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6.はじめまして、元家族の皆さま。 ローレンス編
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キーラが虐待、放置された理由として。
担当官らが導いた結論は、『弟の誕生により──』だった。
しかし私はこれを違うと考えている。
あのように配慮なき者たちと、あのように手を抜く者たちに囲まれて。
弟が生まれなかったあの家に残るキーラにどんな未来があったか。
考えるまでもなく、知れたものだろう。
それもこうして平然と会いに来た姿を見れば、もはや疑うものではなくなった。
結論は、『エンデベルク子爵家により──』が正しい。
◇◆◇
キーラの養育状況を調べた担当官たちの後悔は、ひとつではない。
弟が生まれた年。
長女九歳、次女七歳、三女五歳。そしてキーラは三歳。
つまりキーラが生まれてから保護されるまでの五年間、担当官たちは姉たちを祝うため三度もエンデベルク子爵家を訪問したことになる。
では何故キーラは見過ごされてしまったのか?
エンデベルク子爵家のように子沢山の貴族が毎年のように監査を受けているかといえば、実際はそうではない。
王家からの監査を嫌がり、多くの貴族は子の数を制限するが、それは貴重とされる貴族の血を増やし過ぎない国策にもなっていた。
しかしこうした常識が通用しない貴族はいつの時代も少しは存在し、今代がエンデベルク子爵家となる。
こうした貴族家を王家は印象よく覚えないが、それでも王家は子の多い貴族に対しては一部の監査を免除した。
人員に限りがある中で、同じ貴族にばかり時間を割けないからだ。
エンデベルク子爵家は、長女五歳のときに最初の監査を受けたあとは、次女五歳での監査は省略されて、次は三女五歳のときに監査を受けている。
このときはまだ弟が生まれたばかりで、キーラも世話を受けていたので問題にはならなかったということ。
担当官たちが悔いているのは、キーラを保護する前年、長女が十歳となった年の監査予定を省略してしまったことだ。
彼らは長女に王家からの祝いの品と祝い状を渡すと、さっさと次の領地へと移動した。
もしこのとき少しでも違和に気付いて、キーラが保護されていたら……キーラの身体にはもう少しは影響がなかったと思われる。
◇◆◇
しかし改めてエンデベルク子爵家の者たちを前にすると。
よくぞこれだけ頻繁に王家から担当官の訪問を受け入れながら、当主を含めた家族の誰も、キーラの状況を確認しなかったものである、という今まで持って来た呆れも感心へと至る。
キーラの元家族は、こちらの常識が通用しない、とんでもない者たちだった。
王家からの呼び出しを再三無視出来たことも凄いことだと思ってきたが。
他人である担当官さえあれだけ悔いているというのに。
キーラを前にしても、すぐの謝罪がないどころか、彼らの表情からは罪悪感のひとつも感じられず。
さすが誰一人恥じて遠慮する者もなく、家族全員揃って会いに来られたわけである。
「はじめまして。ウェーバー侯爵家の長女、キーラと申します」
思わず笑いそうになったとき、両親も笑いを堪えていることが分かった。
しかし愉悦感に重ねて、じわじわと新しい怒りも発生していく。
侯爵家の当主ではないとしても、侯爵令嬢が立って挨拶し、頭を下げたというのに。
子爵家の誰一人立ち上がることなく、呆けたのちに出て来た言葉が──。
「キーラなのか?」
これだけだ。
キーラがいなければ、この場で二度と口を利けなくしてやったかもしれない。
必要なときに立ち上がれない足も要らないだろう。
いや、余計なことしかしないのだから、身体もまともである必要はないな?
キーラが退室したら、こいつらはキーラの知らない地下室に案内しよう。
今回こそ父上たちには反対させない。
危機意識もなく全員で移動してきたんだ。
全員仲良く帰路に何かあったことにすればいいだろう?
などと私が考えていることを何も知らないキーラは──。
「キーラ・ウェーバーですわ。どうぞ良しなにお付き合いくださいませ」
キーラ、社交辞令でも、こんな奴らにお付き合いをするなんて言ってはいけないよ?
こういう奴らは、都合よく勘違いするものだからね?
あぁ、もう。
こいつらにそんな可愛い笑顔は見せなくていいよ?
