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7.元お父さまは、とんでもない方でした。 キーラ編
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テーブルを囲んでいつもより多くのソファーが並んでいるのは、今日の訪問者が予定より多かったせいである。
当然大事な娘をエンデベルク子爵家の者たちに近付けたくなかったウェーバー侯爵夫妻は、彼らから一番離れた場所のソファーを空けておいた。
ウェーバー侯爵に促され、キーラとローレンスがその誰も座っていないソファーに並び座ると、夫妻は安堵して微笑み合う。
それをキーラは見逃した。
一方エンデベルク子爵家の者たちは、二つのソファーに分かれ、それぞれ三人ずつで並び座っているが、少々窮屈そうにも見える。
これも嫌がらせであろうが、キーラは気付かない。
それから沈黙が続いた。
キーラはもう、その沈黙に不安を感じることはなかった。
変わらない右手の温もりも、心強いものだった。
やがて沈黙は、ウェーバー侯爵の言葉で終わる。
「娘に何も言うことがないのであれば、もうお帰り頂いて構わない」
上位である侯爵からしびれを切らしたように言われたことで、エンデベルク子爵家当主と思われる中年の男は、慌てたように口を開いた。
「しかし──娘は何も覚えていないと聞き及んでおります」
キーラが首を傾げると、握る手の力が強まった。
大丈夫よとキーラが隣に視線を送れば、優しい眼差しと頷きがキーラに返って来る。
実際キーラの心は凪ぐように落ち着いていた。
隣には義兄がいて、側には義父母がいて。
ただの娘であるキーラがすることはないと思えば、とても気が楽だったのだ。
現に今、義父が話を進めてくれていた。
「だから?」
「えっと……だからとは?」
「あなたたちは今日ここに何をしに来たつもりなのだ?」
「え、それはその……娘を迎えに来たのですが」
またしても沈黙。
今度沈黙を破ったのは、キーラになった。
「もしかして……本当に知らないの?」
キーラが呟けば、隣でローレンスがこの邸ではあまり聞かない乾いた笑い声を上げた。
「ねぇ、キーラ。だから会わなくていいと言ったんだよ」
キーラは返事をしない。
本人たちの前で、そうね、とはとても言えなかったからだ。
「あの……おかしかったでしょうか?」
笑われて、エンデベルク子爵家当主と思われる男は聞いた。
それがムッとしているように聞こえる口調だった。
これに不快を示したのは、父親の方となる。
「あなたはまさか、この子に関わる権利をすべて手離していることを忘れたとでも言うのかね?」
「いえいえ、私だってそれは覚えていますよ。ただ成人すれば、そんなことは関係ないですし」
「ほぅ。関係ないか。では赤の他人になった娘をどうして迎えに来る必要があった?」
「赤の他人……そのような冷たいこと、私には言えませんから。侯爵家を出され、このままでは娘が困るであろうからと、家族皆で迎えに来たのです」
キーラが驚きに目を丸くする。
淑女らしくなかったとすぐに己を恥じて、笑顔を作ったというのに、ローレンスがまた隣で笑った。
今度のそれは、キーラがよく知る笑い方だった。
「もうお義兄さまったら」
淑女の笑みを作ったまま小声で伝えたそれが、エンデベルク子爵家の者たちの耳にも拾われたようだ。
エンデベルク子爵家の全員が食い入るようにキーラを見ていたが、キーラはローレンスを見ていて、彼らを気にすることもなかった。
当然大事な娘をエンデベルク子爵家の者たちに近付けたくなかったウェーバー侯爵夫妻は、彼らから一番離れた場所のソファーを空けておいた。
ウェーバー侯爵に促され、キーラとローレンスがその誰も座っていないソファーに並び座ると、夫妻は安堵して微笑み合う。
それをキーラは見逃した。
一方エンデベルク子爵家の者たちは、二つのソファーに分かれ、それぞれ三人ずつで並び座っているが、少々窮屈そうにも見える。
これも嫌がらせであろうが、キーラは気付かない。
それから沈黙が続いた。
キーラはもう、その沈黙に不安を感じることはなかった。
変わらない右手の温もりも、心強いものだった。
やがて沈黙は、ウェーバー侯爵の言葉で終わる。
「娘に何も言うことがないのであれば、もうお帰り頂いて構わない」
上位である侯爵からしびれを切らしたように言われたことで、エンデベルク子爵家当主と思われる中年の男は、慌てたように口を開いた。
「しかし──娘は何も覚えていないと聞き及んでおります」
キーラが首を傾げると、握る手の力が強まった。
大丈夫よとキーラが隣に視線を送れば、優しい眼差しと頷きがキーラに返って来る。
実際キーラの心は凪ぐように落ち着いていた。
隣には義兄がいて、側には義父母がいて。
ただの娘であるキーラがすることはないと思えば、とても気が楽だったのだ。
現に今、義父が話を進めてくれていた。
「だから?」
「えっと……だからとは?」
「あなたたちは今日ここに何をしに来たつもりなのだ?」
「え、それはその……娘を迎えに来たのですが」
またしても沈黙。
今度沈黙を破ったのは、キーラになった。
「もしかして……本当に知らないの?」
キーラが呟けば、隣でローレンスがこの邸ではあまり聞かない乾いた笑い声を上げた。
「ねぇ、キーラ。だから会わなくていいと言ったんだよ」
キーラは返事をしない。
本人たちの前で、そうね、とはとても言えなかったからだ。
「あの……おかしかったでしょうか?」
笑われて、エンデベルク子爵家当主と思われる男は聞いた。
それがムッとしているように聞こえる口調だった。
これに不快を示したのは、父親の方となる。
「あなたはまさか、この子に関わる権利をすべて手離していることを忘れたとでも言うのかね?」
「いえいえ、私だってそれは覚えていますよ。ただ成人すれば、そんなことは関係ないですし」
「ほぅ。関係ないか。では赤の他人になった娘をどうして迎えに来る必要があった?」
「赤の他人……そのような冷たいこと、私には言えませんから。侯爵家を出され、このままでは娘が困るであろうからと、家族皆で迎えに来たのです」
キーラが驚きに目を丸くする。
淑女らしくなかったとすぐに己を恥じて、笑顔を作ったというのに、ローレンスがまた隣で笑った。
今度のそれは、キーラがよく知る笑い方だった。
「もうお義兄さまったら」
淑女の笑みを作ったまま小声で伝えたそれが、エンデベルク子爵家の者たちの耳にも拾われたようだ。
エンデベルク子爵家の全員が食い入るようにキーラを見ていたが、キーラはローレンスを見ていて、彼らを気にすることもなかった。
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