e-Sportsと女の子はセットですか?そうですか。

むじく。

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1章

朝の過ごし方

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今まで一年間の経験から予測するに、
朝の連絡事項はそこまで重要ではない気がする。

「朝礼誰だー?」

教室に入ってくるや否や、時計を見るなり挨拶を急かす女担任の言葉を聞いてクラス委員が号令をかけた。

それを聞いて明人を含めた各々がだらだらっと立ち上がり、まったりと頭を下げる。

「ふわぁ...」

何処からともなく聞こえる春の風物詩。実際つい昨日まで長期休みだったわけで、休み気分が抜けない生徒が多い。そのおかげで全体的にゆっくりとした時間が流れていた。

担任もこの事実に気付いているだろうが、そのことをいちいち口を挟むことはない。
教師だって一人間である。昔々の記憶、春休み明けのぽわっとした気分を味わったことがあるからこそ、暗黙の了解というもの。
ここからゆっくりと各自がモチベーションを上げていけばいいのだ。

最もこれが毎日続くとなれば話は別なのだが。

「君たちはもう2年だ。新入生の模範となるよう...」

教室に入る前から話す内容を決めていたのか、決まりきったフレーズがあるのか、言葉に詰まることもなく担任は口を動かす。

その担任、山城楓は去年からこの学園に講師として在籍している。去年は非常勤だったのが今年から立場を変えて明人が所属するクラス2-Aの担任になったとか。

確か20半ばぐらいで生徒と一回り程度の違いしかないので、良くあるジェネレーションギャップに悩まされることはない。適当そうな感じに見えて意外と相談に乗ってくれるギャップのせいなのか生徒からの人気も上場、今年の担任ガチャは成功しそのことにホッと胸をなで下ろした明人だった。

担任がクラスの色を作るようなもの、まだ15,16の若者にとって毎日触れ合う大人から感受するものは多いからこそ、その存在は重要なのである。

「確かに春だよなぁ...」

新年早々勝手に決められたであろう席は窓際、ぽかぽか陽気の朝に学生服を通して伝わる風が心地よい。
これから始まる輝かしい一年間の抱負を立てるでもなく明人はただただ窓越しから広がる景色を眺める。

「─なので、テストも近づいて...」

口を動かしつつ、担任は度々手元に視線を落とす。今日の連絡事項は多い気がする、メモなり取っていたのだろう。

近頃SNSの影響で学生だけでなく、所属する学園側にも影響が及ぶケースが多々報告されており、その辺りの注意喚起も含まれている。春休みが始まる前に配布された「学生らしい休みを送るためには」と銘打たれたしおりにも同じことが書いてあった気がするが、明人の頭に残っているのはそれぐらい。

帰ってじっくり読む人はきっと真面目か暇か、既に手遅れな可能性が高い気がする。

こんな調子で進むため、外を見ながら終了の鐘を待つ明人と同じく真面目に聞いていない生徒が目立つ。気持ちが乗らないのは言わずもがな、である。自堕落な生活から僅か半日で規律を守ることは難しいのだ。

現に首を回して見れば担任の目の前の席だというのに深々と頭を下げたまま動かない生徒だってい...

「あのな本山。先生のこと舐めてるのか?」

うん、露骨なのはまずい。
さすがに学生生活早々担任から笑顔で舐めてるとか言われたくない。

当人はと言うと蛇に睨まれたカエルの如く背筋を伸ばし優等生に様変わりしていた。

再び窓の外へ視線を向けると校門前の脇には桜並木。学園の正門から両手を広げるようにして敷地囲うように立っている。
毎年見るたびに思うのだが、満開の日になったらお花見ぐらい企画してくれたっていいんじゃないか?と明人は思う。

