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第四話 都市伝説の兄妹は、筆記試験を受験する
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「――始めッ!」
監督官の凜とした声を聞いて、重護は――教室内にいる誰もが――手元の問題冊子を開いた。シャーペンを手に取り、頭をノックし、慣れた長さまで芯を出す。
『問一。次の魔物、A~Cの特徴を、語群の中から当てはまるものをすべて選んで答えなさい』
『A ハガネカマキリ』
『B ホワイトローズ』
『C ゲンコツガニ』
『語群 ア・魔草 イ・魔蟲 ウ・魔花 エ・魔魚 オ・魔甲 カ・水属性 キ・光属性 ク・蟲属性 ケ・草属性 コ・鉄属性 サ・主な獲物は大型の肉食動物 シ・魚類を食べる ス・小型の鳥類を食べる セ・昆虫類を好む ソ・草食』
〈わ、これ真剣ゼミでやったやつだ!〉
お手本のような通信塾生のリアクションはしかし、重護の脳内でしか響かない。
『A ハガネカマキリ/イ、ク、コ、シ、ス』
『B ホワイトローズ/ウ、キ、ケ、サ』
『C ゲンコツガニ/オ、カ、シ』
〈お兄ちゃん、シが被ってるけど〉
シャーペンが紙を走る音だけが無数に響く教室の中、たとえ小声でも朔夜にしゃべるなと注意すれば試験官まで届いてカンニング扱いされてしまう。重護は仕方なく、問題冊子で筆談した。
『記号は一度きりとは書かれてない』
ハガネカマキリは、全身が鋼鉄の皮膚に覆われたカマキリの魔蟲だ。成虫になると大人の人間サイズまで大きくなり、鳥の骨すらも肉ごと両断できる斬れ味の鎌を持つ。魚は魚でも、川魚を好む。また、小型の鳥類も狩る。
ゲンコツガニは、赤く分厚い甲殻を持つ水属性のカニの魔物だ。両腕の巨大なハサミは、斬るのではなく叩くためにある。その一撃は、貝の殻も亀の甲羅もサメの頭蓋骨も粉砕できるほどだ。
ホワイトローズは、バラ科の白い魔花である。食獣植物であり、主な栄養源は大型の肉食動物。毒や眠気、痺れを伴う花粉と刺々しいツタを巧みに操り狩ってしまう。また、強力な個体は太陽光を吸収し、光魔法に転用することも可能だ。
〈そういえば、京魔高専のテストはタチが悪いってネットに書いてあったね……〉
『問二。次のア~オの選択肢のうち、正しいものにはマルを、間違っているものにはバツをつけなさい』
『ア・人間が魔人になる条件は、体内の魔力濃度が五〇%以上になることである』
〈これはマルだね〉
重護は無言で小さく頷き、回答欄にマルを書いた。
『イ・すべての魔人に共通する特徴として当て嵌まるのは、魔法の使用、理性の喪失、治療不可能の三つだけである』
〈あれ、外見の変貌もそうだよね? となるとバツ?〉
回答欄に重護がバツをつけると、脳内で朔夜が〈あってた〉とホッとする。
『ウ・性別のある魔物の場合、子供は同性の親の特徴を遺伝する』
〈これもマル〉
『エ・魔物が扱う魔法は、その魔物の系統に適したものだけである』
〈バツ! だってわたしがそうだから!〉
朔夜の系統は霊魔だ。霊魔はポルターガイスト――物体を念動魔法で遠隔操作したり、他の生き物に憑依したり……そういった心霊現象を起こす魔法の総称だ――を得意とする。
しかし、朔夜に限ってはそれだけではない。
〈わたしは普通の霊魔と違って、炎・氷・雷属性の魔法も出せるんだよね~〉
得意げに語る朔夜の声を無視して、重護は回答欄にマルをつけた。
〈お兄ちゃん⁉ わたしを見て! わたしがいるよ⁉〉
これはあくまでも試験問題である。教科書的にいえば、朔夜は霊魔なのだから、本来ポルターガイスト魔法に該当する魔法しか使えないはずなのだ。
人間の霊魔は朔夜以外に存在しない上に、朔夜の存在は社会的に秘匿しているので、ここでバツを書いたら本当にバツになってしまう。
『オ・家族や友人が魔人になってしまったら、即座に避難し抗魔局へ通報する義務がある』
重護は躊躇いなく、回答欄にマルを書いた。
〈悲しいことだけど、大切なことだからね……〉
