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やってやりますとも
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レイモンド賞とは、魔法学会において最も権威のある世界的な賞の1つである。
魔法学の奇才とも言われているレイモンド・ブロンドの遺言に従っておよそ100年前から始まったものらしい。
例えば、人類の生活を豊かにする魔法の開発に成功したとか、魔法学の進歩に貢献したなどといった偉大な功績を残したものに与えられる。
これまで数多くの偉人たちがこの賞を受賞しており、教科書にも載っているくらいなのだ。
この賞を受賞したものは多額の賞金を得るだけではなく、世界中に名を広め、歴史に名を刻むことになる。
だから、彼はレイモンド賞をとることで結果を残し、そして自殺することで爪痕を残そうということを提案してきたのだ。
そして、私はそれに乗っかることにした。
本当にレイモンド賞をとれるかはわからないが、このまま単に死んでしまうくらいなら、やれる事はやってみたかった。
失敗したら、その時にまた色々考えてみればいい。
そして、肝心の彼の研究内容なのだが――
「映像記憶魔法?」
彼の研究室だという紙の資料が散乱している部屋の中で、私たちは対面していた。
「なんですかそれ?」と私が最もな疑問を吐くと、彼は目を輝かせて迫ってくる。
「ふふん。これはね、現実世界の映像を魔力で切り取って、それを記録として残しておくことが出来る魔法なんだ!」
私はその美しい美貌が眼前まで近づいてきたことで、思わず頬が熱くなるのを感じた。
うう……変人だけど本当に顔はいいのよねこの人……。
「それだけじゃないぞ! 僕は映像を記録するだけではない! これを記録した映像を皆が見れるように映し出すようにしたいんだ!」
そういって熱く語る彼はどこか騎士に憧れる少年のようで、少し可愛いと感じるくらいまっすぐだった。
「な、なるほど。つまり記録した過去の映像を魔法で再現することが出来るようにしたいってことですね」
「その通り! 理解が早くてよろしい」
「でも、この魔法がどんな生活の役に立つんでしょうか? 私にはいまいちピンとこないのですが……」
「ふふん。そんなの色々なことに使えるさ。例えば、大切な人との思い出を記録したいとか、会議の様子を記録するとか、伝言をより正確に伝えられるとか……」
「ああ、そういう使い方が出来るんですね。確かに使えそう……」
私は素直に感心する。
天才とは知識だけではなく、発想力も段違いなんだなと実感した。
確かに過去の記録を保存できて、いつでも誰にでも共有できるとしたら、これほど便利なことはないのかもしれない。
レイモンド賞をとろうとする気概は、ただの蛮勇ではなさそうだ。
「大体研究内容はわかりました。ちなみにその研究はどこまで進んでいるんですか?」
「あー、まあ映像を記録するところまでは進んでいるんだが……、それを如何に出力するかまでは進んでいないんだよ」
彼はたはは……と気まずそうに鼻の頭をかく。
なるほど……おおよそ半分くらいまでは進んでいるってことね。
全くの手付かずということじゃなくて安心したわ。
流石に一からとなると、いつまで手伝えばいいか見当もつきませんもの。
「わかりました。ところで私は何を手伝えばいいのですか? 言っておきますけど、私は単なる学生の身分ですから、大したことは出来ませんからね」
私がそう訊くと、彼はあごに手をやってうーんと考える仕草をとる。
「そうだねえ……。まあ、一緒に文献を漁ってもらったり、実験の時魔力を分けてくれたりするだけでも助かるかな」
「……それだけですか?」
「うん。君が何を出来るかわからないし、徐々に仕事は増やしていけばいいかな。ああ、それと何かいいアイデアがあったら、それも共有させてくれ。僕1人だと、考えが凝り固まっちゃうかもしれないからね」
「はい、わかりました」
「じゃあ、これからよろしくね。えーっと……」
「ハンナと申します」
「僕はアレックス。ハンナ、よろしくね」
そこで私たちはがっしりと握手をした。
炎の魔法を使ったあとなのか、それとも彼の情熱のせいかわからないが、アレックスの手は熱を孕んでいた。
その熱さに反応して、私の心にも火がメラメラと燃えたぎってくる。
さあ、どうなるかわかりませんけど、死後の名誉のためにやれることはやるわよ……!
