14 / 17
14.元弟さまも、とんでもない方でした。 ローレンス編
しおりを挟む
この国の貴族は子が五歳、十歳、十五歳のタイミングで、王家の監査を受け入れる。
ところがエンデベルク子爵家は、キーラが保護されたときの監査を最後にして、以来一度も監査は受け入れていなかった。
それは子が多いという理由で王家から免除されたわけではないし、エンデベルク子爵側が断ったというわけでもない。
実はキーラが保護されたときの監査で、前回監査時の指摘事項への対応が一切手付かずだったことが判明している。
それどころか、領地には他にも問題点が増えていた。書類の不備不足も前回よりも目立った。
領地も見られない。
子育ても真面に出来ない。
呼び出しにも応じない。
『エンデベルク子爵は領主として貴族として強い懸念あり』
そう評した王家は、エンデベルク子爵領に多くの人材を送り込んだ。
つまり近年は、実質王家がエンデベルク子爵領を運営している状態だった。
これが監査の無かった理由である。
エンデベルク子爵は、反省するどころか、この王家の対応を不服に思ってきたということだ。
王家は担当官を通して、当主夫妻には告げたはずである。
『エンデベルク子爵家の裁定は、四女キーラが成人する日と定める。これは猶予である』
◇◆◇
エンデベルク子爵家の者たちが口々にキーラを責めた。
私はとても信じられなかったし、両親も同じ想いでいることだろう。
二度と口を利けないように。
それは私だけの決断ではなかったはずだ。
王家が選んだ者たちによく教育されてきたはずの嫡男も、結局はエンデベルク子爵夫妻と似たように育ってしまっている。
教育を担当した者たちが、嫡男と家族を引き離さなかったことは、大きな要因だろう。
この子は当時赤ん坊だ。何も悪くないのに、可哀想に。とでも同情したか。
親から引き離すよう命じておけば……本家の血は守られたかもしれなかったな?
血統を重んじる王家も、判断を誤ったようである。
さぁて、こいつらをどうしてくれようか。
具体案は次々浮かんだ。
楽しいくらいに想像は膨らんだ。
すると冷静に今すぐすべきことを思い出せた。
私としたことが、思考を怒りに支配されていたことにも気付けずにいたのである。
まずはキーラだ。
キーラを部屋から連れ出して、今日のことは忘れてくれるよう甘やかして。
その間はこれらは地下室に──。
不意に鈴のような可憐な声を聴く。
「皆さまは、私に何をお望みなのでしょう?」
あろうことか、このときからしばらく、私は我を忘れてしまった。
今度は怒りによるものではない。
凛としたその横顔に私の心は奪われた。
キーラの想いを汲んで、私は立ち止まった。
キーラはあえて聞いたのだ。
キーラは優しいね。
本当に誰よりも優しくて、とても可愛くて……だからいつも心配なのだよ?
ところがエンデベルク子爵家は、キーラが保護されたときの監査を最後にして、以来一度も監査は受け入れていなかった。
それは子が多いという理由で王家から免除されたわけではないし、エンデベルク子爵側が断ったというわけでもない。
実はキーラが保護されたときの監査で、前回監査時の指摘事項への対応が一切手付かずだったことが判明している。
それどころか、領地には他にも問題点が増えていた。書類の不備不足も前回よりも目立った。
領地も見られない。
子育ても真面に出来ない。
呼び出しにも応じない。
『エンデベルク子爵は領主として貴族として強い懸念あり』
そう評した王家は、エンデベルク子爵領に多くの人材を送り込んだ。
つまり近年は、実質王家がエンデベルク子爵領を運営している状態だった。
これが監査の無かった理由である。
エンデベルク子爵は、反省するどころか、この王家の対応を不服に思ってきたということだ。
王家は担当官を通して、当主夫妻には告げたはずである。
『エンデベルク子爵家の裁定は、四女キーラが成人する日と定める。これは猶予である』
◇◆◇
エンデベルク子爵家の者たちが口々にキーラを責めた。
私はとても信じられなかったし、両親も同じ想いでいることだろう。
二度と口を利けないように。
それは私だけの決断ではなかったはずだ。
王家が選んだ者たちによく教育されてきたはずの嫡男も、結局はエンデベルク子爵夫妻と似たように育ってしまっている。
教育を担当した者たちが、嫡男と家族を引き離さなかったことは、大きな要因だろう。
この子は当時赤ん坊だ。何も悪くないのに、可哀想に。とでも同情したか。
親から引き離すよう命じておけば……本家の血は守られたかもしれなかったな?
血統を重んじる王家も、判断を誤ったようである。
さぁて、こいつらをどうしてくれようか。
具体案は次々浮かんだ。
楽しいくらいに想像は膨らんだ。
すると冷静に今すぐすべきことを思い出せた。
私としたことが、思考を怒りに支配されていたことにも気付けずにいたのである。
まずはキーラだ。
キーラを部屋から連れ出して、今日のことは忘れてくれるよう甘やかして。
その間はこれらは地下室に──。
不意に鈴のような可憐な声を聴く。
「皆さまは、私に何をお望みなのでしょう?」
あろうことか、このときからしばらく、私は我を忘れてしまった。
今度は怒りによるものではない。
凛としたその横顔に私の心は奪われた。
キーラの想いを汲んで、私は立ち止まった。
キーラはあえて聞いたのだ。
キーラは優しいね。
本当に誰よりも優しくて、とても可愛くて……だからいつも心配なのだよ?
42
あなたにおすすめの小説
継母や義妹に家事を押し付けられていた灰被り令嬢は、嫁ぎ先では感謝されました
今川幸乃
恋愛
貧乏貴族ローウェル男爵家の娘キャロルは父親の継母エイダと、彼女が連れてきた連れ子のジェーン、使用人のハンナに嫌がらせされ、仕事を押し付けられる日々を送っていた。
そんなある日、キャロルはローウェル家よりもさらに貧乏と噂のアーノルド家に嫁に出されてしまう。
しかし婚約相手のブラッドは家は貧しいものの、優しい性格で才気に溢れていた。
また、アーノルド家の人々は家事万能で文句ひとつ言わずに家事を手伝うキャロルに感謝するのだった。
一方、キャロルがいなくなった後のローウェル家は家事が終わらずに滅茶苦茶になっていくのであった。
※4/20 完結していたのに完結をつけ忘れてましたので完結にしました。
離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。
数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました
鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。
エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。
小説家になろうさんにも投稿しています。
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!
白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。
婚約者ではないのに、です。
それに、いじめた記憶も一切ありません。
私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。
第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。
カクヨムにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる