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8.拭えぬ不安
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「孤児院を出た後はどうするんだ?」
近頃よく聞かれるようになった。
この世界で、この優しい町で、穏やかに長く生きていけたなら。
そんな想いと共に、湧いて来るのは好奇心だ。
可能ならこの町を拠点にして、世界中を旅して回りたい。
少し前までそんな風に夢を描いていた頃もありましたとも。
と言っても、私は誰にも明確な返事はしてこなかった。
常に付き纏う不安が、私から未来への決断を遠ざけていたから。
「リリアは心配症だよなぁ」
けらけら笑うアレクを、やはり恨めしく想った。
神の教えに従う世界で、神さまを前に屁理屈を並べるようにして、町ぐるみで孤児を助ける社会を築いてしまったのだ。
いずれ大問題になるのではないか?
私はそれが怖くて堪らなかった。
そうなったとき、私は責任を取るためにここにいるべきなのか。
それとも責任を私だけに押し付けて貰うため、ここにいないべきか。
誰も彼もが優しい人たちである。
責められることになったとき、すんなりと私だけの責任にしてくれるとは思えない。
知らないところで町の人たちが罰せられていくのは嫌だ。
だけど目のまえで庇われ、守られ、町の人たちの罪が重くなるのはもっと嫌だった。
だからと言って、今さら孤児院と町の人たちの関係を元に戻そうとも思わない。
私がこの町に来る以前は、孤児院で育つ少なくない子どもたちが長く生きられなかったという。
人数分にはとても足りない野菜を煮込んだ薄味のスープしか飲まずに育つのだから、それも当然だろうと私は感じた。
そこに戻れなんて、そんな非情なことは願えない。
早く心から安心したかった私は、神殿について教えて欲しいと大人たちに願った。
神の教えに反した人々を裁くのは神殿の人たちだと聞いたからだ。
ところがどうした。
先生たちも、町の人たちも、神殿について誰も詳しく知らなかったのだ。
そんなことある?
これにも私は大層に驚いた。
あんなに神の教えに固執して、倒れた孤児に触れることさえ躊躇ってきた人たちだよ?
あれもこれも、神さまの罰を恐れて取っていた行動ではなかったということ?
神殿がどんな風に人を裁くのかに興味がないなんてある?
皆の答えに戸惑う私に、町の人たちも戸惑っていた。
皆が皆一様に、リリアは何を驚いているんだ?って顔を見せたのだ。
それは子どもたちも同じだった。
この横にいるアレクも同様で。
「そんなに心配しなくたって。この町に神官が来たのなんて、俺たちが生まれるずっと前のことらしいじゃないか。うちの親父だって顔を知らないって言っているんだからな」
何度も何度も似た言葉で励まされている。
それでも不安はいつも抱えたまま。優しい世界だからこそ、誰とも分かり合えないような気もしている。
私ばかりが汚れているような感覚も常にここにあった。
近頃よく聞かれるようになった。
この世界で、この優しい町で、穏やかに長く生きていけたなら。
そんな想いと共に、湧いて来るのは好奇心だ。
可能ならこの町を拠点にして、世界中を旅して回りたい。
少し前までそんな風に夢を描いていた頃もありましたとも。
と言っても、私は誰にも明確な返事はしてこなかった。
常に付き纏う不安が、私から未来への決断を遠ざけていたから。
「リリアは心配症だよなぁ」
けらけら笑うアレクを、やはり恨めしく想った。
神の教えに従う世界で、神さまを前に屁理屈を並べるようにして、町ぐるみで孤児を助ける社会を築いてしまったのだ。
いずれ大問題になるのではないか?
私はそれが怖くて堪らなかった。
そうなったとき、私は責任を取るためにここにいるべきなのか。
それとも責任を私だけに押し付けて貰うため、ここにいないべきか。
誰も彼もが優しい人たちである。
責められることになったとき、すんなりと私だけの責任にしてくれるとは思えない。
知らないところで町の人たちが罰せられていくのは嫌だ。
だけど目のまえで庇われ、守られ、町の人たちの罪が重くなるのはもっと嫌だった。
だからと言って、今さら孤児院と町の人たちの関係を元に戻そうとも思わない。
私がこの町に来る以前は、孤児院で育つ少なくない子どもたちが長く生きられなかったという。
人数分にはとても足りない野菜を煮込んだ薄味のスープしか飲まずに育つのだから、それも当然だろうと私は感じた。
そこに戻れなんて、そんな非情なことは願えない。
早く心から安心したかった私は、神殿について教えて欲しいと大人たちに願った。
神の教えに反した人々を裁くのは神殿の人たちだと聞いたからだ。
ところがどうした。
先生たちも、町の人たちも、神殿について誰も詳しく知らなかったのだ。
そんなことある?
これにも私は大層に驚いた。
あんなに神の教えに固執して、倒れた孤児に触れることさえ躊躇ってきた人たちだよ?
あれもこれも、神さまの罰を恐れて取っていた行動ではなかったということ?
神殿がどんな風に人を裁くのかに興味がないなんてある?
皆の答えに戸惑う私に、町の人たちも戸惑っていた。
皆が皆一様に、リリアは何を驚いているんだ?って顔を見せたのだ。
それは子どもたちも同じだった。
この横にいるアレクも同様で。
「そんなに心配しなくたって。この町に神官が来たのなんて、俺たちが生まれるずっと前のことらしいじゃないか。うちの親父だって顔を知らないって言っているんだからな」
何度も何度も似た言葉で励まされている。
それでも不安はいつも抱えたまま。優しい世界だからこそ、誰とも分かり合えないような気もしている。
私ばかりが汚れているような感覚も常にここにあった。
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