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史上最高の自殺
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その後も私はローレアから様々な嫌がらせを受けたが、その度にアレックスが現れて私を助けてくれた。
まるで救世主のように。
白馬に乗った王子様のように。
颯爽と私を助けてくれるその姿に、私は自然と彼に惹かれてしまっているのを自覚してしまった。
まあ、彼の突拍子もない行動にだけは、流石に惹かれないけど……。(この前なんて、いきなり「月で映像を撮るぞ!」とか言い出して、ワープ魔法の研究も並行してやり始めたから、慌てて止めたりした)
しかし、そんな思いは一瞬だけ。
私たちは研究に追われて、とてもじゃないけど余計なことを考えている暇はなくなる。
もう研究は佳境に入っていて、既に魔法自体は完成していた。
そして、彼と出会い10ヶ月が経ち、ついに学会に私たちが作り上げた魔法を発表した。
結論から言おう。
私たちの研究は……なんと本当にレイモンド賞を受賞してしまった。
次の日には私たちは一躍学園――いや、世界中の時の人に。
学園では盛大にセレモニーが開かれ、全校生徒の前で私たちは祝福された。
ああ……、私を馬鹿にしてた人たちのあの人たちの顔といったら傑作ね。
ぽかんと口を開けて呆然としていたわ。
あんな間抜けな顔、今後の人生で見ることはないでしょう。
研究者志望だったローレアなんて、とてつもなく悔しがってたわね。ふふふ。
そして、いつものように私とアレックスは、夜の誰もいない学園に集まっていた。
別に祝杯をあげる訳でもない。
これから2人だけの人生の送別会を行うのだ。
「さて……ハンナ。あれはちゃんと持ってきたかい?」
「はい。勿論です」
そういっては私は手に持っている紙をアレックスに渡す。
彼はそれを読みながら、ふむふむと頷いた。
「……うん。わかりやすい。これなら誰がみても、君が何をされたのかわかるね。それに君にはレイモンド賞という爪痕を残したこともある。最高の遺書になってると思うよ」
その言葉に私はほっと胸を撫で下ろす。
安心した。彼が言うならきっと史上最高の遺書に出来上がっているに違いない。
「それじゃ……早速、自殺に取り掛かろうか」
「はい」
そうして私は学園の大広場の真ん中に用意した椅子に座る。
これから行う自殺の方法は、アレックスに安楽死の魔法を掛けてもらうことだ。
流石に苦しみに苛まれながら死ぬのは嫌だった私は、彼の提案でそうすることにしたのである。
ここで楽に死んで、そして次の朝に私は大広場で見つかって、大騒ぎになるって算段だ。
アレックスは椅子に座った私をみて、少し寂しそうな顔をする。
「それじゃ魔法をかけるけど……、最後に言い残したいことはあるかい?」
「……特にないですわ。別に後悔なんてありませんもの」
これは本音だ。
別に私はこの彼の研究を手伝って爪痕さえ残せればいいと思っていた。
それも達成し、最後にこれまでの平凡な人生において最後の輝きを世界に残せたことになんの後悔があるだろうか。
私はやりきった。
だからもう楽になりたい。
楽しいと思った時はあった。
正直、死ななくてもいいんじゃないかと思う時もあった。
でも、実際研究が終わってしまうと、私は燃え尽きたようにぽっかりと心に穴が空いてしまったのである。
だったらここで死んでしまうことで歴史に名を刻めるなら。
私をいじめたヤツらに後悔をさせることが出来るなら。
ここで人生に幕を下ろしてもいいんじゃないかって、素直にそう思ってしまったのだ。
これは普通の人には理解されない感情だっていうのは、十分理解している。
でも、私はもう燃え尽きて灰になったの。
灰は片付けられて、土に埋められて処分されるべきなのよ。
もう後悔はない。
私の強い覚悟を感じとれたのか、アレックスはこくりと頷いて手を私の頭に置く。
「わかった。それじゃ、今から安楽死の魔法をかけるよ」
「はい。いつでもどうぞ」
「……うん。じゃあ、いくよ」
そういってアレックスは深く深く深呼吸した。
そして、頭に襲いかかってくる衝撃。
それと同時に急に強烈な睡魔が私に襲いかかってきた。
薄れゆく意識の中で、私はぼんやりと考える。
ああ……、そういえば一つだけ嘘をついていたわ。
私……後悔がないって言ってたけど、そんなことはないの。
私の唯一の心残りはアレックス……あなたのことよ。
もう誤魔化しようがないくらいに、私はあなたに惹かれてしまっていた。
あなたの愚直なまでの真っ直ぐさ。
あなたの他に類を見ない一生懸命さ。
あなたの太陽のような暖かい笑顔。
そのどれもが私を強く惹きつけてやまなかった。
この気持ちを押し殺して死んでいくことだけが心残りかもしれない。
でも、私はこの気持ちを伝える勇気は出なかった。
なぜなら彼は研究馬鹿だから。
彼と過ごしたこの10ヶ月間、彼は他の人間に本当に興味がないようだった。
そんな彼に対して私が愛を叫んだとしても。
それは彼を困惑させてしまうだけだろう。
でも、そうね……どうせなら最後にちょっとだけ意地悪してやろうかしら。
いつもネジが外れた言動に振り回されてきたお返しね。
――愛しています。
私はそう口を動かした。
ちゃんと言葉になっていたかわからない。
もしかしたらキチンと伝わってないかもしれない。
しかし、それでも……私は最期に言って……やったんだ……。