魔法学の奇才とも言われているレイモンド・ブロンドの遺言に従っておよそ100年前から始まったものらしい。
例えば、人類の生活を豊かにする魔法の開発に成功したとか、魔法学の進歩に貢献したなどといった偉大な功績を残したものに与えられる。
これまで数多くの偉人たちがこの賞を受賞しており、教科書にも載っているくらいなのだ。
この賞を受賞したものは多額の賞金を得るだけではなく、世界中に名を広め、歴史に名を刻むことになる。
だから、彼はレイモンド賞をとることで結果を残し、そして自殺することで爪痕を残そうということを提案してきたのだ。
そして、私はそれに乗っかることにした。
本当にレイモンド賞をとれるかはわからないが、このまま単に死んでしまうくらいなら、やれる事はやってみたかった。
失敗したら、その時にまた色々考えてみればいい。
そして、肝心の彼の研究内容なのだが――
「映像記憶魔法?」
彼の研究室だという紙の資料が散乱している部屋の中で、私たちは対面していた。
「なんですかそれ?」と私が最もな疑問を吐くと、彼は目を輝かせて迫ってくる。
「ふふん。これはね、現実世界の映像を魔力で切り取って、それを記録として残しておくことが出来る魔法なんだ!」
私はその美しい美貌が眼前まで近づいてきたことで、思わず頬が熱くなるのを感じた。
うう……変人だけど本当に顔はいいのよねこの人……。
「それだけじゃないぞ! 僕は映像を記録するだけではない! これを記録した映像を皆が見れるように映し出すようにしたいんだ!」
そういって熱く語る彼はどこか騎士に憧れる少年のようで、少し可愛いと感じるくらいまっすぐだった。
「な、なるほど。つまり記録した過去の映像を魔法で再現することが出来るようにしたいってことですね」
「その通り! 理解が早くてよろしい」
「でも、この魔法がどんな生活の役に立つんでしょうか? 私にはいまいちピンとこないのですが……」
「ふふん。そんなの色々なことに使えるさ。例えば、大切な人との思い出を記録したいとか、会議の様子を記録するとか、伝言をより正確に伝えられるとか……」
「ああ、そういう使い方が出来るんですね。確かに使えそう……」
私は素直に感心する。
天才とは知識だけではなく、発想力も段違いなんだなと実感した。
確かに過去の記録を保存できて、いつでも誰にでも共有できるとしたら、これほど便利なことはないのかもしれない。
レイモンド賞をとろうとする気概は、ただの蛮勇ではなさそうだ。
「大体研究内容はわかりました。ちなみにその研究はどこまで進んでいるんですか?」
「あー、まあ映像を記録するところまでは進んでいるんだが……、それを如何に出力するかまでは進んでいないんだよ」
彼はたはは……と気まずそうに鼻の頭をかく。
なるほど……おおよそ半分くらいまでは進んでいるってことね。
全くの手付かずということじゃなくて安心したわ。
流石に一からとなると、いつまで手伝えばいいか見当もつきませんもの。
「わかりました。ところで私は何を手伝えばいいのですか? 言っておきますけど、私は単なる学生の身分ですから、大したことは出来ませんからね」
私がそう訊くと、彼はあごに手をやってうーんと考える仕草をとる。
「そうだねえ……。まあ、一緒に文献を漁ってもらったり、実験の時魔力を分けてくれたりするだけでも助かるかな」
「……それだけですか?」
「うん。君が何を出来るかわからないし、徐々に仕事は増やしていけばいいかな。ああ、それと何かいいアイデアがあったら、それも共有させてくれ。僕1人だと、考えが凝り固まっちゃうかもしれないからね」
「はい、わかりました」
「じゃあ、これからよろしくね。えーっと……」
「ハンナと申します」
「僕はアレックス。ハンナ、よろしくね」
そこで私たちはがっしりと握手をした。
炎の魔法を使ったあとなのか、それとも彼の情熱のせいかわからないが、アレックスの手は熱を孕んでいた。
その熱さに反応して、私の心にも火がメラメラと燃えたぎってくる。
さあ、どうなるかわかりませんけど、死後の名誉のためにやれることはやるわよ……!
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