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外章
その2 治療
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「そうですね。ぐっすり寝て回復すればBクラスまでいけるかもしれませんが……やっぱり怖いですね」
「十分でしょう! 多分Cクラスでも何とかなるわよ」
「ええ。私もそう思います」
不思議そうな顔をして話を聞いていたサクゾウとミサキがこっちを見た。
「ああ、心配しないでミサキちゃん。今から治療してもらえるわよ。アルフィーさん横になってもらったほうがいいかしら」
「そうですね。出来れば直接この棒で体に触れたいので、そのほうがいいですね」
装備が貧弱な分、魔法を直接当てたほうが効果が大きい。
「わかりました。では私の部屋へお願いします。お父様、行ってきますね」
少し緊張したようにミサキちゃんがそう言うと、サクソウさんが店内を見渡し思い出したように。
「おおっそうだな。そう言えばミキはどうしたんだ?」
「お母様は買い物に出かけております」
「そうか、そうだったな」
弱ったような顔をするサクゾウ。娘が心配なのだろう。
「サクゾウさん、大丈夫よ。服を脱いでちょちょいのちょいで綺麗さっぱりよ、さっミサキちゃん行きましょう」
「はい。お願いします」
不安そうな顔のまま、奥の部屋に案内された。
階段を上がって二階へ行きミサキの部屋に入室する。
扉を閉めた後、ためらうようにモジモジしながらミサキが服を脱ぎだした。
やはり体のほうが跡がひどいのだろう。
するとなぜかアルフィーも上の服を脱いでしまった。
さらに下着も取って上半身すべて裸になる。
補助魔法で背中から翼が出るからだ。
魔法の服じゃないと白い翼が出せないのだ。
「まあ! すごい胸ですね……こんな綺麗な体初めて見ました。美しいですね。でも、なんで脱いじゃうんですか?」
不思議そうな顔をするミサキに答える。
「ああ、いいのよ。本気を出すのに服が邪魔なの。すぐ意味がわかるわ。このお姉さんね……天使様なのよ」
「天使様……ですか。はぁ」
よくわからないようだが、首をかしげながらも服を脱ぐミサキ。
やはり惨い傷跡があり、右半身全体にはかなりひどい火傷の跡があった。
「これは女の子にはかわいそうね。でも運が良かったわね、すぐ綺麗になるわよ」
「本当ですか。今までも何度も治療を受けたんです。その度にガッカリしてきたんですよ」
未だに信じきれない様子だ。まぁ普通はそうなるだろう。
でも大丈夫。
「では、いきます。天使の翼!」
アルフィーが呪文を唱えると、その体が光輝き背中に白い翼が四枚生えた。天使の輪が頭に浮かぶ。
「ああ! まるで天女様、いえ、女神様でしょうか……」
神々しいアルフィーの姿に目を見開いて驚き、思わず手を合わせるミサキ。
「ふふふ。では……特別回復呪文!」
アルフィーの手と杖が薄く光り輝き、杖先がミサキの体に当てられた。
癒しの光が移動してミサキの体が光輝き、ゆっくり火傷の跡が薄くなる。
「ああ、あったかい……あっ!? 綺麗になりました! こんな、すごい!?」
明らかに薄くなった傷跡に嬉しそうに喜ぶミサキ。
でもまだ傷跡が残りとても完治とはいえない状態だった。
少し力が足りなかったか。
アルフィーもがっかりしたような顔だ。
だが、ため息を一つ、つくとすぐに顔が引き締まった。
「もう一発いきますね。特別回復呪文!」
再度アルフィーの手と杖が薄く光り輝き、再びミサキに当てられた。
ミサキの体が光輝き、今度は火傷の跡が綺麗に消えた。
「わっすごい!! 本当に消えた……跡がわからないです! いえ、むしろ綺麗になりました!」
肌の感触を確かめながら、鏡に映った綺麗な自分を見て、泣きながら喜ぶミサキ。
それを見て満足そうににこりと笑うと、ふーっと大きく息をつくアルフィー。
「流石ね、アルフィーさん」
「ええ、良かったです……やっぱりきついですね。ちょっと休みますね」
大分顔色が悪そうだ。翼と輪を消して下着をつけ、服をさっと羽織ると、気分が悪そうに座り込む。
それでも回復せずにたまらず横になるアルフィー。
魔力枯渇で相当きついのだろう。
