ロンクの冒険

shinko

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第一章

1話 一日一回プレゼントがもらえる指輪

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「じいちゃん」

「ロンク、お前にこれをやる。これがあれば何とか生きてはいけるじゃろう……さらばじゃ」

「じいちゃーん!」

 じいちゃんと二人で旅しながら世界を渡り歩いていた生活は突然終了した。

 じいちゃんが拾ったドングリを食べたせいだ。

 あれほどやめろと言ったのに……。

 いけるいける。と言ったじいちゃんは、その後猛烈な下痢に襲われ、まさかの展開で死んでしまったのだ。

 やめてよ。

 じいちゃんを埋葬した後。

 じいちゃんから貰った指輪を大事にハメると革の大袋、ショートソードと解体用のナイフだけを持って森を後にした。

 ロンク、十三歳の早すぎる一人立ちの瞬間であった。

 世界を回って絵を書く気ままな生活をしていたじいちゃんに拾われた俺は、本当の孫のようにかわいがってもらったのだ。

 物心ついた時から一人だった俺を不憫に思ったじいちゃんが、身の回りの世話係りとして育ててくれたのだ。

 じいちゃんも貧乏だったのだが、唯一、お偉い大魔導士様から絵の褒美に貰ったこの指輪のおかげで何とか生活してこれたのだ。

 この指輪はすごいのだ。

 じいちゃんは毎日これを使っていた。

 ついに俺が使う時が来たのだ。

 いくぞ。

「お願いします。指輪様」

 指輪に祈る。

 すると。

 指輪が優しい光を放ち。


――ボワンッ。


 と目の前に宝箱が現れた。

 やった。

 喜んで宝箱を開ける。
 
 パカッ。

 中には獣肉 200g 鶏肉 200g 牛のミルク 200g 岩塩 20g が入っていた。

「よっしゃ! 今日は肉祭りだ」

 喜んで中身を回収する。丁寧に大袋に詰め込んだ。

 空になった宝箱はスッと指輪に入るように消えたさった。


 そう、この指輪。【ギフトの指輪】は一日一回ささやかなプレゼントを与えてくれるのだ。


 主に食料が多いのだが、服や、武器が出る事もあるすごい物なのだ。

   まさに大魔導士様サマなのだ。

 この指輪のおかげでじいちゃんと何とか暮らしてきたのだ。

 出た物は、そのまま食べてもいいし、売ってもいいのだ。

 今回は売る事にした。

 泊る宿代どころか、1ドロルもないからだ。


 いつものように商業者ギルドに売りに行く。

 キランさんと言うお姉さんがいる受付ブースに並んだ。

 この町スカルタウンに来てはや二週間、慣れたものだ。

「ロンク君、今日も買取ね。助かるわ。獣肉 200g 8ドロル 鶏肉 200g 6ドロル 牛のミルク 200g 4ドロル 岩塩 20g 12ドロル 合計30ドロルよ。いいかしら」

 大体買取額は店売りの半額位だ。まあ、こんな物なのだろう。

「うん、大丈夫」

「そう、はい。じゃあ、またよろしくね」

 キランさんからお金を受け取りギルドを出た。

 大体収入は30ドロル前後だ。


 これで食事をして安い宿に泊まって終わりだ。

 今まではじいちゃんとそんな生活をしていた。

 でもこれからは一人だ。

 何とか冒険者として一人前になりたい。

 俺は自己流で剣を振っていたが、一度も狩りをしたことはない。

 危ないからと、じいちゃんに止められていたからだ。


 だがこれからは頑張って生きていくんだ。

 
 ロンクは冒険者ギルドへと向かった。半開きの扉を開けて中に入った。

 商業者ギルドとは違い、荒々しい男達が多くいるようだった。

 毎日魔物と戦っているのだ。それも当然だろう。

 受付ブースで担当を選ぶ。これは結構重要かもしれない。


 と思ったが一人しかいないのでお姉さんに声をかけた。


「冒険者登録したいんですけど」

「あら、若いのに大丈夫ですか」

 お姉さんに心配された。

「ええ、大丈夫です。商業者カードはあります」

 馬鹿にされると嫌なので商業者カードを見せた。毎日買取してもらっているのでEランク一人前なのだ。

 登録料の10ドロルも払う。

「まあ、Eランク一人前なんですね。わかりました。ではこちらのカードをお持ちください」

 冒険者カードをくれた。


名前 ロンク
年齢 13歳
冒険者ランク G

 誰でも最初はGランク登録者なのだ。

 これは商業者カードでも同じシステムなので問題ない。

「ではこちらの依頼表の物を持って来て頂ければ買取しますので、頑張ってくださいね」

「はい、ありがとうございます」

 ロンクは冒険者への道を歩み出した。 

 
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