
「マリエッタ様以外は皆大体同じ経緯で側室に・・・マリエッタ様は自分から私に接触してきて『あなたの発想を下さい!』って『私は必ずあなたの発想を現実にして見せます!資金と地位を下さい』って売り込まれた・・・で側室は地位ね、魔法省の研究部の客員職員になって国のお金で研究してる、職員だから給与も出るし、殆ど研究につぎ込んでるみたいですけど」

「皆さん才能を存分に発揮されてますね、コンサートされるのでしょう?側室妃様達の」
「そうよ、会場にレイニア様の絵を飾って会場は無料で入れるけど、絵は販売してて収益金は、孤児院に寄付されるチャリティコンサートよ、主催は私になってる・・・ミレーヌ様でって言ったのに発想は私だからって・・・何もしないのにな~」
「曲作ってませんでした?」
「あ!そういえば、せがまれて、でも楽譜読めないし書けないので、思いつく音楽をピアノで引いたのをミレーヌ様が楽譜に起こして皆で歌詞やアレンジつけてたな~最終的に全く違うものになってた気が・・・」

「・・・・・」
「どうされました?ロゼッタ様」
「スタンピード」
「え?」
「マリア!騎士団長と宰相をこっそり呼んで」
「か、かしこまりました」
「ロゼッタ様・・・また行かれるのですか?」
ルナが不安そうに言う
「大丈夫前より能力は上がっている、光(アルフヘイム)と闇(シェイド)が居ないのはきついけど、大丈夫よ」

しばらくして騎士団長と宰相がロゼッタの部屋にやってきた
「ロゼッタ様、スタンピードは何処に!?」
「北北西、王都から1000㎞まだ、初期段階ね集まりかけてる段階、早々に上位種を狩ってくるわ」
「しかし、皇太子妃のあなたが行かなくとも、初期段階なら・・・」
「上位種Sランク10体、殺れる?」
「・・・・・」
「上位種は任せて、こぼれた雑魚は任せるから、軍の展開よろしく、でも念のため2時間以内に私が戻らなければ、Sランク冒険者の招集はよろしく」
「!ロゼッタ様!」
「今回は今までで最高ランクの敵だからね、もしもってことの為に移転魔法の魔石置いておくわ、魔力切れでも戻れるように、戻ってくるのが死体じゃないこと祈ってて」
「嫌です!ロゼっタ様!」
泣き崩れるルナとマリア

ロゼッタは戦闘服に着替えていた
「しかしロゼッタ様その姿は!?」
緑の迷彩服に防弾ベスト、ヘルメットに防毒マスク、肩にはライフル(魔法具)、足には軍用ブーツ
(記憶が戻ってから、作っていたのよ、この日のために、マリエッタに頼んで試作品として、
私が使うって言ったら反対されそうだったから・・・
前から戦闘用のドレスで戦うのに、動きにくくて危なかったのよね、戦闘用なのにドレスって・・・)

「森の中だとこの色なら目立たないし、防御に力注がなくてもいいように防御魔法も展開してある」
「変な仮面よりは良いかもしれませんが」
「え?結構気に入ってたんだけどあれ・・・」

「じゃ行って来るわ!」
深呼吸するとロゼッタはその場から消えた
後には魔石の周りに魔方陣が展開していた



隣のルードヴッヒの部屋、隣は静か(防振防音障壁展開中)だが、
「廊下が騒がしいな」
ルードヴッヒは廊下に出た、もう夜も更けた段階でこの騒ぎ
「ジュリアーノ!それに父上?」
「!ルードヴッヒ、寝てなかったのか・・・」
「どういう意味です?この騒ぎは?」
「スタンピートだ」
「!・・・スタンピートが起こっているのに私には連絡無しですか?どうして?」
「約束だからな・・・ロゼッタとの」
「どういう意味」


「キャー!ロゼッタ様!」
メイドの悲鳴が皇太子妃の開いたドアの向こうから聞こえる
「行きます王様」
「あぁ・・・頼む」
ジュリアーノが部屋に入っていった、続けて王が入る、その後をルードヴッヒが付いていった
部屋の入り口付近には騎士団の師団長達が数人、目を見開いてルードヴッヒを見ていた

