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51.崩れゆく王子さま
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王子さまにどんな挨拶をしてから帰ればいいんだろう?
軽く頭を下げるだけでは足りないよね?
孤児なら床に座って平伏すべき?
孤児でなくても庶民なら平伏するものかも?
前世でだって、王族へのマナーなんて習ったことがない。
もう諦めて、常識も知らない駄目な子どもとして、何もしなければいいだろうか。
孤児だものね。
そうだよ、私は孤児なんだから。
とりあえず頭を下げて、さよならをしてみようか?
対応に悩んでいたら、先に神官さまが答えてくれた。
「なんだ、まだここにいたのか。急ぎ報告に走らなくていいのか?」
神官さまのあからさまに不機嫌な声に驚かされる。
「報告はするが。それよりその子をどこに連れて行く気だ!これ以上はとても見過ごすことは出来ぬぞ!」
デンカさんの機嫌の悪さにまた驚く。
もしかしてこの二人、元から知り合いで仲が悪かったりするの?
「何を言っているのか分からないな。今のリリアの保護者代理は私だが、赤の他人が何を騒いでいる?」
「なっ。私はこの国の王子だぞ?関係ないことはなかろう!それにその子の名はリリアではない!二重登録は即刻解除させる!さすれば、あなたの方こそ、その子とは他人の関係だ」
ちょっと待って!
何を勝手に!
私はリリアだってば!
と叫びそうになったけれど。
さすがにさっきのように声を大にして口を挟む気にはなれなかった。
孤児院で何も習っていなかったとして、デンカさんにしない方がいいことは分かる。
「ほぅ。この国の王子さまは子どもの意思を確認せず動くというのだな?」
今まで聞いたことのなかった一段と低い声に、私がぶるっと身震いすれば、すーっと目のまえに湯気の立つカップが差し出された。
これは……またミルクティーかな?
さっきとは違う甘い香りがするね。蜂蜜入り?
顔を上げれば、優しく微笑まれ、「大丈夫ですよ。すべてこの方にお任せくださいね」と小声で言われる。
うん、いい人!
あ、お菓子も出てきた。
今度はクッキー。嬉しいなぁ。
これが魔法なら、私はこの人と同じ魔力が欲しかったよ。
だって凄くない?
お茶も飲み放題で、お菓子も食べ放題だなんて。
どれだけ幸せな魔法なんだろう。
私がにっこにこでクッキーを頬張っている間も、綺麗な顔をした人たちは勝手に揉めていた。
もう放っておいていいよね?
私は子どもですから。
難しいお話は、大人たちに丸投げしておやつに集中しまーす。
「話をすり替えるな!我が国の正統なる貴族の娘の処遇について話しているんだ。神殿の者がその子を勝手に連れ歩くことなど認められないぞ」
「確かに生まれたときにはリリアが貴族の娘であったことは事実であろうな。それがどうした?」
「どうしたと聞き返したいのはこちらの方だ。手違いで二重登録となっていたのを、正しく一つに戻すと言っている。それを止めるとはどういうことだ?その子のためでもあろう!」
「そうか。この国の王族には、子の意思を確認する気がないということはよく分かった。ますますリリアを任せるわけにはいかないな」
「だからなんでそうなる!正しい形に戻すだけだと言っているではないか!」
怒ったデンカさんが、睨んだ先は私だった。
えぇ、そんな、理不尽な。
私はただお茶を楽しんでいただけなのに。
「子どもの意思を確認出来ればいいのだな!ならば問おう!君、二重登録は即刻解除するが問題ないね?これからは貴族の子として生きいけるから安心するといい」
「それは困ります」
「なんだと?」
デンカさん、顔も声も怖いんだけど!
少し前までは胡散臭くても優しそうに笑う王子さまじゃなかったっけ?
「リリア、望むままに言っていいぞ」
「いいの?」
「もちろんだ。いくら王子さまでも、まさか子ども相手に文句を言ったりしないだろうよ。なぁ?」
「あ、あぁ。それは当然。子どもの意見はそのままに受け止めるとも」
本当かな?
不敬だってばっさり切り捨てられない?
こんなことで牢獄行きなんて嫌だよ?
「大丈夫だ、リリア。私がついているから、望むことを言ってごらん」
そこまで言うなら、保護者代理さんがちゃんと私を守ってね?
頼みますよ?
「では……二重登録が問題ということでしたら、私は出来れば、貴族の名の方を削除して──」
「どうしてだ!」
最後まで言い終えることが出来なかった。
私の意見をありのまま受け止めてくれるんじゃなかったの?
