【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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13.泣いた日

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 割と早い段階で私はこの神官さまをぞんざいに扱うようになっていた。
 それで先生たちをハラハラさせていることは知っていたし、心配は掛けたくはなかったけれど。

 どうしたってこの人が神官さまだとは思えず、それが表情や口調、態度に出てしまう。


 私の空想上の神官さまは、厳粛な為人をしていて、まさに敬うべき御方ですねというお固い人物だった。
 ところがこの神官さま、真逆もいいところの性格で。


 だけど私が神官さまに冷たく当たってしまう理由はこれだけではない。


 私だってこの神官さまが現れてしばらくは、とても恐ろしかった。

 私を罰するために来たのだろう。
 孤児院の子どもたち、先生、町の人たちをどうすれば守れる?

 いっそ前世の記憶があると暴露して、頭がおかしい子どもが一人おかしなことをはじめたけれど、見ていられなかった町の人たちが同情して話を合わせてくれた、という優しい話にしてしまおうか?

 あるいはもう、急いで逃げ出して。
 怪しい女として指名手配されようか?
 一人だけ逃げ出したとすれば、犯人はそいつだ!と思ってくれるよね?
 
 こんな風に、私は町を離れる覚悟までしていたんだ。

 なのにこの神官さまは、私を裁くどころか、むしろ率先して──。


「一段とお腹が空いてきたな。ささ、今日は何を手伝おうか?何でも言ってくれ」


 今日もこの調子である。



 最初は食事のお礼と称し、神官さま自ら孤児院での手伝いを申し出た。

 まぁ、成人した大人だ。
 この神官さまが何かの恩返しとして誰の手伝いをしようとも何の問題もない。

 そこで私は、先生たちの反対を押し切ってこの人を試した。
 どうせ裁かれてしまうなら、せめてこれからの子どもたちがどこかに希望を持てるようにしたかったから。

 私たちがしてきたことを見てきたこの子たちは賢い。
 だからきっと、神官さまの反応を見て、また別の方法を考え出して、皆がお腹いっぱい食べられるようにしていくはず。

 そうして、子どもたちのお世話をお願いしてみたら──。


 驚いたのは私だけではない。
 先生たちも目をまん丸にして、「引き受けた!」と爽やかに笑う神官さまを見ていた。

 それからしばらくの間、子どもより楽しそうな顔をしてはしゃぐ神官さまの姿がよく見られた。
 子どもたちと一緒になって遊び、時には読み書きを教え、時には一緒にお昼寝をして。
 世話をしているのはどちらだ?と疑問を覚えなくはなかったけれど、それは楽しそうにのびのびと、神官さまは子どもたちのお世話をしていたのだ。

 様子を窺いに来た町の人たちも、これには疑問でいっぱいだった。

 成人するまで面倒を見られない子のお世話をしていいのか?って。
 そうして我慢が出来なくなった人がついに直接訪ねた。

「うん?成人まで面倒を見る責任があるのは、子の保護者となる者だけだが?」

 なんですとー!!!

「そうだな。一時保護するような場合も、無責任に途中で放り出すとすれば問題にはなろう。だが次に世話をする者なり、預け先なり見付けてやれば、それで十分に保護した子への責任を果たしてことになるぞ」

「医者か?診察することが彼らの仕事であって、診療は世話をしているわけではないからな。どんな子を治療しようと何も問題はないぞ」


 なんだってーーー!!!

 全町が泣いたよね。

 今まで不安に思っていた時間はなんだったのか。
 神の教えの抜け道を探ろうと一生懸命に考えた幼い私の努力は無駄になってしまったし。

 でもそんなことより。

 今まで飢えてきた子どもたちの苦しさも。
 それでも子どもたちを少しでも食べさせようと頑張って来た先生たちの苦労も。
 本当は助けたいのに、見て見ぬ振りをするしか出来なかった町の大人たちの辛さも。

 何だったのよ──!!!!


 私が神殿を憎んでも、それは当然でしょう?

 あなたたちがちゃんと仕事をしていたら、どれだけの子どもが助かったと思うの!


 という心に燻り続ける怒りを、私は今日もこの神官さまにぶつけてしまうのである。


 
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