まったくもう。
いつまでも。
愛する可愛い人は心配で堪らない。
担当官らが導いた結論は、『弟の誕生により──』だった。
しかし私はこれを違うと考えている。
あのように配慮なき者たちと、あのように手を抜く者たちに囲まれて。
弟が生まれなかったあの家に残るキーラにどんな未来があったか。
考えるまでもなく、知れたものだろう。
それもこうして平然と会いに来た姿を見れば、もはや疑うものではなくなった。
結論は、『エンデベルク子爵家により──』が正しい。
◇◆◇
キーラの養育状況を調べた担当官たちの後悔は、ひとつではない。
弟が生まれた年。
長女九歳、次女七歳、三女五歳。そしてキーラは三歳。
つまりキーラが生まれてから保護されるまでの五年間、担当官たちは姉たちを祝うため三度もエンデベルク子爵家を訪問したことになる。
では何故キーラは見過ごされてしまったのか?
エンデベルク子爵家のように子沢山の貴族が毎年のように監査を受けているかといえば、実際はそうではない。
王家からの監査を嫌がり、多くの貴族は子の数を制限するが、それは貴重とされる貴族の血を増やし過ぎない国策にもなっていた。
しかしこうした常識が通用しない貴族はいつの時代も少しは存在し、今代がエンデベルク子爵家となる。
こうした貴族家を王家は印象よく覚えないが、それでも王家は子の多い貴族に対しては一部の監査を免除した。
人員に限りがある中で、同じ貴族にばかり時間を割けないからだ。
エンデベルク子爵家は、長女五歳のときに最初の監査を受けたあとは、次女五歳での監査は省略されて、次は三女五歳のときに監査を受けている。
このときはまだ弟が生まれたばかりで、キーラも世話を受けていたので問題にはならなかったということ。
担当官たちが悔いているのは、キーラを保護する前年、長女が十歳となった年の監査予定を省略してしまったことだ。
彼らは長女に王家からの祝いの品と祝い状を渡すと、さっさと次の領地へと移動した。
もしこのとき少しでも違和に気付いて、キーラが保護されていたら……キーラの身体にはもう少しは影響がなかったと思われる。
◇◆◇
しかし改めてエンデベルク子爵家の者たちを前にすると。
よくぞこれだけ頻繁に王家から担当官の訪問を受け入れながら、当主を含めた家族の誰も、キーラの状況を確認しなかったものである、という今まで持って来た呆れも感心へと至る。
キーラの元家族は、こちらの常識が通用しない、とんでもない者たちだった。
王家からの呼び出しを再三無視出来たことも凄いことだと思ってきたが。
他人である担当官さえあれだけ悔いているというのに。
キーラを前にしても、すぐの謝罪がないどころか、彼らの表情からは罪悪感のひとつも感じられず。
さすが誰一人恥じて遠慮する者もなく、家族全員揃って会いに来られたわけである。
「はじめまして。ウェーバー侯爵家の長女、キーラと申します」
思わず笑いそうになったとき、両親も笑いを堪えていることが分かった。
しかし愉悦感に重ねて、じわじわと新しい怒りも発生していく。
侯爵家の当主ではないとしても、侯爵令嬢が立って挨拶し、頭を下げたというのに。
子爵家の誰一人立ち上がることなく、呆けたのちに出て来た言葉が──。
「キーラなのか?」
これだけだ。
キーラがいなければ、この場で二度と口を利けなくしてやったかもしれない。
必要なときに立ち上がれない足も要らないだろう。
いや、余計なことしかしないのだから、身体もまともである必要はないな?
キーラが退室したら、こいつらはキーラの知らない地下室に案内しよう。
今回こそ父上たちには反対させない。
危機意識もなく全員で移動してきたんだ。
全員仲良く帰路に何かあったことにすればいいだろう?
などと私が考えていることを何も知らないキーラは──。
「キーラ・ウェーバーですわ。どうぞ良しなにお付き合いくださいませ」
キーラ、社交辞令でも、こんな奴らにお付き合いをするなんて言ってはいけないよ?
こういう奴らは、都合よく勘違いするものだからね?
あぁ、もう。
こいつらにそんな可愛い笑顔は見せなくていいよ?
まったくもう。
いつまでも。
愛する可愛い人は心配で堪らない。
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