二回使うつもりはなかったのに、思わず使ってしまったのだ。
気持ちはわかるけど、すぐ無理をするから……いや。
いつもと装備も違うから、限界がわからないのかもしれない。
やっぱりいつも聖魔セットの力に助けてもらっていたのだ。
私も、これでも聖魔の腕輪の力があってこそなんだ。
聖魔の腕輪がなかったら、そもそも空を飛べる魔力があるかどうかも怪しいかもしれない。
「ああ、女神様。大丈夫でしょうか」
辛そうなアルフィーを見て心配するミサキ。
「ミサキさん、少し休ませてあげて。何か回復剤みたいな飲み物はないかしら」
「はい! すぐ持ってきます」
ミサキもさっと着物を羽織るとすぐに下へ降りて行った。
下でサクゾウさんが驚きと喜びの声を上げたがすぐにおとなしくなった。
慌ててミサキが薬のような物を持ってきた。
お酒みたいな飲み物だ。
体力・気力回復薬らしい。
抱き起こしてアルフィーに飲ませると、一瞬苦そうな顔をしたが全部飲みほした。
やはり相当疲れたのだろう。
そもそも狩りをした直後なのだ。
布団をしいて貰って休ませた。
ミサキとサクゾウが心配そうにのぞき込む。
「娘を治して貰ってありがとうございました。狩りの後なのに無理をさせてしまった。申し訳ありません」
サクゾウもミサキも土下座する。
「大丈夫よ、前にもなったことがあるの。少し休めば治るわよ。私も実は今日こうなったの。魔力をちょっと使いすぎただけ。いつもと違う装備だから加減がわからないのね。だからそんなに謝らないで。余計にアルフィーさんも嫌がるわ」
余りに萎縮する二人を慰めた。
「そうですか。高度な術を二回も使ってもらったそうで、本当にありがとうございました。今日はゆっくり泊っていってください。食事も用意しますから」
「女神様のおかげでこんなに綺麗にしてもらって、本当に感謝しています。いまだに信じられません。どうかゆっくりしていってください」
帰ってきた母親からも丁寧にお礼を言われて、その日はミサキの部屋に泊まることにした。
アルフィーも薬が効いたのか、小一時間程で起きて夕食をもりもり食べた。
散々に褒められて何度もお礼を言われていた。
小さいがお風呂もあったのでゆっくり入って疲れを癒し、布団に入るとすぐに意識がなくなった。
「十分でしょう! 多分Cクラスでも何とかなるわよ」
「ええ。私もそう思います」
不思議そうな顔をして話を聞いていたサクゾウとミサキがこっちを見た。
「ああ、心配しないでミサキちゃん。今から治療してもらえるわよ。アルフィーさん横になってもらったほうがいいかしら」
「そうですね。出来れば直接この棒で体に触れたいので、そのほうがいいですね」
装備が貧弱な分、魔法を直接当てたほうが効果が大きい。
「わかりました。では私の部屋へお願いします。お父様、行ってきますね」
少し緊張したようにミサキちゃんがそう言うと、サクソウさんが店内を見渡し思い出したように。
「おおっそうだな。そう言えばミキはどうしたんだ?」
「お母様は買い物に出かけております」
「そうか、そうだったな」
弱ったような顔をするサクゾウ。娘が心配なのだろう。
「サクゾウさん、大丈夫よ。服を脱いでちょちょいのちょいで綺麗さっぱりよ、さっミサキちゃん行きましょう」
「はい。お願いします」
不安そうな顔のまま、奥の部屋に案内された。
階段を上がって二階へ行きミサキの部屋に入室する。
扉を閉めた後、ためらうようにモジモジしながらミサキが服を脱ぎだした。
やはり体のほうが跡がひどいのだろう。
するとなぜかアルフィーも上の服を脱いでしまった。
さらに下着も取って上半身すべて裸になる。
補助魔法で背中から翼が出るからだ。
魔法の服じゃないと白い翼が出せないのだ。
「まあ! すごい胸ですね……こんな綺麗な体初めて見ました。美しいですね。でも、なんで脱いじゃうんですか?」
不思議そうな顔をするミサキに答える。
「ああ、いいのよ。本気を出すのに服が邪魔なの。すぐ意味がわかるわ。このお姉さんね……天使様なのよ」
「天使様……ですか。はぁ」
よくわからないようだが、首をかしげながらも服を脱ぐミサキ。
やはり惨い傷跡があり、右半身全体にはかなりひどい火傷の跡があった。
「これは女の子にはかわいそうね。でも運が良かったわね、すぐ綺麗になるわよ」