軽く頭を下げるだけでは足りないよね?
孤児なら床に座って平伏すべき?
孤児でなくても庶民なら平伏するものかも?
前世でだって、王族へのマナーなんて習ったことがない。
もう諦めて、常識も知らない駄目な子どもとして、何もしなければいいだろうか。
孤児だものね。
そうだよ、私は孤児なんだから。
とりあえず頭を下げて、さよならをしてみようか?
対応に悩んでいたら、先に神官さまが答えてくれた。
「なんだ、まだここにいたのか。急ぎ報告に走らなくていいのか?」
神官さまのあからさまに不機嫌な声に驚かされる。
「報告はするが。それよりその子をどこに連れて行く気だ!これ以上はとても見過ごすことは出来ぬぞ!」
デンカさんの機嫌の悪さにまた驚く。
もしかしてこの二人、元から知り合いで仲が悪かったりするの?
「何を言っているのか分からないな。今のリリアの保護者代理は私だが、赤の他人が何を騒いでいる?」
「なっ。私はこの国の王子だぞ?関係ないことはなかろう!それにその子の名はリリアではない!二重登録は即刻解除させる!さすれば、あなたの方こそ、その子とは他人の関係だ」
ちょっと待って!
何を勝手に!
私はリリアだってば!
と叫びそうになったけれど。
さすがにさっきのように声を大にして口を挟む気にはなれなかった。
孤児院で何も習っていなかったとして、デンカさんにしない方がいいことは分かる。
「ほぅ。この国の王子さまは子どもの意思を確認せず動くというのだな?」
今まで聞いたことのなかった一段と低い声に、私がぶるっと身震いすれば、すーっと目のまえに湯気の立つカップが差し出された。
これは……またミルクティーかな?
さっきとは違う甘い香りがするね。蜂蜜入り?
顔を上げれば、優しく微笑まれ、「大丈夫ですよ。すべてこの方にお任せくださいね」と小声で言われる。
うん、いい人!
あ、お菓子も出てきた。
今度はクッキー。嬉しいなぁ。
これが魔法なら、私はこの人と同じ魔力が欲しかったよ。
だって凄くない?
お茶も飲み放題で、お菓子も食べ放題だなんて。
どれだけ幸せな魔法なんだろう。
私がにっこにこでクッキーを頬張っている間も、綺麗な顔をした人たちは勝手に揉めていた。
もう放っておいていいよね?
私は子どもですから。
難しいお話は、大人たちに丸投げしておやつに集中しまーす。
「話をすり替えるな!我が国の正統なる貴族の娘の処遇について話しているんだ。神殿の者がその子を勝手に連れ歩くことなど認められないぞ」
「確かに生まれたときにはリリアが貴族の娘であったことは事実であろうな。それがどうした?」
「どうしたと聞き返したいのはこちらの方だ。手違いで二重登録となっていたのを、正しく一つに戻すと言っている。それを止めるとはどういうことだ?その子のためでもあろう!」
「そうか。この国の王族には、子の意思を確認する気がないということはよく分かった。ますますリリアを任せるわけにはいかないな」
「だからなんでそうなる!正しい形に戻すだけだと言っているではないか!」
怒ったデンカさんが、睨んだ先は私だった。
えぇ、そんな、理不尽な。
私はただお茶を楽しんでいただけなのに。
「子どもの意思を確認出来ればいいのだな!ならば問おう!君、二重登録は即刻解除するが問題ないね?これからは貴族の子として生きいけるから安心するといい」
「それは困ります」
「なんだと?」
デンカさん、顔も声も怖いんだけど!
少し前までは胡散臭くても優しそうに笑う王子さまじゃなかったっけ?
「リリア、望むままに言っていいぞ」
「いいの?」
「もちろんだ。いくら王子さまでも、まさか子ども相手に文句を言ったりしないだろうよ。なぁ?」
「あ、あぁ。それは当然。子どもの意見はそのままに受け止めるとも」
本当かな?
不敬だってばっさり切り捨てられない?
こんなことで牢獄行きなんて嫌だよ?
「大丈夫だ、リリア。私がついているから、望むことを言ってごらん」
そこまで言うなら、保護者代理さんがちゃんと私を守ってね?
頼みますよ?
「では……二重登録が問題ということでしたら、私は出来れば、貴族の名の方を削除して──」
「どうしてだ!」
最後まで言い終えることが出来なかった。
私の意見をありのまま受け止めてくれるんじゃなかったの?
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