その時にはもちろん学園は休みで自由参加にするべきだろう。
寝る時間はいくらあっても足りないのだから。

「...いしま...ね、成瀬くん。」

「っはい。」

急に名前を呼ばれたが問題ない。担任の声に耳を傾けるのは出欠確認のときだけで十分である。

「─?」

なんだかクラスが騒がしいのは...気のせいだろうか。全校集会の有難い校長の話は既に終了し、目の前で行われている担任の話さえ終われば今日は解散となる。皆が浮足立つ気持ちも分からないでもないが、外の桜でも見て時を待つというのも乙だと思う。窓際だけが許される特権は使わないと損だ。

...そういえばお花見って昔は桜じゃなくて梅でやってたらしい。

そうこう考えているうちにチャイムが鳴る。
号令から挨拶を済ませると一層教室が慌ただしくなった。

「飯だー!!」
「今日はカラオケ行きたいんだよね~」

部活組は食堂に駆け込むため勢い良く教室を飛び出し、帰宅組は本日の自由を謳歌するべくの予定を立て始める。

このまま教室に用事があるわけでもない明人は、帰る準備を速やかに済ませ足早に席を立つ。今日は予約していたゲームが家に届くとあってさすがに表情には出さないものの、その足取りは自然と軽くなる。

ふと窓から見上げた雲一つない空は、
これから始まる一日を祝福しているかのように思えた。

「...ん?」

明人の、青空澄み渡る視界の中にひょっこりと入ってきたのは見慣れない女子生徒。

見慣れないとは言っても悲しいかな明人自身これまでほとんどの女子生徒と交流がないので割とほぼ当てはまってしまうのだが。

ただ何故だろうか、その女子生徒の瞳には僅かな緊張が見える。
明人がそう思ったのもつかの間、


「えっと、よろしくお願いします!!」


模範的な元気の良い挨拶と、深いお辞儀。礼儀正しさ、の回答を身体全体で表すそれは見ていて気持ちが良い。
肩まである黒髪が窓から入る風を受けて揺れることで、シャンプーの爽やかな香りが目の前にいた明人の鼻孔をくすぐった。

「...っえ?」

対して状況が呑み込めない明人の気の抜けた返答が見事にミスマッチ。
一瞬にして場は混沌に包まれる。

「あれ?ええっと...」

女子生徒はそのまま困ったようにして周りを見渡す素振りをするが解決手段がないらしく、明人もまた自分に用事があるらしいという状況を整理しつつ、このイベントに繋がる記憶を漁るも見つからず。

何かを忘れている、ことだけは間違いないだろう。明人の頭をフル回転させて今日まで出来事を思い返したが1つも思い当たる節がない。というより見たこともないのだから当然なのだが。長期休み明けの明人には中々に唐突なイベント。

困ったように小さく頭を傾げる女子生徒。明人が傍から見るのであれば、困っている彼女に声の一つでもかけるかもしれないが、原因を作っているのは明人自身で、よろしくお願いしますと言われた手前、何が?というのは若干失礼な気がする。

とはいえ話を聞かないことには先に進まない、と決心を決めた明人が「あの...」と小さく言いかけた先で、呑気が声が二人の間を通った。

「あれ?明人あんたまだ案内してなかったの?」

「...?」

「いや、だから学校を案内するんでしょ?何か用事でもあるの?どうせ暇なんだしちゃっちゃと行けばいいのに」

「...そういうことか」

解決した。少し悪意があるようなニュアンスを感じたがそれは今重要ではない。

呑気な声の主は明人の返答に首を傾げたが、それも特に重要ではない。
次に女子生徒を見た明人の目には、先ほどとは違う確かな意思のようなものが感じられた。

「案内する。とりあえず教室を出るか」

「は、はい!」

危機は脱したことに安堵する明人。もう少しコミュ力付けておくべきだったかと後悔しつつ、二人して教室を出て戸を閉める。
ここからが肝心だと言わんばかりに気を引き締める明人は、期待したような表情を向ける女子生徒を真っすぐ見てから

「で、どこに連れて行ったらいいんだっけ?」
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