「本当ですか。今までも何度も治療を受けたんです。その度にガッカリしてきたんですよ」
未だに信じきれない様子だ。まぁ普通はそうなるだろう。
でも大丈夫。
「では、いきます。天使の翼!」
アルフィーが呪文を唱えると、その体が光輝き背中に白い翼が四枚生えた。天使の輪が頭に浮かぶ。
「ああ! まるで天女様、いえ、女神様でしょうか……」
神々しいアルフィーの姿に目を見開いて驚き、思わず手を合わせるミサキ。
「ふふふ。では……特別回復呪文!」
アルフィーの手と杖が薄く光り輝き、杖先がミサキの体に当てられた。
癒しの光が移動してミサキの体が光輝き、ゆっくり火傷の跡が薄くなる。
「ああ、あったかい……あっ!? 綺麗になりました! こんな、すごい!?」
明らかに薄くなった傷跡に嬉しそうに喜ぶミサキ。
でもまだ傷跡が残りとても完治とはいえない状態だった。
少し力が足りなかったか。
アルフィーもがっかりしたような顔だ。
だが、ため息を一つ、つくとすぐに顔が引き締まった。
「もう一発いきますね。特別回復呪文!」
再度アルフィーの手と杖が薄く光り輝き、再びミサキに当てられた。
ミサキの体が光輝き、今度は火傷の跡が綺麗に消えた。
「わっすごい!! 本当に消えた……跡がわからないです! いえ、むしろ綺麗になりました!」
肌の感触を確かめながら、鏡に映った綺麗な自分を見て、泣きながら喜ぶミサキ。
それを見て満足そうににこりと笑うと、ふーっと大きく息をつくアルフィー。
「流石ね、アルフィーさん」
「ええ、良かったです……やっぱりきついですね。ちょっと休みますね」
大分顔色が悪そうだ。翼と輪を消して下着をつけ、服をさっと羽織ると、気分が悪そうに座り込む。
それでも回復せずにたまらず横になるアルフィー。
魔力枯渇で相当きついのだろう。
二回使うつもりはなかったのに、思わず使ってしまったのだ。
気持ちはわかるけど、すぐ無理をするから……いや。
いつもと装備も違うから、限界がわからないのかもしれない。
やっぱりいつも聖魔セットの力に助けてもらっていたのだ。
私も、これでも聖魔の腕輪の力があってこそなんだ。
聖魔の腕輪がなかったら、そもそも空を飛べる魔力があるかどうかも怪しいかもしれない。
「ああ、女神様。大丈夫でしょうか」
辛そうなアルフィーを見て心配するミサキ。
「ミサキさん、少し休ませてあげて。何か回復剤みたいな飲み物はないかしら」
「はい! すぐ持ってきます」
ミサキもさっと着物を羽織るとすぐに下へ降りて行った。
下でサクゾウさんが驚きと喜びの声を上げたがすぐにおとなしくなった。
慌ててミサキが薬のような物を持ってきた。
お酒みたいな飲み物だ。
体力・気力回復薬らしい。
抱き起こしてアルフィーに飲ませると、一瞬苦そうな顔をしたが全部飲みほした。
やはり相当疲れたのだろう。
そもそも狩りをした直後なのだ。
布団をしいて貰って休ませた。
ミサキとサクゾウが心配そうにのぞき込む。
「娘を治して貰ってありがとうございました。狩りの後なのに無理をさせてしまった。申し訳ありません」
サクゾウもミサキも土下座する。
「大丈夫よ、前にもなったことがあるの。少し休めば治るわよ。私も実は今日こうなったの。魔力をちょっと使いすぎただけ。いつもと違う装備だから加減がわからないのね。だからそんなに謝らないで。余計にアルフィーさんも嫌がるわ」
余りに萎縮する二人を慰めた。
「そうですか。高度な術を二回も使ってもらったそうで、本当にありがとうございました。今日はゆっくり泊っていってください。食事も用意しますから」
「女神様のおかげでこんなに綺麗にしてもらって、本当に感謝しています。いまだに信じられません。どうかゆっくりしていってください」
帰ってきた母親からも丁寧にお礼を言われて、その日はミサキの部屋に泊まることにした。
アルフィーも薬が効いたのか、小一時間程で起きて夕食をもりもり食べた。
散々に褒められて何度もお礼を言われていた。
小さいがお風呂もあったのでゆっくり入って疲れを癒し、布団に入るとすぐに意識がなくなった。
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