魔人は理性を失っており、ただひたすらに周囲を破壊する生き物だ。そして、人間に戻す手段はない。せめて他の誰かを巻き込む前に葬るしかないのである――。
監督官の凜とした声を聞いて、重護は――教室内にいる誰もが――手元の問題冊子を開いた。シャーペンを手に取り、頭をノックし、慣れた長さまで芯を出す。
『問一。次の魔物、A~Cの特徴を、語群の中から当てはまるものをすべて選んで答えなさい』
『A ハガネカマキリ』
『B ホワイトローズ』
『C ゲンコツガニ』
『語群 ア・魔草 イ・魔蟲 ウ・魔花 エ・魔魚 オ・魔甲 カ・水属性 キ・光属性 ク・蟲属性 ケ・草属性 コ・鉄属性 サ・主な獲物は大型の肉食動物 シ・魚類を食べる ス・小型の鳥類を食べる セ・昆虫類を好む ソ・草食』
〈わ、これ真剣ゼミでやったやつだ!〉
お手本のような通信塾生のリアクションはしかし、重護の脳内でしか響かない。
『A ハガネカマキリ/イ、ク、コ、シ、ス』
『B ホワイトローズ/ウ、キ、ケ、サ』
『C ゲンコツガニ/オ、カ、シ』
〈お兄ちゃん、シが被ってるけど〉
シャーペンが紙を走る音だけが無数に響く教室の中、たとえ小声でも朔夜にしゃべるなと注意すれば試験官まで届いてカンニング扱いされてしまう。重護は仕方なく、問題冊子で筆談した。
『記号は一度きりとは書かれてない』
ハガネカマキリは、全身が鋼鉄の皮膚に覆われたカマキリの魔蟲だ。成虫になると大人の人間サイズまで大きくなり、鳥の骨すらも肉ごと両断できる斬れ味の鎌を持つ。魚は魚でも、川魚を好む。また、小型の鳥類も狩る。
ゲンコツガニは、赤く分厚い甲殻を持つ水属性のカニの魔物だ。両腕の巨大なハサミは、斬るのではなく叩くためにある。その一撃は、貝の殻も亀の甲羅もサメの頭蓋骨も粉砕できるほどだ。
ホワイトローズは、バラ科の白い魔花である。食獣植物であり、主な栄養源は大型の肉食動物。毒や眠気、痺れを伴う花粉と刺々しいツタを巧みに操り狩ってしまう。また、強力な個体は太陽光を吸収し、光魔法に転用することも可能だ。
〈そういえば、京魔高専のテストはタチが悪いってネットに書いてあったね……〉
『問二。次のア~オの選択肢のうち、正しいものにはマルを、間違っているものにはバツをつけなさい』
『ア・人間が魔人になる条件は、体内の魔力濃度が五〇%以上になることである』
〈これはマルだね〉
重護は無言で小さく頷き、回答欄にマルを書いた。
『イ・すべての魔人に共通する特徴として当て嵌まるのは、魔法の使用、理性の喪失、治療不可能の三つだけである』
〈あれ、外見の変貌もそうだよね? となるとバツ?〉
回答欄に重護がバツをつけると、脳内で朔夜が〈あってた〉とホッとする。
『ウ・性別のある魔物の場合、子供は同性の親の特徴を遺伝する』
〈これもマル〉
『エ・魔物が扱う魔法は、その魔物の系統に適したものだけである』
〈バツ! だってわたしがそうだから!〉
朔夜の系統は霊魔だ。霊魔はポルターガイスト――物体を念動魔法で遠隔操作したり、他の生き物に憑依したり……そういった心霊現象を起こす魔法の総称だ――を得意とする。
しかし、朔夜に限ってはそれだけではない。
〈わたしは普通の霊魔と違って、炎・氷・雷属性の魔法も出せるんだよね~〉
得意げに語る朔夜の声を無視して、重護は回答欄にマルをつけた。
〈お兄ちゃん⁉ わたしを見て! わたしがいるよ⁉〉
これはあくまでも試験問題である。教科書的にいえば、朔夜は霊魔なのだから、本来ポルターガイスト魔法に該当する魔法しか使えないはずなのだ。
人間の霊魔は朔夜以外に存在しない上に、朔夜の存在は社会的に秘匿しているので、ここでバツを書いたら本当にバツになってしまう。
『オ・家族や友人が魔人になってしまったら、即座に避難し抗魔局へ通報する義務がある』
重護は躊躇いなく、回答欄にマルを書いた。
〈悲しいことだけど、大切なことだからね……〉
魔人は理性を失っており、ただひたすらに周囲を破壊する生き物だ。そして、人間に戻す手段はない。せめて他の誰かを巻き込む前に葬るしかないのである――。
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