部屋の中央、魔方陣の中に頭からお腹から血を流し、体中切り傷だらけの緑の服を着たロゼッタが横たわって居た
「これはどういうことだ・・・」
ルードヴッヒが驚きの声を出す

「ロゼっタ!聞こえるか?」
ジュリアーノが手をかざして光魔法で治癒を始める、
超級精霊の光(アルフヘイム)が何処かに封印されているので
光魔法保持者は中級以下の治癒しか出来ない状態だった、止血して傷を塞ぐくらいしか出来ない、傷跡も消すときは長期にわたって治癒魔法を施さなくてはいけない

「くそっ光精霊(アルフヘイム)さえ開放されれば!」
「ジュリアーノ?」
「ロゼッタ!!!」
ロゼッタは入り口付近に居る騎士団長を見て
「・・・騎士団長・・・・ごめん1体倒せなかった・・・ごめんなさい・・・魔力切れ・・・ごめん」

「!Sランク冒険者に召集、スタンピード上位種Sランク討伐依頼!たたき起こせ!出動だ!」
騎士団は一斉に出て行った

「ロゼッタ!大丈夫だ、団長が皆を守ってくれるルードヴッヒのことも守ってくれる、だから休め」
そう王が行ってロゼッタの頬触る

「うんっ、おとうさん!」

子供のように返事をしてロゼッタは眠りについた
「おとうさん?庶民のような言い方だな・・・大丈夫か?」
王が戸惑っていた

「魔力切れによる混乱ですね、底をつくまで魔力を使うと精神や体に異常が発生します、回復にかなり時間がかかりますが、回復したら、かなり強くなることが証明されています、が、魔力切れは死にもつながるのでだれもやりませんが・・・」
そうジュリアーノが言った

「湯浴みを、着替えを」
おろおろになっているメイドたち
「私がやる」
そう言ったのはルードヴッヒ
「しかし・・・」
戸惑うメイドたち
「分った、任せる、大事に扱えよ」
そう王が言うと

「もちろん、しかし後で説明してもらって良いですか?父上」
「・・・ああ分った」
「ルードヴッヒ様、傷は治しましたが、傷跡は残ってます、やさしく洗ってやってください」
そうジュリアーノが言った
「・・・わかった」
なんでお前にお願いされなきゃいけないんだと内心思ったが、幼馴染の従兄弟だ、身内だと思っていっているのだと気づいて黙って返事をした

浴室、裸にしたロゼッタを見て絶句した
「何だ?初夜の時にこんな傷、無かったよな」
どう見ても、今ついた新しい傷のほかに古そうな傷が多数全身にあったのだった
「顔にも・・・魔法で隠してたのか・・・」
湯船につかると抱きかかえながら、やわらかい布で全身をやさしく洗った
「こんなあどけなかったか?いつもツンケンして偉ぶってたのは、虚勢か?」
ドキンッと心臓が波打つのを感じた
お腹に大きな古い傷跡、その上にさらに今日ついたであろう傷跡があった
それをなぞるように触った
「うんっ・・・」
ロゼッタが声をもらす
「何をしているんだお前は・・・」
起こさないように小さい声で言った
自分だけ知らないことが起こっている、そして王の言葉が思い出された
『ロゼッタ!大丈夫だ、団長が皆を守ってくれるルードヴッヒのことも守ってくれる、だから休め』
「まるで私の為にこの傷を負ったみたいな言い方じゃないか・・・」

湯船から上がり、タオルに包んで寝室のベットに寝かして全身を拭く
メイドが用意しておいたネグりジェと下着を着せると
まじまじとロゼッタを見た
ピンクの大きなリボンのついた可愛いネグリジェ
「そういえば、可愛いものが好きだったな・・・」
額に軽くキスをして

部屋を出て、後はメイドに任せて王の元に行くルードヴッヒ

王の執務室、コンコン
「ルードヴッヒです、父上」
「入れ」

王の執務室の机の上には被害の状況の報告書がもう何通か届いているようだった

「被害はロゼッタのおかげで、最小限で済みそうだ、死者の報告もまだ無い」
「説明していただいてよろしいでしょうか?ロゼッタにある古い傷は、何ですか」
「そうか消えてないのか本当は、私達に負い目を負わせないために、見えないようにしていたんだな」

