【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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60.お別れのとき

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「もう戻って来ないかと思っていた」

 おかえりでも久しぶりでもなく。
 アレクは会うなりそう言った。

「すぐに帰ってくるって言ったじゃない」


 ♢♦♢♦♢


 あれから神官さまとは色々話した。

 私はまだ魔力の使い方が分からないままだ。
 気分が高ぶるとより出ていると言われたところで、どこからどうやって出しているのか分からないのだから、出さないようにすると言うことを理解出来るはずもなく。

 不安感が強まると魔力を出す量は特に増えるそうだ。
 それを聞いたとき、この町の人たちに強く影響を与えてしまった理由までは理解した。

 神官さまにも出会った当初は、多くの魔力を当てていたらしい。
 なんだかもう、ごめんなさい。

 これ以上誰にも影響を与えないように、私は神官さまにお願いごとをした。
 町にいる限り、常に側にいて、私の魔力を無効化して貰うことにしたのである。

 真実を目の当たりにして、神官さまに甘えない選択肢はなかった。
 周りの態度の変化を見れば、自分がどれだけ危険な存在か嫌でも理解出来ている。


 話の途中で、あの王子さまについてお城に行かなかったことはとても褒められた。
 あの場では落ち着いて見えたけれど、私がお城を見てみたいといつ言い出すかと、内心でははらはらとしていたらしい。

 一度お城に行って、貴族令嬢としての教育を受けてしまえば、私はもう王家に逆らうことは出来ないだろうということだった。
 貴族として王家に忠誠を誓うことを学ぶからである。

 もしも私が頑なに王家の言うことを拒絶したとしよう。
 ならばと王家は対等となる存在を前に出し、私が抵抗出来なくなるまで圧を掛け続けるのだ。

 たとえば未成年の王族。
 彼らが貴族の子どもの意思に反するようなことを命じたところで、それは子ども同士の話。
 女神さまの教えに反したことにはならないらしい。

 あるいは未成年の貴族を幾人も用意して。
 貴族の子どもなのに王の命を聞けないなんておかしい、それでも貴族の子どもかと、寄って集って私を責めるように仕向け、私の心を折るまで苛め抜く。
 これでも女神さまの教えに反したことにはならないと言う。

 子どものうちは何でも許されるって……ちょっと無理がある信仰では?

 前世でも少年法についてたびたび問題視する声が出ていたけれど。
 この世界はそれ以上だ。

 どんな法にも抜け穴はあるものだと聞いていたけれど、女神さまの教えが絶対的な存在となったことでこの世界は酷く歪んでしまっているような感じがする。

 ただひとつ分かったのは。
 どの世界にいても、結局大人は、法でも、戒律でも、何でも都合よく解釈し、利用するということだ。


 こうして私はお城に連れていかれるという、この国の王家からの最初の難を知らずに逃れられたわけだけれど。

 孤児院に残れば、またしても同じ危険に晒されて、今度は逃げることが不可能。
 というのは、神官さまから言われるまでもなく、私にだって予測出来ること。


 私が危険だからという理由だけでなく。
 私はもうここには居られないの。



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