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21.逃げたい私
しおりを挟む魔力。
それは前世の世界にはなかったもの。
だから前世とここが完全に違う世界であることを、魔力というものが実感させてくれそうな気はしている。
けれども現状は……。
私には魔力があるという感覚はまったくないし。
この神官さまにだって本当にあるのかどうか、それもよく分からない。
「ふーむ、そうだな。生まれたときから当たり前にあれば、分からないこともあろうか。手っ取り早く、奪われた人間を見せられればいいのだが。これがそう容易くは出て来なくてな。まぁ、世としてはいいことなんだが」
「奪われた人間って?」
「女神さまは与えるだけではなく、時に人から魔力を奪っていく。女神さまから魔力を持つに相応しくない人間として判断されたときだ」
「魔力がなくなることなんてあるのね」
「余程のことをしない限りはないから、リリアが心配することはないぞ」
心配というよりも……。
「リリア、駄目だ。わざと奪われようなどと考えてはいけないよ」
どうして分かっちゃったの?
「リリアは顔に全部出ているからな」
やたらと爽やかに笑われて、今度はむっとしなかった。
そんなに顔に出しているとは思わないんだけどなぁ。
「今は魔力も揺らすから、一段と分かりやすいんだ」
「私の魔力が揺れているの?どこで?どうやって?」
私のどこから魔力が出ているんだろう?
自分の手や足を確認してみたけれど、当たり前だけれどよく見た手足がそこにあるだけだった。
「ふっ。ははっ。リリアは可愛いな」
今度はむかついた。
もう、馬鹿にして!
笑っていないで、早く教えてよ!
「あぁ、そう興奮するな。また倒れても困るだろう?魔力はな、ゆったりとした気分で学ぶに限るんだ」
どうしてそこで頭を撫でるの?
この神官さまは、私のことを物凄く小さな子どもだと思っている節がある。
確かにまだこの世界では私は子どもの年齢にある。
それでも成人後を考えるくらいには、大人に近い年齢になっているんだからね?
先生たちからだって、もう子ども扱いはされていない。
孤児院では自分のことは自分でするように変わっている。
「よしよし、大丈夫だ。これから私がじっくり教えていくからな」
でもこの優しい手の動きには、悔しいけれど心が落ち着いてしまうのだった。
もう何も思い出さなくなってしまったのは残念だけれど、思い出せない記憶と重ねて安心しちゃうのかも?
「それもあって魔力については、諸々終わらせてから訓練に移行したくてな」
「諸々って?」
「実はなぁ、滅多にない機会にリリアは遭遇出来るかもしれないんだ」
「へ?」
「リリアの親と思われる人物に目星がついた。先方には新任として挨拶に行ったんだが、分かりやすく面会を拒否してくれてな?おかげで手続きに時間が掛かっているんだ。あと少し待ってくれると有難い」
「……別にこのままでもいいよ?」
そう言ったのに、神官さまは微笑むだけだった。
あぁ、逃げられない。
私はただそう思った。
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