「覚えているか?初めてお前がスタンピートの遠征に参加した時のことを」
「9歳でした、小規模とはいえかなり苦戦していたと記憶しております」
「その時現れた仮面の精霊使いを覚えているか?」
「はい、幼い少女でしたでもすごく強かった」
「あれがロゼッタだ」
「なっ!」

「お前が9歳ということはロゼッタも9歳だった、私達もスタンピートの度に現れる、少女の正体を探っていたのだが、なかなか見つからなかった、教会にも報告無かったしな」
「精霊使いはかなり前から現れていたと聞いてますが」
「3歳から加勢してくれていたと本人は言ってたな、最初はこっそり加勢していたらしいが、連携が必要と気づき、5歳のころから仮面を被って現れるようになった、危険な討伐に参加するようになった理由はお前だ」

「どういうことですか?」
「3歳の時にお前に一目ぼれをして、将来の王としてのお前の国民とおまえ自身を守るため、精霊魔法は使えないと隠蔽して、お前を守るため全身全霊で戦って来たんだ、彼女は、」
「そんな・・・なぜ止めなかったんですか?」
「ははっ、脅されたよ、認めてくれなければ、お前をさらって別のところに行き、新たな国を作るってな、お前を洗脳しなくてはいけないのは辛いが、自分の夢はお前と結婚して、子供を産み、お前の国民を守って皆で幸せになることだ、自分がお前に愛されなくても、お前とお前の国民がが幸せなら死んでも良いと・・・その為に、国民の命を揺るがす魔物を狩ると、お前には内緒で・・・負い目なく幸せになって欲しいからと・・・」

「・・・・重いですね・・・」
「あぁ・・重い、でもそれでここ数年被害が激減している、畑が村が町が荒らされないというのはどんなに幸せなことか、この国は豊かになったろう?誰のおかげか、わかるか?・・・」
「私は彼女に酷いことを言いました」
「そうだな、ああ見えてかなり傷ついたらしい、ルードヴッヒ恐怖症だとメイドの間で言われているぞ」

「・・・・震えてました、私の隣で・・・嫌われたかと」

「いや、相変わらずお前のためと精力的に公務に勤しんでるぞ、愛しているが、これ以上傷つきたくないから避けてる感じだな」
「詳しいんですね」
「彼女のメイドに差し支えない範囲で報告をとお願いしてある、メイドは私の命令より彼女優先と宣言されてるからな・・・」
軽く笑う王

「彼女の傷は10歳の頃のものだろう、あれ以来大怪我は無いはずだから」
「10歳?・・・最近で唯一酷い被害が出たスタンピードですね」
「精霊使いも酷い怪我だった、その頃、酷い病気で寝込んでいると言われたので、お前の婚約者だ、ロゼッタの見舞いに宰相の補佐を行かせたら、部屋にあったんだ、あの仮面が・・・」

「・・・あの頃から、ロゼッタは私を避ける様になった」
「傷跡が酷かったんだ、1年程で消えた、・・・実際は消えたように見せていたようだが」
「父上、私はどうしたら・・・」
「変わる必要は無いよ、お前は自分の気持ちに正直に、それがロゼッタの望みだ、賢君を彼女は望んでいるが、お前は賢君に近くなっていると思うぞ、自分の意思で」
そう言って、子供をなだめる様に頭を撫でた




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スタンピード
<魔物の集団暴走>
魔物の上位種が下級魔物を集めて人を襲う災害
年に1~2回あり、多くの国、人が被害にあっている
ロゼッタ10歳の時、多くの死者が出た災害がありそれ以降、
大元(おおもと)の上位種を探すべく、精霊ネットワークを構築したロゼッタだった

上位種を見つけると直ぐに討伐され未然にスタンピートを回避したり、最小限で済むようになった(ただし国内のみ)

上位種は、AかBランクが多かったが
今回はさらに上位種のSランクだった

ランク
SS←S←A←B←C←D←E←F←G←H
SS(超級)←1体だけで災害
S←A←B(上位)←スタンピートを起こす
C←D←E(中位)
F←G←H(下位)








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