【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ

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刺激的な日々

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その日から私の奇妙な生活が始まった。
 昼は学園で授業を受けつつ、夜はアレックスの研究を手伝う。そんな日々。

 凄く大変で、目まぐるしい日々だが、これはこれで余計なことを考えなくてすむ。
 周りのどんな優秀な人たちよりも先に本格的な研究に携わっているという優越感から、私の中からネガティブな思考は無くなっていた。
 むしろ、私のこれからの成すべき偉業のことを考えたら、周りの冷ややかな目線を送っている奴らのことなんて気にならない。
 まあ、取らぬ狸の皮算用ではあるが。

 休み時間や授業の中で、ずっと映像記憶魔法のための文献を読んだり、分析したりして、その結果を彼と共有しあった。
 これから死ぬつもりなのに、授業なんて真面目に受けても仕方ないもの。
 周りからはガリ勉悪役令嬢とか言われて、馬鹿にされていたがどうでもよかった。
 
 それにこの研究をしている人が彼1人だけということもあり、人手不足から私も全力で頑張らないと今年の学会に間に合わない可能性がある。
 それだけは避けたかった。

 とはいえ、最初は分からないことばかり。
 文献や彼の言っていることが理解出来ず、あたふたすることもあった。
 しかし、彼の足でまといになりたくなかった私は、図書館などで専門書を読み漁り、勉強することで彼の研究に追いつこうと努力する。
 すると色々調べていくにつれ、この研究の面白さや素晴らしさも分かってきて、どんどん研究にのめり込んでいった。

 私はこの期間中、大変ではあったが、苦しいと思うことはなかった。
 おそらくこれまでの私の人生が虚無だったからに違いない。
 これまで何も考えず、ただただ平凡な学生生活を送ってきた地味な子爵令嬢。
 卒業後は婚約者と結婚し、世継ぎを産んで、育てて、そして死んでいく。
 そんな決められたレールの上を歩くだけのつまらない人生。

 それに比べて今の生活はなんて刺激的なんでしょう!
 こんなに楽しいと思ったことはないわ。
 これまでただ何となく生きてきた人生に、1つの大きな目標が出来るってことが、こんなにも人生に彩りを添えてくれるなんて。

 この彩りは死ぬことを決めた故の開き直りからかもしれない。
 でも、今は精一杯この素晴らしい生活を噛み締めておきたかった。

 そして、彼――アレックスのこと。
 彼と一緒にいて色々とわかったことがある。

 本当に優秀で頭がいいということ。
 意外に情熱家で、優しいところもあるということ。
 そして、凄く魔法を愛していること。

 あ、それと頭のネジも外れていることも付け加えておきましょう。ふふふ。

 この前なんて自分で自分のことを人体実験しようとしていて、思わず止めに入ったりしたもの。びっくりしたわ。

 でも、こんな奇天烈で一生懸命な人、これまで見たことがなかった。

 だから私は研究だけではなく、どんどん彼のことに対しても関心を寄せるようになったし、信頼も置くようにもなる。

 そして、月日を重ねるうちに彼の色々な顔を見ることが出来た。

 彼の笑顔。困った顔。思い詰めた顔。喜んだ顔。悲しんだ顔。心配してくれる顔。信頼を置いてくれた顔。

 その全部が私の脳裏に刻み着いて離れない。
 ああ……多分、死ぬ時は彼の顔が走馬灯で思い出されるんだろうな……。
 そう思うと死ぬのもなんだか悪い気がしなくなってくるから不思議である。

私はその後も彼のサポートに入りながら、月日を過ごしていった。最高の自殺をするために。
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