ああ……これで……、ようやく……休める……。
そうして私の意識はプツンと糸が途切れるように切れたのだった。
まるで救世主のように。
白馬に乗った王子様のように。
颯爽と私を助けてくれるその姿に、私は自然と彼に惹かれてしまっているのを自覚してしまった。
まあ、彼の突拍子もない行動にだけは、流石に惹かれないけど……。(この前なんて、いきなり「月で映像を撮るぞ!」とか言い出して、ワープ魔法の研究も並行してやり始めたから、慌てて止めたりした)
しかし、そんな思いは一瞬だけ。
私たちは研究に追われて、とてもじゃないけど余計なことを考えている暇はなくなる。
もう研究は佳境に入っていて、既に魔法自体は完成していた。
そして、彼と出会い10ヶ月が経ち、ついに学会に私たちが作り上げた魔法を発表した。
結論から言おう。
私たちの研究は……なんと本当にレイモンド賞を受賞してしまった。
次の日には私たちは一躍学園――いや、世界中の時の人に。
学園では盛大にセレモニーが開かれ、全校生徒の前で私たちは祝福された。
ああ……、私を馬鹿にしてた人たちのあの人たちの顔といったら傑作ね。
ぽかんと口を開けて呆然としていたわ。
あんな間抜けな顔、今後の人生で見ることはないでしょう。
研究者志望だったローレアなんて、とてつもなく悔しがってたわね。ふふふ。
そして、いつものように私とアレックスは、夜の誰もいない学園に集まっていた。
別に祝杯をあげる訳でもない。
これから2人だけの人生の送別会を行うのだ。
「さて……ハンナ。あれはちゃんと持ってきたかい?」
「はい。勿論です」
そういっては私は手に持っている紙をアレックスに渡す。
彼はそれを読みながら、ふむふむと頷いた。
「……うん。わかりやすい。これなら誰がみても、君が何をされたのかわかるね。それに君にはレイモンド賞という爪痕を残したこともある。最高の遺書になってると思うよ」
その言葉に私はほっと胸を撫で下ろす。
安心した。彼が言うならきっと史上最高の遺書に出来上がっているに違いない。
「それじゃ……早速、自殺に取り掛かろうか」
「はい」
そうして私は学園の大広場の真ん中に用意した椅子に座る。
これから行う自殺の方法は、アレックスに安楽死の魔法を掛けてもらうことだ。
流石に苦しみに苛まれながら死ぬのは嫌だった私は、彼の提案でそうすることにしたのである。
ここで楽に死んで、そして次の朝に私は大広場で見つかって、大騒ぎになるって算段だ。
アレックスは椅子に座った私をみて、少し寂しそうな顔をする。
「それじゃ魔法をかけるけど……、最後に言い残したいことはあるかい?」
「……特にないですわ。別に後悔なんてありませんもの」
これは本音だ。
別に私はこの彼の研究を手伝って爪痕さえ残せればいいと思っていた。
それも達成し、最後にこれまでの平凡な人生において最後の輝きを世界に残せたことになんの後悔があるだろうか。
私はやりきった。
だからもう楽になりたい。
楽しいと思った時はあった。
正直、死ななくてもいいんじゃないかと思う時もあった。
でも、実際研究が終わってしまうと、私は燃え尽きたようにぽっかりと心に穴が空いてしまったのである。
だったらここで死んでしまうことで歴史に名を刻めるなら。
私をいじめたヤツらに後悔をさせることが出来るなら。
ここで人生に幕を下ろしてもいいんじゃないかって、素直にそう思ってしまったのだ。
これは普通の人には理解されない感情だっていうのは、十分理解している。
でも、私はもう燃え尽きて灰になったの。
灰は片付けられて、土に埋められて処分されるべきなのよ。
もう後悔はない。
私の強い覚悟を感じとれたのか、アレックスはこくりと頷いて手を私の頭に置く。
「わかった。それじゃ、今から安楽死の魔法をかけるよ」
「はい。いつでもどうぞ」
「……うん。じゃあ、いくよ」
そういってアレックスは深く深く深呼吸した。
そして、頭に襲いかかってくる衝撃。
それと同時に急に強烈な睡魔が私に襲いかかってきた。
薄れゆく意識の中で、私はぼんやりと考える。
ああ……、そういえば一つだけ嘘をついていたわ。
私……後悔がないって言ってたけど、そんなことはないの。
私の唯一の心残りはアレックス……あなたのことよ。
もう誤魔化しようがないくらいに、私はあなたに惹かれてしまっていた。
あなたの愚直なまでの真っ直ぐさ。
あなたの他に類を見ない一生懸命さ。
あなたの太陽のような暖かい笑顔。
そのどれもが私を強く惹きつけてやまなかった。
この気持ちを押し殺して死んでいくことだけが心残りかもしれない。
でも、私はこの気持ちを伝える勇気は出なかった。
なぜなら彼は研究馬鹿だから。
彼と過ごしたこの10ヶ月間、彼は他の人間に本当に興味がないようだった。
そんな彼に対して私が愛を叫んだとしても。
それは彼を困惑させてしまうだけだろう。
でも、そうね……どうせなら最後にちょっとだけ意地悪してやろうかしら。
いつもネジが外れた言動に振り回されてきたお返しね。
――愛しています。
私はそう口を動かした。
ちゃんと言葉になっていたかわからない。
もしかしたらキチンと伝わってないかもしれない。
しかし、それでも……私は最期に言って……やったんだ……。
ああ……これで……、ようやく……休める……。
そうして私の意識はプツンと糸が途切れるように切れたのだった。
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